塩貝先生「英検は無駄」と言っていた!?
はじめに
本記事では、株式会社ファイブアイズ・イングリッシュ代表の塩貝香織さんが、会社設立前後の時期に主催していたとされる、TOEIC100点アップを目指すプログラム『ECLOSE(エクローズ)』の広告について詳細を見ていく。前回の塩貝氏に関する記事と同様、今回も殆ど英語については語らないネタ記事のため、英語学習にさほど興味の無い方もご一読いただけると嬉しい。個人的には、ツッコミ所が随所に散りばめられており大変香ばしい広告だった。なお、本広告から見出せる塩貝氏の人物像については敢えて言及しない。
『ECLOSE(エクローズ)』とは
初めに書いた通り『ECLOSE(エクローズ)』とは、ファイブアイズ・イングリッシュ代表の塩貝香織氏が主催するTOEIC得点アップを目的としたプログラムだ。
本広告では、講師である塩貝氏のTOEICスコアが980と紹介されているのが特徴だ。
現在受講生を募集しているAI翻訳アカデミーの広告では、塩貝氏は「TOEIC満点講師」を自称している。塩貝氏は、2020/12/6に自身のアメブロでTOEIC満点を取得したことを報告しているため、その前後に作成された広告と思われる。
また、ファイブアイズ・イングリッシュ公式HPによると、会社設立は2020/12/8であることが確認できる。
このことから、本プログラムの企画は、会社設立とほぼ同時期であった可能性が非常に高い。
なお、特定商取引法の表記及びプライバシーポリシーのページが存在しないため、現在このプログラムの生徒募集は実施していないと思われるが、広告内にある購入ボタン4つのうちのどれかをクリックすると、画面が決済ページに遷移する。そのため、生徒募集はしていないものの、決済だけはできるのかもしれないが、詳細は不明である。
料金は3ヶ月分のセッションで44,800円(期間限定で29,800円)で、AI翻訳アカデミーに比べると良心的な値段設定である。プログラム参加者には、週1回のペースで登録したメールアドレス宛にTOEICのエッセンスを詰め込んだ動画が送られてくる。動画配信開始から特定日数以内に参加した人には、メインプログラムとは別に、履歴書の書き方レクチャー音声(奇しくも浅野正憲味がある)などの早期特典がついてくるとのことだが、クソどうでもいいので割愛する。
英検ディスり
本記事で最も興味深い記述の一つは、塩貝氏による英検ディスりだろう。以下、TOEICと引き合いに出して英検ディスりをしている記述を引用する。
確かに塩貝氏の言う通り、TOEIC満点レベルと英検1級レベルとでは、英検1級の方が断然必要とされる語彙が多く、難しいものも多い。TOEICで出題される問題には日常会話やビジネス会話、メールのやり取りなどをテーマとしたものが多い傾向にある。一方英検では学術的、専門的なものをテーマとした読解問題が多い傾向にある。そのような傾向に鑑みるに、確かにTOEICの方がより実生活に密着していると言えるかもしれない。しかしこれは一種「ものの捉え方」の問題で、個人によってどちらを勉強すべきかは異なるだろうし、試験として差別化されているからこそどちらにも需要があるのだから、この2つの試験は一概に優劣を決められるものではない。あくまで塩貝氏個人の意見と捉えておくのが妥当だろう。
また個人的見解として、英検1級レベルの語彙力が無ければ、時事新聞や小説などを読むのにはかなり苦労するように思われる。また、TOEIC(狭義にL&Rのみを指す)と異なり、英検にはライティング問題や二次試験でのスピーキング問題もあり、一つの級を合格するにも総合的な技能が求められる。特にスピーキングは、英語圏での生活に必要不可欠な技能であり、その点では英検はTOEIC(L&R)よりも実践的であるという見方もできる。従って、英検とTOEICはそれぞれ差別化された試験であり、一概に優劣をつけて語ることは適切ではない。
これを読んだ方の中には、「いくら何でも塩貝氏がそんなこと書くわけがないだろう。塩貝氏の名を語った第三者による偽広告なのではないか?」と思う方もいるかもしれない。しかし、本広告の記述には、塩貝氏の著書『ファイブアイズEnglish 「文化」と「習慣」を学べば英語は身につく!』の記述と非常に似通った部分がある。以下、著書より引用する。
なお、塩貝氏の著書に関しては、筆者は書評動画を投稿しているので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。
広告中の「(英検は)試験レベルを上げるためだけに無意味に難しいばかりで、旅行でもビジネスでも使えない」という記述と、著書の「高校くらいから、英語が「不必要」に難しくなって行きます」「「会話」ではなく「読み・書き」としての英語能力を重視しているからです」は、塩貝氏の思想が顕著に現れている部分で、本広告が間違いなくファイブアイズ・イングリッシュの塩貝香織氏によるものだと裏付ける証拠でもある。
