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ソフト老害論

codeFaberという会社でメンター・コーチをやりながら、作家業・芸能活動をしているナナシロです。うんぽこうんぽこ〜。

さて、今回は「ソフト老害」という言葉がX(Twitter)でトレンド入りしたことを受けて記事を書くことにしました。

私が得意としている世代間理解の分野に紐づけて話をしますが、まぁあまり肩ひじ張らずに読んでいただけたら。

では早速ですが、まず今日(2024年2月12日)トレンド入りした「ソフト老害」が何なのか、そしてこれまでの我々が何気なく使っていた「老害」とは何なのか、解説しようと思います。

ソフト老害とは?

来る2024年3月31日に仕事を引退すると宣言している放送作家の鈴木おさむさん。

その彼が先月発売した著書「仕事の辞め方」で「自分がソフト老害と気付いた」というエピソードを書かれているようで。
(ちょっとまだ書籍は読んでいないので、後ほど読もうと思います。)

鈴木おさむさんいわく、ソフト老害とは

上のプライドを傷つけず、下の意見をうまいことまとめたつもりでも、下の世代から見たら、その行動が老害に見えてたりするということに気づき、それをソフト老害と名付けました

高齢者だけじゃない『ソフト老害』が話題に 放送作家・鈴木おさむさん「40代でも行動次第では老害に」

とのこと。

現在51歳の鈴木さんからして40代はなかなかしんどかったようで。

その理由は、仕事人としては成熟しているのにも関わらず、上の世代と下の世代の板挟みになっているからだったようです。

そして自分より若い人たちに指導をおこなう中で、上の世代の老害っぷりを反面教師にしたものの、結局物腰が柔らかいだけの老害になってしまっている自身の気付いたみたいです。

そもそも老害とは何なのか?

さて、このソフト老害という言葉が生まれた背景として抑えておきたいのが、

そもそも老害とは何なのか?

ということ。

老害という概念は、巷で理解されているとおり、

  • 下の世代の話に耳を傾けない

  • 自分たちの成功譚を押し付けてくる

  • 横柄な振る舞いをする

という特徴を持った年配の人のことを揶揄した言葉です。

実はこの老害、明確に
ここからの上の世代で一気に増える
という分水嶺があります。

それは1971年生まれ以前の人です。

「俺が老害だって言うのか?」
とムッとした方には先に謝っておきます。すみません。

ただ、この世代だから老害と言いたかったのではなく、
取り巻く環境の問題で明らかに老害になりやすい世代
という話です。

というのも、1971年生まれの方が大学を出て就職する1992〜1993年は、就職氷河期の第一世代だからです。

ちなみにその直前の世代は「バブル世代」。
好景気を追い風にパワーとやる気で推し進めてきた世代です。

さらにその前には「新人類」と呼ばれていた世代があります。
これは昨今で言うところの「ゆとり世代」と当時の評価では似たところがあり、戦後の経済復興を担ってきたさらに前の世代からは
「たるんでいる」「甘えている」
と揶揄されてきました。

が、彼らがゆとり世代と大きく違うのは、経済がそれなりに上り調子だったこと。

要するに、経済が安定している時代に働き盛りだった世代の
「俺たちがやってきたとおり素直に頑張ってやってればそれでいいんだよ」
の圧力
が、1971年生まれ以後の人たちには降り掛かってきました。

実は、これこそが「老害」の正体です。

だからはっきり言ってしまうと、現在の50代以上の人たちは基本的に老害的な思考が多いです。
(もちろんこれは生きてきた環境上仕方がない部分があるので、一概には責められるものではありません。)

