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自分が生み出したもの(作品)に価値が生まれるということ

物心ついたときから、何かつくるのが好きでした。

絵や、文章や、音楽や、お菓子作りなど、「創作」をしていると、思いがけずうれしい出来事にめぐり会えることがあります。

例えば、自分が作ったものに何らかの「反応」をいただくなど。
古い記憶だと、子どもの頃に絵や工作を褒めてもらったことだとか。
最近だと、SNSやブログで作品を公開して「いいね」やコメントをいただいたり。
そこから、素敵なご縁がつながったりとか。

そういう、「お金に変えられない価値」もたくさんあるけれど、中には「お金に変わる価値」が生まれることもあったりします。

自分の生み出したものが初めてお金に変わったときは、なんともいえぬ不思議な衝撃がありました。

今回はそんな、自分が作ったものに「対価」が生まれたときのお話と、
「ものづくり」をしていく中で受け取った、忘れたくない言葉。
その言葉に気付かされた、「大切なこと」について…などを書き留めておこうと思います。

私には、7年ほど前から趣味で書いているブログがあります。
特にジャンルも決まっておらず、好きなことや感じたことについて雑多にマイペースに綴ってる箱庭的存在。もしくは実家のような存在。

文章だけでなく、描いた絵や工作したものを載せたりすることも。
中でも、作ったお菓子の写真はけっこうな数になっていて
「ひとちゃんの作るお菓子が好き」という有り難い言葉をいただいたりしたことも幾度か。

私がお菓子作りにはまったのは小学4年生か5年生のとき(この件については、いずれまた書きたいな)なのですが、それから現在に至るまでずっとお菓子を作りつづけてきました。
まるで、息をするかのように。


例えばこんな感じ(写真多いです。パンもあります。時系列は行ったり来たり)

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最も古い写真で7年前くらい…?ブログなどから引っ張り出してきました。
写真に収めていないものや、もう写真がないものも合わせるともっとたくさん作っています。

つくるのは、とても楽しいです。
たまに失敗もするけれど。

作ってたのしい、食べておいしい。
お菓子作りは、私にとって癒しの時間なのです。


・趣味でお菓子を作っていたら…

今から5年ほど前のある日、ブログで仲良くしていただいている方から声をかけていただいたことがあります。

「うちの商品を使ってお菓子を作って、そのレシピと写真を提供(ホームページに載せるため)していただけませんか?」と。

謝礼もお渡しします、と言われ最初はかなり戸惑いました。

長年お菓子を作ってきたとはいえ、趣味でやっているだけで、ケーキ屋さんでの実務経験もない、いわば素人です。

でも、それでもわざわざ「私に」と依頼してくださったのには理由があるはず。
きっと、今まで私がブログに載せてきたお菓子たちを見てくれていたからこそ、声をかけてくださったのでしょう。

よし、その気持ちに応えられるように誠心誠意込めてやってみよう…!そう決めて、交渉は成立。


そうして送られてきたのがこちらの野菜パウダーたちです。

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ナチュラルなパッケージがかわいくて、すでにワクワクが止まらない…!

ラインナップは、

・のせ栗パウダー
・金時人参パウダー
・さつまいもパウダー
・紫いもパウダー
・バターナッツかぼちゃパウダー
・のせ米パウダー

100%大阪・能勢(のせ)産野菜で作られた『能勢びより』さんのオリジナル商品たちです。

写真には載っていませんが、にんにくパウダー、パプリカパウダー、生姜パウダーもお試しで付いていました。うれしい。

金時人参とかぼちゃは、そのまま舐めても甘くておいしい。
生姜とにんにくは、袋を開けた瞬間いい香り。
紫いもは色がとっても鮮やか。

さて、これらで何を作ろうかなぁ… と考えている時間もとっても楽しいものです。

アイデアをねりねりして、お野菜パウダーはクッキーに、米パウダーはドーナツにしてみることに。


試行錯誤の末、出来上がったのがこちら。

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おやさいパウダーのクッキーと、米粉のドーナツです。

クッキーは最初170度で12分焼いたところ、せっかくの鮮やかなお野菜パウダーの色が飛んでしまったので、150度15分で焼き直し。
低温でじっくり焼いたことで、色もキレイに出てサックサクの食感に。
素朴でやさしい色合いに癒されます。