TOEICと年収の関係
本広告では、TOEICの点数と、年収、働ける会社、英語力の関係を示した図を添付している。
そして表の後に、
としている。
ここで注意しておきたいのは、この表は何に基づいて作成されたものなのか特に明示されていない点だ。確かにレアジョブの調査によると、英語力と年収の間にはある程度の相関関係があることが知られている。
しかし、レアジョブの調査も完全に鵜呑みにすべきではないと筆者は考える。というのも、本調査は、レアジョブ英会話の有料会員が調査の対象であり、実際の日本人一般の平均年収と比較すると、レアジョブ会員らの生活水準は高いと考えられるためだ。令和2年の国税庁民間給与実態統計調査によると、20代前半の男女平均が260万、20代後半の男女平均が362万である。
これはレアジョブ調査対象の20代平均年収である516万よりも半分近く低いことが分かる。この差の原因は、勉強の環境の整った家庭で育つか否かの教育格差によるものだ。従って、レアジョブの調査結果に、英語力が高い人ほど年収が高くなるような傾向が見られたのは、(英語力に限らず)学力全般が高く、高学歴な人ほど年収が高いという傾向が表れたからではないかと筆者は考える。以上のことから、恐らくは社会人以上を対象とした、塩貝氏のプログラムを受講した所で、TOEICの点数が上がれば年収も上がるとは限らないだろう。
また、塩貝氏の示す表にはまだツッコミ所がある。以下再掲。
表によると、TOEIC400は「マークシートを適当に入れるだけ」で取れるとされている。が、TOEICの問題は4択、若しくは3択問題で、本当に適当に入れても200~350程度しか取れないと思われる。
更に気になるのはTOEIC400と500の「働ける会社」の項目が「なし」となっている点だ。日本は日本語だけで十分暮らしていける程度にはローカライズも万全の先進国だし、TOEIC500レベルなのが理由で働ける会社が「なし」などということはさすがにないだろう。世間知らずもいい所だ。
また特に気になるのは「TOEIC900以上は通訳者レベル」という部分だろう。いくらなんでもこれは通訳という仕事を軽く見過ぎだ。実際の現役同時通訳者なら、何らかの外的要因(体調不良など)が無い限りTOEICは満点近く取れなければ務まるものではない。
TOEICへの根拠なき信頼
では逆に、TOEICへの信頼が垣間見える記述を見ていく。
そんなことはないと思う。
TOEIC以外にももっとメジャーな試験あるやろ。TOEFLとかIELTSとか。
それは分からんだろう。「ソースは俺!」ということか。
それは本人のやる気次第だろう。TOEICがどうこうというものではない。
「外国語ゼロ」とは?
確かにTOEICは日常の英語に則しているかもしれないが、本プログラムで塩貝氏がサポートするのはTOEIC(L&R)であって英会話そのものではない。「TOEICの勉強」と「英語がペラペラになるか」というのは全く別のことだろうし、何を根拠にそんな主張をしているのかは不明である。まるでTOEICを魔法のアイテムであるかのように語っている。勿論TOEICが何らかのキャリアのきっかけになることは十分あり得ると思うが、それよりも仕事に直結する何らかの専門スキルを磨いてキャリアを積んだ方が良いような気もする。TOEICはあくまで選択肢の一つであって、必須ではない。TOEICという試験を神格化しすぎて視野が狭くなっているように感じられる。
謎のごり押しマーケティング
次に、塩貝氏がやや過激な言葉づかいをしている部分を見ていく。ここまでの内容も十分過激ではあったが、ここからはまた違った方向性の過激さが見られる。
「お金がなくても投資は出来ます。なぜなら、借りてくればいいだけだからです」というのは極論が過ぎるだろう。そして後の文では「借金だけはして欲しくない」などと心にも無い事を言っている。ここまで乱暴な物言いのQ&Aを、何故広告に含めてしまったのか理解に苦しむ。とはいえ筆者は大変爆笑させてもらった。
なんでそんな強気なん?聞いただけやん。
痛みを負うwwww 違うでしょ。特定商取引法的に返金ができないって話でしょ?
おわりに
以上、塩貝香織氏によるTOEIC100点アッププログラム『ECLOSE』の広告を見てきた。現在塩貝氏が生徒募集しているAI翻訳アカデミーは、翻訳業界以外の素人目からはそのビジネスの不可解さが分かりにくく、LINEのLステップを活用した巧妙なマーケティングであるのに対し、ECLOSEの広告には、やたらに過激な表現が随所に見られ、大変面白おかしい内容であった。冒頭でも述べた通り、本広告が作成されたのは恐らく会社を設立した2020年12月かそれ以降と思われ、比較的最近のことだ。ここ数年で塩貝氏に一体何があったのか。何故現在では丸くなってしまったのか、興味は尽きない。
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