後ろ向きな目標をそこそこ達成したお話(文学フリマ東京39出店記録)
2024年12月1日、文学フリマ東京39に出店しました。
https://bunfree.net/event/tokyo39/
文学フリマ東京39といえば! 初の! ビッグサイト開催!
前回からはじまった一般入場の有料化に続き、大きな変化がこのとき起きていました……と後々まで語られることになるであろう回でしたね。
とはいえ、当日行って帰ってくるだけで虫の息な私としては、全体を俯瞰してどうこう語れるほどの余裕はなく、この記事は次回出展に向けての極々個人的な備忘録となります。
まだ出店慣れしていないひとには、少し役に立つ内容があるかもしれません。たぶん。
これまでの活動
私のイベント初出店は、2019年11月の第二十九回文学フリマ東京です。
コロナ禍に入ってからはしばらく参加をお休みし、2022年5月の第三十四回文学フリマ東京で二度目の出店を果たしてからは、年二回の文学フリマ東京に毎回出店しています。
また、今年は1月の文学フリマ京都8や、9月の第9回TAMAコミにもサークル参加しました。
現在メインで作っているのはオリジナル短篇小説本、文学フリマでの出店カテゴリーは小説|短編・掌編・ショートショートです。
今回の目標
出店にあたって、今回立てた目標はこちら。
『手持ちの在庫を減らす』『累積した赤字の減少』
前向きじゃなくてすみません〜〜〜〜!!
実は去年、有り難いことにそれまでの二倍、三倍に頒布冊数が増えまして……。調子に乗り、既刊は増刷し新刊は大量に刷りました。
結果、大量に残った手元の在庫に追い詰められる現在。
楽しく活動するためにも、心に重くのしかかる在庫数をどうにかしなければ、と考えた次第です。
また、今までガバガバ勘定でやってきた同人活動ですが、長く続けるためには金銭面もきちんとコントロールが必要、と今年の三月より収支を記録することにしました。
そして判明する事実。
こんなに赤字出してたの……?
慄いた私は累積赤字を少しでも解消する、という方針を打ち出しました。
出店計画
目標が定まったところで、具体的な計画を立てます。
①在庫を減らす
ただいま、手持ちの在庫は六種。
加えて今回、新刊も一種作成予定でした。
在庫を減らすためには、当然、既刊の頒布に力を入れる必要があります。
実のところ前回は、百合小説を新刊として出したところ、新刊の頒布数は最高新記録となったものの、既刊がふるわず、全体の頒布数としては過去イチの記録を超えられずに終わってしまいました。
原因は、新刊が百合小説なのに対し、他は少年偏愛系小説(※後述します)、ごちゃまぜ掌篇集、140字集、歌集……とバラバラだったこと。
宣伝は新刊を中心に行ったため、ブースに来てくださるのは百合小説に興味を持ってくださった方が中心となり、それ以外の既刊が出なかったものと思われます。
そんな反省を踏まえ、今回。
新刊は少年偏愛系小説第三弾……ということで、『少年偏愛系シリーズ』と銘打ち、三冊まとめて宣伝することにしました。
この方法により、新刊だけでなく既刊の二種にも注目してもらおうという作戦です。
新刊についても、複数回分を一気に印刷するのをやめ、前回頒布した数と同じ数だけを印刷をしました。完売しなくとも、他のイベントや通販に回せば長く手元に残ることはないだろうという数です。
※少年偏愛系小説とは?
『少年に、狂う。』というキャッチフレーズで宣伝している、短篇小説群です。少年が少年に狂う微ホラー小説『孕む』、青年が少年に狂うサスペンス『少年についての独白』、教師が少年に狂う幻想文学『金糸雀は塔で歌う』を少年偏愛系シリーズとしています。
尚、各作品につながりはなく、どれも一冊で完結しています。
②赤字を減らす
最近の新刊は、文庫判の本を400円で販売していました。
が、記録した収支や頒布できるであろう冊数を堅実に計算した結果、この金額で赤字を減らすのは難しいという結論に達したため、価格を上げることにしました。
というわけで、今回の新刊は600円です。
500円と迷ったのですが、結構な数を頒布しないと目標に達しない&400円の既刊と合わせると1000円ぴったりになるのでまとめ買いの促進になるかも……という下心から600円に決めました。
ついでに判型はA5判に変更しました。
昨年、文学フリマ以外のイベント出店を視野に入れ他イベントへ一般参加した際、文庫サイズだと他の同人誌に埋もれてしまうと痛感したためです。
それからもうひとつ、赤字を減らすのに必須なのが、経費削減ですね。
経費といえばサークル参加費、本の印刷代、搬入搬出費、交通費……色々ありますが、私に削れそうなのは、広告宣伝費でした。
というのも、ここ数回の参加で当日の設営に力を入れる必要を感じていたため、ポスターの印刷にかなりの金額をかけていたのです。
例えば前回は、B3サイズのポスター2枚、A1変形サイズの机前ポスターの印刷を印刷会社に依頼していましたし、その前はもっと大きなサイズでポスターを作り、お品書きも依頼していました。
それを今回、すべてコンビニコピーに変更しました。
使ったのはセブンイレブンのポスター印刷です。
A3サイズのポスターを、四分割してA1サイズに拡大しました。
これにより、ポスターのインパクトと落とすことなく、宣伝費を約四分の一に削減することができました。
正直、せっかくなら見栄えのいい印刷所のほうが……という気持ちはあったのですが、よくよく考えてみると、イベントで買いまわるときはお目当てのものを手に入れるのに必死で、ブースやポスターの細かいところなんて全然見ていないんですよね。
実際、遠目に見る分には全く気にならなかったので、これで正解だったと思います。
(まあしかしテープで貼り合わせるのは面倒だったので、正直もうやりたくないですね……やりますけども!!)