ドーナツは、オールドファッションタイプ。
米粉のおかげでザックザクな食感。翌朝食べてもサクサクなまま。

クッキーもドーナツも、豊富な食材たちでいろいろ試行錯誤できて、実験みたいでとても楽しい経験でした。

レシピは『のせびより』さんのホームページに掲載していただいております。

※現在、おやさいパウダーは「のせ栗パウダー」のみの販売となっております。
にもかかわらず、いまだに私が提供したレシピを掲載していただいてることに なんだかじ〜んとしました…。

ぜひ、能勢のおいしい栗パウダーや栗加工品を覗いてみてくださいね。

安心・安全な食「能勢びより」大阪府能勢町特産栗100%使用の栗パウダー加工品・くりの専門店『のせびより』


・ひとりでは出会えない楽しさもある

さてさて、それから約2年ほど経ったある日、また別の方からブログを通してお声かけをいただきました。

今度は「1歳の誕生日を迎える娘のために、お菓子を作ってほしい。そしてそれを買わせてほしい」というもの。

そのときの私の心境は

「心の中がぱぁっと温かくなるような
キラキラやる気でみなぎるような」

と、当時のブログに記されています。

大切な娘さんのお誕生日に私のお菓子を…と思ってくださる人がいるなんて。こんな嬉しいことありません。
その子がお母さんのお腹にいる頃から、ブログを通して成長を見守ってきた 私にとってもかわいいかわいい娘さんです。

本当に嬉しかったのと、日頃からブログで親しくしていただいてる方だったのもあり、私は
「ぜひ、プレゼントさせてください」と申し出ました。

するとその方は
「ひとちゃんならきっとそう言うと思ったよ。でも、どうかお金を払わせてほしいの」
とおっしゃるのです。

困惑しつつも、その真剣な気持ちを受け止めて制作にとりかかることに。

大切な娘さんが口にするお菓子、大切に大切に作るぞ〜 とやる気がみなぎります。

しかし、昔はよく手作りのお菓子を知人友人に配ってまわっていた私ですが、自分が子どもを産んだあたりからパッタリとやめてしまっていました。

理由は様々。
衛生面の心配や、そもそも他人の手作りは受け付けないという人が一定数いる事実を知ったことなど。
そして、はっきり断れる方ならまだしも、断りづらい人もいるだろうな…ということなどなど。

のせびよりさんの依頼は写真とレシピだけの提供だったので、作ったクッキーやドーナツはわが家でいただきました。

でも今回は、作ったお菓子を郵送して実際に食べていただくわけです。しかも、1歳のお子さんに。

楽しみな気持ちと、緊張が入り混じります。
でもこの緊張をいい意味でのプレッシャーに変えて、「誠心誠意込めてやってみよう」
やっぱりこれしかないな、と。


まずは諸々の不安を減らすために、対策を練ります。

・調理器具のアルコール消毒などは入念に
・送るのは涼しくなってから(お誕生日は9月なのでここはクリア。と言っても近年は9月でもあっついですが…)
・郵送する直前に作って完全に冷ましてから即ラッピング
・湿気対策にシリカゲル(乾燥剤)を封入 など


そして、作るお菓子の条件として

・水分の少ない焼き菓子
・1歳の子でも食べられる
・白砂糖や油脂をなるべく使わない
・卵白を使わない(アレルギーの疑いがあったので)
・おいしい
・栄養も摂れたらなお良し

などなどの条件をあわせて考えた末、たどり着いたお菓子がたまごボーロでした。

使用した材料は、片栗粉、卵黄、きび砂糖、スキムミルク、野菜パウダー(コープのほうれん草パウダーと、のせびよりさんの紫芋パウダー

※鶏卵アレルギーの主なアレルゲンは、卵黄ではなく卵白に含まれるタンパク成分です。
今回は先方に確認をとった上で調理していますが、ご家庭で作る際に卵黄から完全に卵白を取り除くことは難しいと思うので、鶏卵アレルギーやその疑いがある方は主治医に相談してくださいね。


お菓子作りをしていると、新しい発見をすることがあります。
今回のたまごボーロの原材料を例にあげると…


①紫芋パウダー

私も過去に経験があるのですが、紫芋パウダーを使ってきれいな紫色のケーキを作ろうと思ったら… 青緑色の、なんとも食欲の湧かないケーキが出来上がってしまったことが…。

これは、紫芋の紫色の色素アントシアニンがケーキに使うたまご(卵白)やベーキングパウダーなどアルカリ性の物質と反応して起こる現象なのです。

とは言え、たまごもベーキングパウダーもケーキ作りには欠かせない… どうしたらいいの?

