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「人に優しいのドラマ」ショートショート

「へぇ。最近、人気のドラマか」
ネットで流れてきたトピックからそのドラマの配信サイトにアクセスした。

テレビが主流だったころは放送日時を調べたりしたがネットのストリーミングが主流になったいまではそんなことはしない。

少し前までは配信サイトを調べたり、配信サービスに加入したりと煩わしかったがそれも、そこまでも省略され、タップ一つでその動画を視聴することができるのだ。

再生されるドラマにはいま人気の俳優や女優がこれでもかと出演…されることはない。

少し前からいろいろと配慮すること多くなった結果、人間の役者を使うドラマは極端に減った。
今では人間が「出演」しているのは数えるほどしかない。

最初は多様な人種に配慮しないといけないとか、一定数の性的少数派な人たちを出さないといけないとか、そんなところから口を出された。

それに配慮していった結果、忖度事項が山のように膨れ上がった。
恋愛一つ描こうとしても、男女恋愛を描けば、性的少数派をないものとして描いていると苦言をいわれ、
少数派に配慮して、そういった役や恋愛を描いたら次は本来そういった趣向ではない人に役を演じさせているのはなんとかウォッシングだと叩かれた。

もはや人殺しをしていない人が殺人犯役をやるなんて…レベルの苦情がくるありさまでもはや「他者」を演じる「役者」そのものが否定された。

もはや ありのまま 以外が許されなくなってしまった。

結果、かつての役者たちは廃業を余儀なくされた。
もちろん声をあてがう声優も同様だ。

つまりこのドラマの役者はフルCGで、声も合成音声。
人が全くかかわっていない映像というわけだ。

人に配慮した結果、人を排除した誰も文句のつけようのないドラマが流される優しい世界に一歩近づいたのだ。

なんとも味気ない…、と感じないこともないが、そう思うのも一瞬だ。

さきほど一番人気だったドラマは次の瞬間には、別のドラマにその座を奪われた。
人が介しなくなったのは出演者だけではない。
シナリオも演出もすべてAIによる自動生成だ。
人の関わらなくなった映像の生成スピードはけた違いで、量は膨大だ。

毎秒ごとに膨大な配信が開始され、無意味に消費され、淘汰されていく。

こんなことに人がかかわっても何の価値もない。
たしかに人にやさしいドラマなのかもしれない。

最後まで読んでくれて thank you !です。感想つきでシェアをして頂けたら一番嬉しいです。Nazy