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“誰もに居場所がある社会” が見据える未来


noteを始めて約3年。
今でこそ、好きな音楽についての話が(多分)8割くらいを占める私のnoteですが、今回は久しぶりに初心にかえって(?)書こうと思います。

もともと私がnoteを始めたのは、この記事を書くためでした。


かつて、「働けないひと」だった私にとっての希望のような会社、パプアニューギニア海産
※執筆当時、工場は大阪の茨木市にありましたが、その後移転して今は摂津市が所在地です。

「好きな日に働く(好きな日に休める)」「嫌いな仕事はやってはいけない」などのちょっとユニークな?働き方を取り入れていて、パプアニューギニア産のエビを加工、販売している水産工場です。

この会社のことをもっといろんな人に知ってほしいという思いから、noteを始めたのでした。
(ちなみに私は従業員、親族等一切の関係者ではありません)

長年使っているアメブロではなくnoteをプラットフォームにしようと思ったのは、その方が多くの人に届くのではないかと思ったから。
また、パプアニューギニア海産の工場長・武藤北斗さんもnoteを使っていたから。

とはいえ、noteに知り合いがいるわけでもない無名な人間が書いた記事は最初ほとんど読まれませんでした。
(それでも、ぽつりぽつりと「スキ(いいね)」の通知が届くたびに有り難くって心の中で手を合わせていたのですが)

それがある日、note編集部のおすすめ記事にピックアップされたことでたくさんの方の目に触れて、反応をいただくに至りました。
今でも、私が書いたnoteの中でいちばん多く反応をいただいているのはこの記事です。

また、noteで「わたしが応援する会社」というコンテストがあると知って、パプアニューギニア海産さんのことじゃん!と思った私は上記のnoteをコンテスト用に書き直した記事で応募。入賞したことにより、そこでもまた多くの反応をいただき、パプアさんのことを知っていただく願いが叶ったのかなと思います。


そのパプアニューギニア海産さんが、先日「がっちりマンデー」という番組で取り上げられたんです。
私はというと、放送があることは武藤さんのTwitterを見て知っていたのですが見逃してしまい……
でも、たまたま放送を見ていたフォロワーさん複数名から「テレビにパプアニューギニア海産さんが出てる!」「ひとさんのnoteで紹介していた会社だ!」などと反応をいただいて。びっくり&うれしくて。

数年前に書いた記事をこうして覚えてもらえてて、それを伝えてくださる人たちがいて……
書いてよかったなぁと本当にありがたく思いました。
(その後、Tverで番組を見られると知って私も視聴しました)

テレビ放送の反響はすさまじく、番組を見ていた起業家さんやインフルエンサーの方が「この会社の働き方が面白い!」とTwitterで発信したことによりどんどん拡散され、今確認したところ「いいね」は12.3万件、リツイートは2.8万件以上にまで上っています。


今までにもメディアで取り上げられたりするたびに話題になることはありましたが、ここまでのことは初めてのように思います。

応援している会社が話題になってうれしい反面、ここまで反響が大きいと疑問やネガティブな声もいくらか寄せられているようで……
15分ほどの番組だったので、どうしても伝えきれない部分はあるだろうし、さらにその内容を要約したツイートの反響となると、ある意味仕方ないとも言えます。
けど、真意が伝わらず誤解されているのを見るのは、関係者でなくともなんとももどかしい……

該当の番組では、パプアニューギニア海産さんの働き方の中でも主に「遅れる・休む際の連絡禁止(無断欠勤OK)」と「嫌いな作業をするのは禁止」についてクローズアップされていました。
他にも「助け合い禁止」「仲良くなるの禁止」などもちらっと触れられていたり。

パプアさんには、従業員が心地よく働くための細かな「ルール」がいくつも存在します。
「ルール」というとなんとなく窮屈で、従業員を支配したり機械のように扱っているかのような印象を受けるかもしれませんが、武藤さんの狙いは真逆です。
その「ルール」で職場が実際にうまくまわっているどころか、従業員も辞めなくなって、仕事の効率も品質も売り上げも上がっているというのだからすごいですよね。


反響のツイートだけ見た人たちが、上手い話すぎて疑いたくなるのも、分からなくはないです。何か裏があるんじゃないか?って。
それだけ、一般的に仕事環境や人間関係においての裏切り?や不満が蔓延っているということなのかもしれないなぁと思いつつ。