紫芋のきれいな色を生かしたケーキを作る(変色を防ぐ)には、紫芋パウダーに酸性のレモン汁を混ぜておくといいそうです。

詳しくはネットや本のレシピを参考にしてくださいね。

変色したケーキは見た目がなかなか毒々しいけれど、食べても害はありません。

アントシアニン(ポリフェノール)は、目の疲れやかすみ、夜間視力の回復にも効果があると言われています。
視力といえばブルーベリーが思い浮かびますが、ブルーベリーもアントシアニンの色素をもっているので、ケーキに混ぜるときは紫芋同様、変色に注意してくださいね。

話が逸れてしまいましたが、今回のたまごボーロに使用するのは「卵黄」だけなので変色は心配しなくてOKです。

逆に変色を利用して、お菓子やキャラ弁作りをするという面白い記事もみつけました。
(写真がいっぱいで見やすくて楽しいです♪)

みかさの国産野菜パウダー
スイーツ、キャラ弁がひと振りで手間なくカラフルに!

お菓子作りって、奥が深〜くておもしろい!


②きび砂糖

たまごボーロ作りにきび砂糖を使用することにしたのは、精製されていないお砂糖ということと、粉砂糖のように粒子が細かいので、お口ですぅーっと溶ける食感を出しやすいのではないかと思ったからです。

しかし、念には念をといろいろ調べていく中で大きな問題にぶつかりました。

ボツリヌス菌の心配があるため、1歳未満の赤ちゃんに「はちみつ」を与えてはいけない... というのは近年有名なお話しなのでご存知方も多いかと思います。

このボツリヌス菌が、きび砂糖にも含まれている可能性があるらしく...
はちみつ同様、1歳前後の赤ちゃんには与えないように... という記述をネット上で見つけたのです。

たまごボーロは焼き菓子とはいえ、ボツリヌス菌は熱に強いのでちょっと心配...

ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を作るため、120℃4分間(あるいは100℃6時間)以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。
東京都福祉保健局より)

一般的な焼き菓子なら120℃4分間というのはクリアできると思うのですが… 念には念を、です。

ネットでいくら探しても安心できる答えは見つからないので、きび砂糖を作っている会社に直接問い合わせてみることにしました。

ちなみに、使用した(問い合わせた)きび砂糖はスプーン印で有名な三井製糖さんの「国産さとうきび糖」です。

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ホームページを見てもボツリヌス菌に関する記述は見つけられなかった(見落としていたらすみません)ので、電話で問い合わせました。ちょっと緊張…。


問い合わせ内容としては、

「1歳の子どもにきび砂糖を使っておやつを手作りしたい。
しかしネットできび砂糖はボツリヌス菌の心配があるため1歳前後の乳幼児には与えない方がいい、という情報をみて心配になった。1歳前後の幼い子には与えない方がいいのか」

というような感じです。

すると先方の第一声は
「あ、大丈夫でございます」

少々お待ち下さいとか、担当の者に代わりますとかでもなく、はっきりキッパリ自信のある「大丈夫」が聞けたことにとても安心感が。

さらに詳しく聞いてみると、
「弊社では製造の過程で「過熱処理」をしているうえ、今までの検査でもボツリヌス菌が検出されたことはないので、1歳未満の赤ちゃんでも食べていただいて大丈夫でございます」とのこと。