宣伝
ブース番号が発表された11月1日より、宣伝を開始しました。
この時点では新刊がまだ完成しておらず(というより本文に取り掛かってもおらず)、若干弱気な宣伝です。
『少年に、狂う。』の宣伝画像はこれまでも度々使用していて、毎回ご好評をいただいています。もとは少年偏愛系小説第一弾の『孕む』のあらすじの一部だったのですが、その一文に熱烈に反応してくださったフォロワー様がいたため、宣伝で積極的に打ち出すことにしました。
該当のフォロワー様には大感謝です。
その後も、新刊に絡めて既刊の『孕む』『少年についての独白』のタイトルを出していき、宣伝画像に惹かれたひとがこの三冊に注目してくれるよう宣伝しました。
お品書きも少年偏愛シリーズが今回の目玉なのがわかるよう、他の既刊はあえて情報を削ぎ落としました。
が、しかし。
本番一週間前、トラブルが起こりました。
Xのサーチバンです。
このあたりは書くと長くなるので割愛しますが、文学フリマ東京に向けての宣伝方法がX的によろしくなかったらしく、警告と、軽いシャドウバンを受けました。
結果、数日間ポストを自粛せざるをえなくなる&その後も効果を感じていた宣伝方法をことごとく封印しなければならなくなる、という事態に陥りました(これに関してはバンされていない皆様も影響が大いにあったかと思います)。
というわけで、三冊まとめて宣伝する、という計画を十分には実行できませんでした。
それでも、フォロワーさんたちが宣伝をリポストしてくださったり、本を感想を上げてと応援してくださったおかげで、WEBカタログの『気になる』は最終的に、前回に近い数まで増えてくれました。
そして迎えた当日。
当日の設営
設営はこんな感じになりました。
①ポスター
ここでも『少年に、狂う。』を前面に押し出しています。
私が『目立つ設営』に力を入れ出したのは、とあるフォロワーさんのポストがきっかけでした。
『津森さん(私です)のスペース、毎回チェックしてるんだけど迷子になってたどり着けないんですよね……(要約)』
そんな!! こと!! ある!!!????
と見た瞬間はびっくりしたのですが、冷静に考えれば大いにあり得ます。
たくさんの出店者・一般参加者でひしめく会場、探しているブースを気づかず通り過ぎてしまうことなんて、私もたくさん経験しています。
(最近は運営が目印になる用紙を配布してくれているため、そういうことは少なくなりましたが……)
絶対に行きたいブースなら引き返して探します。でも、ちょっと気になるだけのブースだったら? 見かけたら覗いてみようくらいの気持ちのブースは? あの人混みの中、じゃあもういいや、と諦めてしまっても、不思議でも何でもありません。
ましてやこれが出店者だった場合。一刻も早く買い物を済ませて自分のブースに戻らねば! と焦っています。そんな中、わざわざ戻ってまで……というのは難しい話です。
というわけで、最近は机の前側と後ろのポスターで、ブースの存在をアピールしています。
画像だと後ろのポスターが隠れていますが、こちら、離れているところから見つけるのにとても便利で、フォロワーさんにはすぐブースが見つかった、と好評でした。
私自身も、ブースに戻るときの目印として大変重宝しました。
ただし、机前のポスターは、今回通路が狭かったこともあり、あまり効果を発揮しなかったと思います。
こちらは通路が広い(=お客様が離れたところを歩く)場合にはアピールとして有効なのですが、通路が狭くお客様との距離が近い場合は、そもそも目に入りません。
とはいえやらないよりはやっておいたほうが……ということで今回も設置しています。
②本の並び
本は、どのように並べるのが効果的でしょうか。
新刊は目立たせたいから、一番上の段?