そういうのに疲れた人がたどり着くのが、パプアニューギニア海産みたいな場所でもあるのかなと思います。
だから、争いの種になるようなことはルール化する。いかにストレスなく働いていけるかを、全員の考えを尊重しながら、話し合い、実行する…… というのを何年もかけて繰り返して、今の形になっていったのです。

番組では伝えられていませんでしたが、パプアさんははじめからこのような働き方だったわけではなく、むしろ昔は真逆だったと言います。
監視カメラで従業員を管理して、規則も従業員を縛るためのものという認識。
そんな環境では、従業員同士での陰口なども絶えなかったそう。

転機となったのは、2011年の東日本大震災。
もともと宮城県の石巻市にあった工場が津波で流され、大阪に移転。
工場再建の中で見えてきたのは、誰も会社のことを信用していない・従業員が生かされていないという現実。
武藤さん自身も震災から生きること・死ぬことについて考え、「従業員が生きるための職場」「働きやすい会社」にしなければという強い思いが、変わるきっかけとなったのだそうです。

「僕が変われたからみんなも変われる」
積み重ねてきた年月も含めて、そう語る武藤さんの言葉には説得力があります。


テレビやその内容を切り取ったツイートを見て疑問や疑念を抱いた人がいれば、ぜひご本人のnoteを覗いてみてほしいなぁと思うのです。
だいたいのことは、すでに書いておられるので。


仲良くしないというと言葉が強いですが、その背景にある『誰かを排除しないために』という想いを知ってもらうと少し柔らかく聞こえるかもしれません。
noteより引用
他にも作業テーブルに入る順番とか、休憩の入り方とか、小さな具体策を積み重ねることで仲良くしないけれど、それは冷たいわけでも、感じが悪いわけでもないという空気感を作ってきました

 何となくでも分かってもらえたらなら嬉しいですが、仲良くするなというのは私がみんなをコントロールするためでもないし、団結させないためでもないし、機械のようにみているからでもありません。むしろ思いやりを持ち合った人間だからこそ、パートさんという働き方を選んだ人が苦しまないため、長く働き続けるためにこの結果に辿り着いたのです。
noteより引用



 私からすると助け合う工程というのは、場の空気をよんだり、忖度したり、全員が全体を把握しているといったことが前提になっている気がします。パートさんのように毎日出勤するわけではない従業員からすると、それをクリアすることは無理があるだろうし、無理と感じれば圧力をかけることで自分の存在をアピールしたり、それぞれが必死に自分の居場所を作るための争いや排除がおきてくるのは当然のように思います。

 だからこそ、助け合う必要のない職場にしなければと考えていますし、細かなルールを作りながら、働くうえでの本質的な選択肢は増やしていく絶妙なバランスづくりを大切に考えています。
noteより引用


誤解や疑問を抱いている人に真意が届くといいな。響くといいな。そう思います。

それでもどうにも理解しがたい、相容れないと思うのであれば、それはもう、その人(会社)なりの正解を追求していくといいんじゃないかと思ったり。

なにも、パプアさんのやり方をそっくりそのまま取り入れることが理想なわけでも、たったひとつの正解というわけでもなくて。
それぞれの職場にとっての「より良い方法」みたいなものがあると思うので。
大切なのは、従業員と心から向き合うこと、ひとりひとりの「生活」を尊重すること。
「人は争うもの」、だからこそ争いが起きないためにどうしたらいいかを、絶え間なく考えて試行錯誤していくことなんじゃないでしょうか。
……ってこれが難しいからこそ、実行できているパプアさんはすごいなぁと思うわけですが。

社会には、パプアさんのような働き方を求めている人はきっとたくさんいると思うのです。
かつての私のように、働きたくても「働けないひと」たちが。

そんな、ある意味見えにくい存在というか、そういう人たちを取りこぼさない、そんな人たちが働きやすい社会は、その他大勢にとっても働きやすい社会になるんじゃないかと私は思っています。

これは、武藤さんが目指している「誰も排除しない社会」「誰もに居場所がある社会」にも通ずる部分です。


そして、ここからが今回のnotoの本題とも言えるんですけど……(すでに長いけど、もう少しお付き合いいただけるとうれしいです)