これだけはっきり「大丈夫」と言っていただけると、とても頼もしいですね。
安心してきび砂糖を使用することができました。

※あくまで三井製糖さんの商品の場合は、かもしれないので、他社のきび砂糖を1歳未満の乳児に与える場合はその会社に問い合わせてみた方が安心かと思います。


ちなみに他社だと、カップ印の日清製糖さんはホームページできび砂糖とボツリヌス菌についてこのように回答してらっしゃいます。

Q15 ボツリヌス菌が心配ですが、きび砂糖、プレミアムきび砂糖を乳幼児食に使っても問題ありませんか?
A15 安心してお使いいただけます。
 ボツリヌス菌は、土壌、河川あるいは海洋に広く存在していますが、低酸素状態に置かれると菌が増殖することにより、毒素が発生すると言われています。ただし、このボツリヌス菌は、一定以上の高温で一定時間以上加熱(例えば“120℃4分以上”加熱)されると死滅します。
きび砂糖とプレミアムきび砂糖の製造工程には、加熱処理工程(“120℃4分以上”に相当する加熱)がありますので、万一、ボツリヌス菌が原料に潜んでいたとしても、確実に菌は死滅し、ボツリヌス毒素についても完全に無毒化されます。
また、これら製品の検査を定期的に行っておりますが、これまでボツリヌス菌を検出したことはありません。
日清製糖 「よくある質問(お砂糖)」より)


日清製糖さんのきび砂糖も、安心して乳幼児食に使用できますね。

ところで先ほどから「きび砂糖」と表記していますが、きび砂糖というのは上白糖や三温糖といったお砂糖の種類名ではなく、日清製糖さんの登録商標、つまり商品名なのだそうです。
サランラップやジップロックみたいな感じですかね。

私はわりと最近になってこの事実を知って、だいぶ驚きました。

そうと知ってからお店の商品たちをよくよく見てみると、確かに日清製糖さん以外は「きび砂糖」ではなく「さとうきび糖」などと表記してある…!
三井製糖さんもそうですね。

日清製糖さんのホームページによると、

三温糖は完全に精製された砂糖液から、白砂糖やグラニュ糖などをくり返し作った後の液を結晶させて作ります。三温糖の色は、精製の工程で加熱をくり返すことにより付いたものです。成分も白砂糖とさほど違いません。
これに対し、きび砂糖は精製途中の砂糖液を、そのまま煮詰めて作ります。そのため、さとうきびの風味とミネラルが活きています。

とのこと。

ふむふむ、なるほど〜!

三井製糖さんの「国産さとうきび糖」は

沖縄のさとうきびで作った原料糖から、まろやかな甘さのお砂糖に仕上げました。
コクのある甘さで、お料理をおいしく仕上げます。
※ 「原料糖」は、さとうきびから糖分をとりだし、結晶化したものです。

とのこと。

上白糖やグラニュー糖に比べて、旨味やミネラルを多く含んでいるのが、きび砂糖やさとうきび糖と表記されるお砂糖の特徴なようです。


ものづくり、特に依頼を受けてのものづくりをしていると、自分だけでは辿り着けなかったかもしれないジャンルの知識や、新しい発見に出会えることが多々あって、こういうのも「ものづくり」の楽しさの一つだなぁと思うのです。


・「30年と30秒」の意味。作品の価値はどうやって決まるのか

さてさて、たまごボーロはこんな感じに出来上がりました。

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ほんのり3色がかわいい。
原材料表示と、レシピも添えることにします。

たまごボーロはこれまでにも作ったことがあったのですが、手作りだとどうにも市販品のように軽い口溶けにならず(それはそれでクッキーっぽくて好きなのですが)上手くいったりいかなかったりしていました。

今回のは配合や焼き加減などを試行錯誤して、サックリほろり&すぅーっとした口どけへと辿りついた今まででも最高の出来。

うれしい気持ちをシリカゲル(乾燥剤)とともに密封して、割れないように大切に梱包。
お口に入るまでこの状態がつづきますように…どうかお口に合いますように…と祈りながら発送しました。

