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片翼のジョナサン


誰かを護り翼を失う白いカモメのジョナサン。
彼は誰も恨まずに
静かな海辺にいた。
彼は誰よりも愛を知っていた。
そして愛は誰をも狂わせるものと
しっていた。

されど愛は
慈しむものとしっていた。
愛は無抵抗に
奪われるものと知っていた。

翼を失い
左目を失い
空飛ぶ事を失っても
彼は誰かを護る事をやめなかった。
憎しみは終わらないけれど
慈しみはやがて終わることを知っているからだ。

命を燃やすことの意味を
知る事が愛ならば
命をぞんざいにする事こそ
憎しみである。

そして引き金になるのは
どちらも無知である。
彼は無知の愚かさを知り
黙すことの大切さを知っている。

無知であることは
よいが
学ぶこともせず
停滞することを哀しみと呼ぶことを
知っている。
何か物事を話す事が
全てを解決する手段であることではない
そのことも知っている。

彼は
最後には黙すことにしている。
何故ならば
大切である者達に重ねる時間が
尊いと知っているからだ。

無知の時期の
自分を越え
知を持つ自分を知りたいからだ。
愛とは交わる事ばかりではなく
傾聴し応対することもまた愛と知るからだ。

誰かを護り翼を失うカモメのジョナサン
彼は復讐もせず
静かな海辺にたたずんでいる。
争いが無益であることを知るからだ。

良識とは
多くを語らず
選び伝えることも
必要と知るからだ


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