パプアさん以外にも、社会から「見えにくい」存在に目を向けている企業や個人はもちろんいて。
個人的に注目している会社や人を、紹介したいなと思います。

人によって響く・響かないはあると思いますが、こんな考えや、働き方もあるんだよ〜って、少しでも知ってもらえる契機になればうれしいです。

では、さっそく。


■岡山県総社市市長、片岡聡一

私が片岡市長のことを知ったのは、2018年の「平成30年7月豪雨」のとき。
Twitterを通して知った片岡市長の奔走っぷりに胸を打たれ、当時の私にとってまったく縁もゆかりもない土地である岡山県の市長のTwitterをフォローするに至りました。

片岡市長の発信の中でも特に印象に残っているのが、2014年のこの記事(私が読んだのはもう少しあとですが)

僕の夢はね、障がい者の「人生の3段階」を、総社市で完成させることなんですよ。ファーストステージは「生まれて育ち、教育する」こと。セカンドステージは「就労、社会に出る」こと。そしてラストステージは、「老い、死んでいく」場を用意すること。

だからまず、障がい者を1000人雇用することを目標にした「障がい者千人雇用」っていうのを始めたんです。
記事より引用


片岡市長が掲げた「障がい者千人雇用」
最初は「そんなこと出来るわけがない」と猛反対されたのだとか。
でも、市長の決意は揺らがなかった。結果的に、3年で721人まで就労できたと言います。

記事中の、障害のある子どもを育てるお母さんの言葉がとても印象的です。

【この子を総社市が迎え入れてくれるなら、つらい日々も泳ぎきれる】

「市長さんね、あなた障がい者を子どもに持ったことないから、わからないと思いますけど、この子を学校に行かせるまでが、毎日、もう大変なんです。
(中略)
そんなつらい日々をどれだけ積み重ねても、どうせこの子は学校を卒業したら行くところがないし、社会は絶対、迎え入れてはくれない。そう思って途方にくれていました。だけど、この子たちが高等支援学校を卒業したら、総社市が本当に全員就職させてくれて迎え入れてくれるって、約束をしてくれた。――ああ、私、あそこまで泳いで行ったら、この子が生きて行ける場所がある。そう思うと毎日が我慢できる」って言うんですよ。
記事より引用

記事のインタビュアーさんが「なんだか涙が出そうです」とおっしゃっていますが、私も、読むたびに泣きそうになります。

生きていける場所がある。「居場所」がある。そう信じられることって、生きていく希望なんですよ。

こういう「希望」を、豪雨のときにも、その後あらゆる場面でも、片岡市長はたびたび示してくれています。
私は総社市の人間ではないし、直接その恩恵にあずかれるわけでもない。
でも、そういう人がいるということ自体が、希望なんです。

僕らが1000人雇用を達成できたら、813ある市のうち、あちこちが「うちもやる」と、手を挙げるようになる。そうなったら、障がい者の居場所は絶対変わってくる。そう信じています。
記事より引用

私もそう信じています。


■久遠チョコレート、代表 夏目浩次


「誰も排除しない社会をこのチョコを通じて示したい」


久遠チョコレートは、愛知県豊橋市を拠点に全国展開するチョコレート店。従業員の半数以上は障害のある人です。

代表の夏目浩次さんは学生の頃、知り会った人から「障害者が働いても月収が3000〜4000円の例もある」という現実を知ります。
理不尽さを覚えた夏目さんは、障害のある人が自立できる場をつくろうと2003年にパン工場を開設。でも、赤字がつづいてしまいました。

そこで2013年、パンと比べると作業工程が単純で利益率も高いチョコレートに着目。
今では障害のある人の月給は直営店で15万~16万円、フランチャイズ店でも平均6万円。求人を出すと応募が殺到するそうです。

パプアニューギニア海産さんも、求人を出すと毎回応募が殺到するそう。
それだけ働きたい人、社会に居場所を求めている人はいるんですよね。
目を向けられていないだけで、有力な働き手はたくさんいると思うのです。

障害者だけでなく、子育て中の母親や不登校の若者、さまざまな背景のスタッフが働いている。みんなで、チョコのトップブランドを目指しています」
記事より引用


いつか食べてみたいなぁ、久遠チョコレートのチョコ。

ところで、チョコレートと障害者雇用と聞いて思い出すのは、スワンベーカリー町田ラスク
以前、作家の岸田奈美さんが記事にしていて知って、私も自宅用とプレゼント用で購入したことがあります。