たまごボーロは無事に依頼主さんのもとへ。
後日、娘さんがボーロを食べたときの様子をお母さんがブログにアップしてくださいました。

最近覚えたばかりという「ばんざーい」をして喜んでいる姿(尊い)、たくさん欲しがってやめさせるのが大変だった...というエピソードなど。

もう、本当~にしあわせな気持ちになりました。

お口に合ってよかった。
娘さんにも、お母さんにもよろこんでもらえて、大切な記念日を少しでも一緒にお祝いできて、本当に本当〜に嬉しかった。

どんなお菓子がいいかなって考えたり、何度も試作して、相手の顔を思い浮かべながら(会ったことはないのでお顔は知らないのだけど)作ったり、
ラッピングして、ドキドキしながら郵送して、そして「ありがとう」の気持ちまでいただいて。
とってもとっても特別な時間を過ごさせてもらいました。
こちらこそ「ありがとう」なのです。

胸がいっぱいで、もう本当にお代金はいらないですという気持ちでしたが、
「買わせてほしい」というご依頼通り、お代金を頂戴いたしました(金額は特に決めておらず、お相手におまかせしておりました)

しかし想定外に多い金額をいただいて、びっくり恐縮。

材料費や、アイデアを練る時間、作るのにかかった時間、包装材の準備などの手間隙を考慮しても… こんなにいただいていいのかしら?と戸惑ってしまう。

すると、そんな私のことはお見通しかのように彼女はこう言ったのです。
(ものすごくうろ覚えなので、ニュアンスですが…)


こんなに貰えないって思うかもしれないけど、どうか受け取って。
これは、ひとちゃんが今までにお菓子作りにかけてきた時間や、技術に対しての気持ちだから


彼女のその言葉に、私はハッとしました。

作品の価値というのは、単に材料費や作るのにかかった時間だけではないのだと。

例えば作るのに1時間かかったお菓子があるとして、でもその1時間は今までに積み上げてきた何十時間、何年という重みの詰まった1時間なのだと。
その分の価値が、作品には宿っているのだと。


つい最近知ったのですが、かの有名な画家ピカソの逸話がまさにこれだと思いました。

ある日、1人の女性に声をかけられたピカソ。
自身の大ファンだという女性から、「この紙(ハンカチなど、諸説あり)に絵を書いてほしい」と頼まれ、ピカソは快く引き受けます。
そして、「この絵の値段は100万ドルです」と言い女性に絵を渡しました。
女性は驚いて、「この絵を描くのにあなたはたった30秒しかかかっていないではありませんか」と言葉を返します。
ピカソは苦笑いしながら、「お嬢さん、それは違うよ。30年と30秒だ」と言いました。

たまごボーロの彼女がピカソの逸話を知っていたのか、彼女自身の経験などからあのような言葉が出たのかは分かりません。

いずれにせよ、ものづくりをする人がどれだけの時間や労力やお金をかけて向き合いながら作品を生み出しているかを、その尊さを知っているからこそ言える言葉だと思います。

彼女の言葉は、私にとって大きな衝撃と感動をもたらしました。

ものすごく大切なことを教えていただいた…
この先もずっとずっと忘れないでおこう。そう思い、心に大切に刻みました。


彼女も、のせびよりさんもそうですが、金銭の伴う依頼の最初の2人が彼女たちのような人だった私は、恵まれていたと思います。

私はミニチュアやフェイクフード(本物そっくりな食べものモチーフ、アクセサリーなど)が好きで、そういった作品を作っているハンドメイドの作家さんをTwitterで多くフォローしています。
絵描きさんも多いですね。
おかげで私のタイムラインは素晴らしい作品で日々あふれていて、眼福です。

時には、制作の悩みやトラブルに関する呟きも。
その中でも定期的に見かけるのが、無料もしくは割に合わない条件で作品を譲ってほしいと言われ困っているクリエイターさんの呟き。

例えば無料で絵を描いてほしいという依頼だったり、作り方や材料、材料の仕入れ先などを細かく訊かれたり… など。

相手に悪気はないのかもしれません。
相場が分からなかったり、作品が出来上がるまでの過程をイメージできなかったり。

クリエイターさんの中にはハンドメイド一本で生活してらっしゃる方もいますが、本業や副業が別にある方もいます。お子さんのいらっしゃる方だと、家事や育児の合間に時間をやりくりして制作にあたっておられたり。時には睡眠時間を削ることも。