実は、上の段というのはあまりお客様の目に留まりません。
というのも、お客様の視線は基本、机上に向かっているのです。
ブースの番号が書いてあったり、お品書きが貼られていたり、作品が置かれていたりするのは大抵机の上なので、目線も自ずとそちらに固定されます。
さらに、うっかり顔を上げると期待と緊張に満ちた目で見つめてくる出店者と目が合ってしまうのです。
気まずいですね? 気まずいです。
そのため、高い段は視界から外れてしまいます。
なので、最近の私は、一番目立たせたいもの(=新刊)を下の方に並べていました。
しかし今回は既刊を売りたい。
新刊は新刊というだけでそれなりに手に取ってもらえるので、あえて不利な位置に配置し、下の段を既刊のスペースとしました。
当日の配置
配置が発表され、場所を確認した私の感想はこうです。
「これは……過疎るのでは?」
下の図を見ていただくとわかる通り、今回配置されたブースは、入口からも出口からも試し読みコーナーからも離れた奥の方。
お手洗いと搬出受付が近いメリットはありますが、これだけのブースがある中、近くを通ることなく帰ってしまう方も多いのでは……。
実際、当日開場してからブースの前を人が通り始めるまで、しばらく時間がかかりました。
すごい人の波が見えるけど、遠いな……。という感じ。
それでも時間が経つにつれ、人が増えていきました。
その後はいつものフォロワーさんがブースに来てくださったり、前回買った本が良かったから、と今回も来てくださる方がいたり、合間を見てお買い物をしたり(不在中は隣接のフォロワーさんにお会計をお願いしました)、ネットで見て来ました、という方が来てくださったり、空いた時間は隣接のフォロワーさんとおしゃべりしたり……とあっという間に閉会の時間となりました。
ちなみに、今回搬出口付近ということで、シャッターが空いたら寒いだろう、とホッカイロを搬入荷物に忍ばせておいたのですが、シャッター、開きませんでした。
ひたすら熱気で暑かったです。
そして、結果は?
①残り在庫
新刊……前回売れた分と同じだけ刷りましたが、在庫が残りました。それでも、いつも通販(委託)に預けているのと同じくらいの冊数なので、一月のイベントを終えたら残りは通販に回して手元の在庫をほぼゼロにできる見込みです。
既刊……『孕む』の持ち込み分がすべて売り切れました。『少年についての独白』は前回と同数出たのみ。新刊とのまとめ買いはあまりなかったです。他の既刊は前回と同数〜下回る数でした。とはいえ前回の新刊が既刊に回った分、総数としては1.5倍出た結果に。
全体……前回をなんとか上回る冊数が出ました。歴代二位です。在庫冊数は新刊の残りを含めても約二割減です。
②赤字金額
新刊の売り上げで、今回のイベント出店にかかる費用はすべてまかなえましたすみませんここ計算間違ってましたまかなえていませんすみません!! 残りの新刊まですべて売り上げた時点でまかなえる、です(2024年12月8日追記)。累積赤字についても、既刊の売り上げで五割弱減らすことに成功。
今年の三月からの記録においては、収入1に対し、支出が1.5まで行かないくらいで収まりました。
※まーーーー実は1月には文学フリマ京都に出店しているので、年間の赤字はもっとひどいのですがね!!
(交通費と宿泊費が……)
そんなわけで、今回のやり方でいけば、赤字を増やさず、かつ宣伝力も落とさず、イベントに出続けることが可能なのでは、というのが今回の結論です。
あくまで、他地域の文学フリマに出なければの話ですが……。
来年も私、他地域の文学フリマに出るんですけど……。
あの、まあ、年に一回くらいは、旅行も兼ねてということで、許されたく……はい……。
まとめ
というわけで今回、後ろ向きな目標をそこそこに達成することができました。
ビッグサイトだからたくさんお客さんが来てたくさん売れる、ということもなければ、出店数が多すぎてブースに来てくれる人が減る、ということもなく、やった分だけ、やらなかった分だけ、結果となって返ってきたなあという感覚です。
実のところ、目標が後ろ向きだったのには在庫数以外にも理由があって、まあつまりここ一年の出店で自信をなくしていたからなのですが、それでもイベントが終わって思うのは、やっぱり小説を書きたいな、ということなので、やれる限りはやっていきたいと思います。
だからまた、書き続けているみんなにあの場で会いたいです。読んでくれる人たちに、あの場で会いたいです。
会いましょうね。その日まで、お元気で。
今後の活動について
今後の出店予定は以下のとおりです。
2025年1月5日(日) もじのイチ ~みんなの創作文芸同人誌即売会~ #2
2025年5月11日(日) 文学フリマ東京40
https://bunfree.net/event/tokyo40/
2025年6月15日(日) 文学フリマ岩手10
https://bunfree.net/event/iwate10/
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。