町田ラスク 岸田エディション
ミルク、抹茶、ほうじ茶味



「ベーカリー」と「ラスク」という言葉からも分かるように、スワンベーカリーはパン屋さんです。
当時の記事によると、36名の障害のある人たちがここで働いているとのこと。
「町田ラスク」は、スワンベーカリー特製のフランスパンにチョコレートをかけた商品です。

余分な脂肪分を含まない純チョコレートは、テンパリングなどの技術が必要になりますが「一回失敗したら終わりではなく、チョコレートは溶かしてやり直すことができる」ので、手先を細かく動かすことが難しい障害のあるスタッフさんでも、扱いやすいのです。
記事より引用

テンパリング(調温作業)は、チョコレートのツヤ、口当たり、なめらかさなど見た目や味にかかわる大切な作業。
でも、「失敗してもやり直せる」というのはうれしいですね。本人だけじゃなく、周りもおおらかな気持ちで接することができそう。
チョコレートっておいしいだけじゃなくて、いろんな可能性の塊なんだなぁ。


そして、このnotoを書く中で新たな発見も。
久遠チョコレート×スワンベーカリー町田店」という店舗があるそうです!
点と点がつながった感。

 「わたしたちは、すばらしい出会いに恵まれたことに心から感謝するとともに、障害のある人のディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現と事業を通じての社会貢献・地域貢献をめざし、より一層の努力を続けていきたい」
代表理事、天野貴彦さんより


商品そのものへのこだわりはもちろん、そこで働く人たちの「心持ち」というのは、商品の品質にも反映されると思っています。
百聞は一見にしかず…… じゃないけれど、ここにつらつらと書いたいろんなことは、たとえばパプアさんなら、パプアさんのおいしいエビが雄弁に語ってくれるはず。
なので、何はともあれ実際に食べてみてほしいなぁと思います。
私もまた食べたい。もちろん、久遠チョコレートのチョコや、町田ラスクも。


🦐 🍫 🥖 🦐 🍫 🥖


今の私は、生活自体はまだ安定しているとは言い難いけれど、ありがたいことに安定して働けてはいます。
でも、いつまた「働けないひと」になるか分かりません。それは私に限った話ではなく、誰にでも起こりうること。
そうなったときに、だれもが途方に暮れなくていい社会であってほしいです。

仕事に求めることは、人それぞれで。
それこそ、仕事こそが生き甲斐!という人もいて、それはそれでとても素晴らしいこと。
でも、特に時給という働き方を選んでいる人の多くは、どちらかというと仕事以外の「生活面」こそが「本番」である場合が多いと思うのです。
仕事よりも、「生活」に重きをおきたい。だから、仕事ではなるべくストレスなく働きたい。
そう願うのは、わがままでもなんでもないと思うのです。

大切にしたいことも、人それぞれにあって。
自分が「大切にしたいもの」を大切にできる環境であれば、他人が「大切にしたいもの」も大切にできるんじゃないかな。

……なんて綺麗事?理想論でしょうか。でも、

「綺麗事だ 理想論だ」 って理想も語れなきゃ終わりだ
ジュブナイル/amazarashi

って結局、いつもみたいに好きな音楽の歌詞を引っ張り出してきてしまいましたが。
やっぱり私はそう信じたいのです。


僕達のような考えや働き方が増えたら、きっと今いろんな理由で働けない人が一緒に働くという選択肢をえることができます。

だれも排除せずともに生きていく社会は多くの人が安心して暮らせる世の中になると思います。

僕はそこを目指したいです。
武藤さんのTwitterより


私は、なにも武藤さんを完全無欠の神のように崇めているわけではありません。
そして私自身も、見えていない部分や思い至らない部分はたくさんあるはずなので、私の信じたいものが本当に正しいのかどうかも自信はないです。
でも、かつて「働けないひと」だった私にとってパプアさんの働き方は希望そのものだったし、その根っこの部分は今でも変わらない。
いろんな面も含めて、これからも応援していく所存です。

そして、「誰もに居場所がある社会」というのを私も私なりに(実行力、行動力は弱いけれど)目指していきたい。

「ここまで来たら大丈夫」から、いつか「どこまで行っても大丈夫」と思えるくらいの安心感を。

“この日々を泳いでゆける”
そう信じられるような「居場所」を、「向こう岸」をたくさんつくって、広げて。
遠い遠い未来まで、守って受け継いでいきたいと思うのです。


※そしてnotoでは相変わらず、好きな音楽の話とかを自由にのびのび書いていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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