そうまでしても作るのは、なぜでしょう。
やっぱり、つくるのが好きだから。
そして、作ったものを喜んでくれる人がいるから… というのは大きいんじゃないでしょうか。

イメージを形にするためのパーツ探しや材料の調達、制作に必要な道具や情報の収集、失敗と成功の繰り返し…
そのような地道な積み重ねが、その人の作品のオリジナリティや価値を作り上げているのだなぁと思います。
たくさんの時間や労力、お金を費やして一つひとつの作品に向き合っている様子を、フォローしているクリエイターさんたちの呟きなどから私も日々学んでいるところです。

何がダメでどこまでOKなのかは、クリエイターさんの匙加減や双方の関係性などにもよるので、一概には言えません。
でも、いろいろなことをすっ飛ばしていきなり無茶なお願いをするのは少し失礼というか、下手すると相手の好意や親切心につけこんだ「搾取」にすらなってしまいかねないので、気をつけたいです。
悪気がなければいいというわけではないのですよね。
(私も知らず知らずのうちに失礼をしてきたことがあったかもしれないなぁ…)

中には、そういった依頼の対応に疲れてものづくりを辞める選択をしたクリエイターさんの姿も見てきました。
依頼した方も、少なくともその人の作品が好きだからこそ、欲しいと思ったからこそ声をかけたはず。
なのにこのような結末になってしまうのは、なんだか切ないです。
ほんの少し想像力を働かせて、一呼吸置いてから声をかけるよう気をつけたいですね。


もともとは好きな作品を日常的に見たくてフォローしたハンドメイド作家さんや絵描きさんのTwitterですが、ものづくりに対する姿勢や価格設定の考え方、
界隈でのマナーなど、思いがけず勉強になることが多々あります。作品を楽しむ側としても、クリエイター側としても。

いつもそっと見守りつつ、自分だったらどうするだろう?と自問自答。
「いいな」と思う感覚と同時に、「ん?」という違和感や疑問にも注目して、自分にとっての「大切にしたいこと」を無意識に整理している気がします。

それらはきっと私が生み出すものにも反映されて、ゆくゆくは自分だけの色や味が出来上がっていくのかな… なんて思っているところです。


ちなみに、たまごボーロの彼女からは今でもサプライズで「贈りもの」が届くことがあります。
ある時は、カフェで使えるギフトカードが入っていました。
「たまには時間作ってカフェでのんびりしてね」
というメッセージとともに。うぅ、あったかい…。

私はその大切なカードを持ってカフェに赴き、「カフェで執筆」という、前からちょっと憧れていたシチュエーションを体験することができました。

普段文章を書くときは家で子どもたちが寝静まったあとのことが多いのですが、カフェはすごいです。
ものすごく集中できる。
おいしいドリンクと軽食を堪能しながら、気付けば2時間も滞在していました。
(本当はもっと居たかったけど、さすがに迷惑かな…と思って。あと娘のお迎えもあったので)

いつもは止まりがちな筆が、その日の2時間でぐんと進んだのでびっくり。
とても有意義な時間を過ごすことができました。

そして、その時書いていた文章は、note×LINE証券の企画『#わたしが応援する会社』にて「入賞」を果たしたのです。なんと賞金までいただきました。
(たまごボーロの彼女も、一緒に受賞をよろこんでくださいました。あったかい…)

依頼という形ではありませんが、「賞金」もまた作品に対する「対価」だと私は思っています。

他にもnoteのサポート機能や、rockin'on.comの「音楽文」への投稿などで金銭を受け取ったことがあるのですが、いずれもその作品にかけた精一杯の時間や想いに対する、称賛や敬意の形としてのお金。
感動や衝撃など、誰かの中に何らかの価値を残せた証。そのように私は捉えています。

うまく言えないけれど、その「お金」には単純に「生活が助かる」という以上に、もらって嬉しいものがありました。

そして、この「うれしい」気持ちを糧にまた 精一杯の時間や思いを次の作品へと注いでいく…。

私にとってものづくりの原点は、よろこび。なのかもしれません。

例に挙げたような依頼とか賞のような華やかな経験は多くはなくとも、そのひとつひとつが私にとってはとても大きくて、大切な宝物です。



・よければ、一緒に

つくるのは、たのしい。
つくるのは、1人でもできる。1人でもたのしい。

でも、誰かと一緒に何か作ったり、誰かのために作ったりすると、「たのしい」がもっと「特別」になる気がしています。


ぼくがひとりでできることなんてなにもない
君とふたりでできることならいくつかある
ぼくがひとりでできることないわけじゃないけど
よければ一緒に そのほうが楽しい
君が前からやってみたいってずっと言ってたこと
それは素敵そうに見えてやや難しいこと
もしもぼくに手伝えることなにかあるなら
よければ一緒に その方が楽しい
(よければ一緒に/KAN)

