キイ爺さんとハルさん。
ある山奥に、キイ爺さんと言う一人の老人がいました。
彼は誰よりも長〜く生きていて、いろいろなことを知っています。
そんな物知りのキイ爺さんの所へは、いつもキイ爺さんの話を聞きたい人達が、いっぱい集まって来ます。
ほら、今日も来ましたよ。
落ち葉村のアキくんです。
「キイ爺さん、こんにちは!今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」
アキくんは、目をキラキラ輝かせてキイ爺さんに尋ねました。
「そうじゃな〜。じゃあ今日は、わしが若い頃に会った、ハルさんの話をしようじゃないか。」
キイ爺さんは、よっこらせと腰を下ろし、ハルさんの思い出話をしてくれました。
「わしがまだ若くて旅をしていた時、ある村へ辿り着いた。 その村は、あたり一面がピンク色に染まっておってのう。それはもう綺麗だったんじゃ。」
「へ〜!ピンク色の村?!僕も行ってみたいなあ!それはどこにあるの?」
「残念ながら、とうの昔過ぎて、どこにあったかも覚えとらんのじゃよ。かれこれ、300年も前のことじゃからな〜。わしも歳をとったの〜。はっはっはっ!」
「その村は、地面も花も、木も風でさえもピンク色でのお。」
「村に住む人々は皆、その美しい光景にうっとりしておった。わしもそのうちの一人じゃったよ。」
「へ〜そうだったんだね〜。それでそれで!」
「ある日強い風が吹いて、わしの目の前でピンク色の花びらが大きく舞ってのう、突然一人の女の子が現れたんじゃ。」
「もしかして、その子がハルさん?」
「その通りじゃ。」
「ハルさんは、それはもう可愛らしい子で、彼女の頬は、ピンク色の花びらと同じように柔らかな色で、わしは一眼見た途端、恋に落ちたんじゃ。」
「わあ!キイ爺さん、ハルさんに一目惚れだったんだね!」
「ああ、そうじゃ。今でも忘れん。彼女はどこの誰よりも特別じゃったよ。わしの目には、彼女が星のようにきらりと光って見えたんじゃ。」
「ハルさんは不思議なことに、一年のうちの春の季節の間だけしかわしの前に現れんくての〜。」
「なんでか?と話したことはなかったが、わしは彼女と会えるその春の季節が大好きでの〜。毎年彼女と会えるその季節が来るのを、楽しみにしておったんじゃ。」
「なんだか、とってもロマンチックだね。」
「そんなある春の季節に、わしはいつも通りハルさんに会えるのを楽しみにして待っていたんじゃが、いつになっても来なくての〜。」
「次の春も、その次の春も、わしはいつもの場所で彼女を待ち続けたんじゃ。
じゃが、ハルさんは一向にわしの前に現れることはなくての〜。」
「それからわしらは二度と会えることなく終わってしもうたんじゃ。」
「そうだったんだね...キイ爺さん、寂しかった?」
「そうじゃなあ。寂しかったなあ。」
「今はどうしておるかわからんが、それでもわしは今でもハルさんのことを想っておるよ。」
「のちに聞いた話なんじゃがな、いつもわしとハルさんが会っていたその場所には村一番の桜の大きな木があってな、その木が病で枯れてしまったそうなんじゃ。」
「わしは思った、もしかしたらハルさんは、あの桜の木の精霊だったんじゃなかろうか。とな。」
「桜の木が病にかかったのも、ちょうどハルさんがわしの前に現れなくなった時とおんなじ時じゃったからな。」
キイ爺さんはそういうと、引き出しから、小さな箱を取り出し、その中身を見せてくれた。
ピンク色の花びらだった。
「これはわしとハルさんの大切なものじゃ。」
キイ爺さんが取り出して見せてくれると、突然風が吹いて、その花びら達がたちまち大きく舞い始めた。
ピンク色の風だった。
「お〜。そこに居たのか。また会えたんじゃな〜。嬉しいよ。」と言いながら、ピンク色の風を見つめるキイ爺さんの目には、きらりと星が光っているように見えた。
おしまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
皆様、この度は、「キイ爺さんとハルさん。」を最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。🤲
もし楽しんで見て頂けましたのなら、幸いです。☺️🤲💓
こちらは数ヶ月前、ある写真絵本コンクールに応募しようとした為、私が書いた作品です。
初めて自分の撮った写真を使って物語を作ってみたことは、とても楽しかったし、自分にとっても新しい挑戦で、何よりも私の心を癒してくれました。☺️✨
これからも、こうやっていろいろなものを作っていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。🤲✨
どうもありがとうございました!
それでは今日も、Have a beautiful day🙌💓
Nana
この度は最後まで記事を読んで下さりありがとうございます☺️💓 これからも素敵な日々があなた様に訪れますように^^ Have a wonderful day🙌💓✨✨