老害の被害者世代としての苦悩

で、ですね。

実は、鈴木おさむさんは1972年生まれなんですよね。

要するに、上が軒並み老害予備軍だった世代の生まれなんです。

社会に出ることすら叶わず非正規雇用に甘んじた人も多かったのがこの就職氷河期世代。

そう考えると、第一線で仕事を頑張ってこれた鈴木おさむさんは何とかしがみつけた側だったのだろうと推察します。

明らかに経済が沈没していくのを感じながら、それでもがむしゃらに目の前の仕事に取り組んできたエネルギーには心の底から称賛を送りたいです。

しかも、上の世代からずっとちくちく言われているわけですからね。
下手をすると後ろから刺されたりもしていたことでしょう。

だからこそ、老害に対する反発心はとてもつもなく強いだろうと思います。

ちなみに、弊社社長は就職氷河期をぎりぎり抜けた世代なんですが、ゆとり世代の私と比べると老害に対する反発心が旺盛なのを感じます。

きっと若い頃に老害の被害を受けた経験が多かったんじゃないかと思います。

ゆとりマネジメント世代としての苦悩

ですが、鈴木さんの世代からゆとり世代の手前の世代の人たちは、老害被害以外にもう一つの苦悩を抱えています。

それは、ゆとり世代のマネジメントです。

編集者・箕輪厚介さんとの対談で、鈴木さんは

でも今の時代は説教親父が許されないよね。

箕輪は今、フルコミットしている相手なら許されるって思っているかもしれないけれど、15年後に突然訴状が届く可能性もあるよ。

愛情が愛情として伝わらずに、疎ましい存在になってしまうのってつらいじゃん?
でもそれが40代で、だからしんどいの。

放送作家・鈴木おさむ「謙遜しているソフト老害の40代が一番しんどい」

と漏らしていました。

これは心の底からの本音だと思います。

弊社の社長もそうですし、私が話をうかがう現在働き盛りの経営者や管理職の方々は、みな似たような苦悩を抱えています。

一方の私は1988年生まれのゆとり第一世代です。

大学卒業間近のタイミングでリーマンショックが起こり氷河期に突入。
その一方で、短いスパンで連続した情報革命の波が押し寄せてきました。

2010年代はソーシャルネットワークが飛躍的に発達し、組織に所属する以外の生き方がどんどん増えていきました。

ちなみに私はその波に乗って社会からドロップアウトし、YouTuberとして生計を立てる道を選びました。
(今もYouTuberをやっています。)

しんどくはあるものの、逃げ道がいくらでも見つかる。
社会には期待しないから仕事は楽で給料が良いものを選びたいし、仕事よりプライベートを充実させたい。
それがゆとり世代です。

この世代のマネジメントの難しさたるや。
(私も渦中の人間ではありますが。)

鈴木さんはこの老害被害とゆとりマネジメントの板挟みの中、社会人として生きてきた証を書籍にしたため、「ソフト老害」という彼らしいキャッチーな言い方で自身のことを表現をしたのでしょうね。

なぜSNSは老害叩きが激しいのか?

さて、今度は話題の中心をゆとり世代に持っていこうと思います。

今回トレンドに入ったことで取り上げた「ソフト老害」もそうですが、SNSにおいて「老害」という言葉はとてもネガティブなものとして論われています

実を言うと今回も、「ソフト老害」という言葉はXで拡散されて独り歩きしている印象があります。

「老害にハードもソフトもないだろ!」
「老害とかソフト老害とかしょうもない…」
「どちらにせよ害は害だろ!」

そういった言葉が踊っていました。

これらのポストは多くの人に共感・拡散され、もう原形をとどめていないほど独り歩きをしてしまっています

概ねこの揶揄の波に乗っているユーザーたちの中に、当事者の世代の人たちはあまりいないことでしょう。

だからこそ、一方的に老害・ソフト老害が叩かれるという図になっているのです。

これには、やはりSNS、とりわけXが世界中で根付いたのが2010年代ということが大きく関わっていると思います。

私の世代はそのSNSの恩恵を受けてきた一方で、コミュニケーションスタイルが前の世代と明らかに違っていることも感じていました。

思ったことは直接言わず、SNS上で吐き出せばいい
それが当たり前なんですね。

その結果が、この老害叩きに繋がっています。

世代間の分断を止めたい

最後に。
私がなぜ今回、ソフト老害のトレンド入りの件を取り上げて記事にしたかをお話ししようと思います。

それは、

世代間の分断を止めたいから

です。

「ソフト老害」は鈴木さん自身が自省的に使用している言葉なので違いますが、「老害」という言葉は明らかに分断を助長しています。

現代という時代は、あまりに社会、経済、科学などの進歩スピードが早く、数年生まれが違うだけで価値観が異なる時代。

それをそのまま放置すると、どの組織もコミュニティーも家族ですらも居心地が悪いものになってしまいます。

その挙句が、
「家族はいらない」
「仕事をしたくない」
「一人でゆっくりしていたい」
という価値観。

その負の連鎖を何とか止めたい。
これが私の願いです。

分断を止めるためには、世代間の理解を積極的にしていく以外に手はありません。

そして、老害扱いされてきた世代の方々もいいお年の方が増え、老化に伴う頑固さから柔軟性を失っている方も多くなっているかと思います。

だからこそ、これから働き盛りになる私を含めたゆとり世代以下がコミュニケーションを怖がらず、歴史を俯瞰して世代理解を進めることが肝要だと私は感じています。

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