一人じゃ出来そうにないこと、勇気が出せずにいることも、誰かと一緒になら、出来るときがある。

誰かと一緒に作ったとき、思いがけず「いいな」ってものができることがある。
一人では、見ることができなかった世界に出会えることもある。

「よければ一緒に」

そう思ってもらえるような人でありたいし、そう言える人でもありたいです。


これは私の勝手な想像ですが、私に依頼をしてくれた彼女たちは
「私のつくるものが好きだから」という理由の他に
「私のことを応援したいから」という理由でも、声をかけてくださったんじゃないかと思っています。

ブログでは、赤裸々に生活に困窮している様子なんかを書いたりしたこともあったので、いろんなことが重なって日々がうまくいかない私を見て、何か力になれないかと、胸を痛めていたのではないかな…と。
(彼女たちのお人柄を知っているからこそ、そう感じる部分もあります)

だからと言って現金を直接渡すわけにもいかないし、私もそれはさすがに受け取れません。
だからこそ、「私の技術を買う」という方法で、私を支援しようと考えたのではないかなと、思ったりするのです。

彼女たちだけではありません。
私はいつも、他人からいただいてばかりです。物理的にも、精神的にも。
常に何かお返しがしたいと思いつつも、もらうものの方がどんどん増えていて、なかなか返しきれていません。

私がそう言うと、「もう、既にたくさんもらっているよ」と、信じられないような言葉を皆さんくださるのですが。

冗談抜きで、そんな人たちの存在や言葉に私は「生かされている」と思うのです。

やっぱり、いつか恩返しをしたいな。


生きる力を借りたから 生きているうちに返さなきゃ

BUMP OF CHICKENの「花の名」のこの歌詞に、いつも「うんうん」と頷きながら、大切な人たちに誇れる自分でありたいなと、思うのです。


このnoteをせっせと書いていた最中の令和2年8月24日の早朝(?)のこと。
私が初めて好きになったアーティストであり、心から尊敬しているBUMP OF CHICKENのVo./Gt.、藤原基央さんのご結婚報告がありました。
藤原さんもまた、私の「ものづくり」に大きなきっかけとエネルギーを与えてくれている存在です。
報告があってから1週間が経とうとする未だまだ実感がわかず夢の中にいるような不思議な感覚ですが、敬愛する人とその人にとっての「かけがえのない大切な人」のしあわせを、この場を借りてお祝いします。
そして、これから産み出される音楽のこともとても楽しみにしています。


「ものづくり」をする人たちが、一つひとつの作品に計り知れない時間や想いをかけて、作品を産み出しているということ。
それに対する尊敬の念。忘れずにいたい。

自分が生み出したものに対して、価値や意味を与えてくれる誰かがいるということ。
作品を愛し、敬意を示してくれる人がいること。
当たり前じゃない。忘れずにいたいです。

つくるのは、楽しいことばかりではありません。
つづけるのがしんどくなることもあります。
でも、ものづくりを続けることが、仮にも大切な人たちへの恩返しに少しでもなるのだとしたら、私はこれからも楽しんで作っていきたいなと思うのです。



【おまけ】
藤原さんの結婚発表があった日も、やっぱり私はお菓子を作るのでありました。

家にあるもので作った、ささやかなお祝いプリン
(たまご、牛乳、砂糖だけのシンプルなプリンです。この日は火加減などバッチリで、「す」も入らず最高の仕上がりでした)

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※ちなみにこの猫ちゃんは、藤原さんがよく描く「ニコル」というキャラクターをもとにしています。

↓ちょっと絵がずれちゃったクッキーも

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やっぱり、つくるのはたのしいなぁ。


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