見出し画像

ハイデガー技術論の訳語整理(独・英・日(関口/森訳))

ある技術哲学書を共訳しまして、その中のハイデガー技術論の解説章を訳すための前提作業として、「技術への問い」のドイツ語-英語-日本語の訳語の対応させたのですがかなり苦労しました。実際、誰がやっても最初大変だと思います。今後、似たような作業をする方のために、対応を一覧にしてここに公開しておきたいと思います。

特に英語のハイデガー解説を読むときに役立つと思います。

技術への問いの関口訳、森訳も対応させています。目次は関口訳にしています。引用は関口訳の初出です。

  1. 原文ドイツ語

  2. 英訳

  3. 和訳1(関口訳)

  4. 和訳2(森訳)

  5. 参考)ドイツ語のグーグル翻訳


〈こちらへと-前へと-もたらすこと〉

  1. Her-vor-bringen

  2. bringing-forth

  3. 〈こちらへと-前へと-もたらすこと〉

  4. こちらへと前にもたらして産み出すこと

  5. 参考)先に進める

「現前していないものから現前へとつねに移り行き進み行くものにとってのあらゆる誘発は、ポイエーシスであり、〈こちらへと-前へと-もたらすこと〔Her-vor-bringen(生み出すこと)〕〉である」

「技術への問い」(関口訳)P.19

開蔵

  1. Entbergen

  2. revealing

  3. 開蔵

  4. 顕現

  5. 参考)発見する

不伏蔵性

  1. Unverborgenheit

  2. unconcealment

  3. 不伏蔵性

  4. 隠れなき真相

  5. -

「〈こちらへと前へともたらすこと〉とは、伏蔵性〔Verborgenheit〕からこちらへと、不伏蔵性のうちへと、前へともたらすのである。〈こちらへと-前へと-もたらすこと〉がそれ自体の固有性を出来(しゅったい)させるのは、ただ伏蔵されたものが不伏蔵的なものに至る場合だけである。このように不伏蔵的なものに至ることは、われわれが開蔵〔Entbergen〕と名づけるものにもとづいており、またそれのうちで揺れ動いている。ギリシア人は、この開蔵のためにアレーテイアという語をもっている。」

「技術への問い」(関口訳)P.21

挑発

  1. Herausfordern

  2. challenging

  3. 挑発

  4. 挑発

  5. 参考)挑戦

現代技術のうちに存する開蔵は一種の挑発〔Herausfordern〕である。この挑発は、エネルギーを、つまりエネルギーそのものとして掘り出され貯蔵されうるようなものを引き渡せという要求を自然にせまる。

「技術への問い」(関口訳)P.26

用立て

  1. Be-stellen

  2. to order

  3. 用立て

  4. 徴用

  5. 参考)注文する

調達

  1. stellen

  2. imposition

  3. 調達

  4. かり立て

  5. 参考)尋ねる

いつのまにか、近年では畑地の耕作も、自然を調達する〔stellen〕これまでのとは別種の用立て〔Bestellen〕の吸引力に巻き込まれてしまった。この用立ては自然を挑発という意味で調達する。

「技術への問い」(関口訳)P.26

用象

  1. Bestand

  2. standing-reserve

  3. 用象

  4. 徴用物資

  5. 参考)在庫

いたるところで求められているのは、即座に使えるように手許にあること、しかもそれ自体さらなる用立てのたのために用立てられうるようにあることである。そのように用立てられたものにはそれに固有なあり方がある。われわれはそれを用象〔Bestand〕と名づけよう。この語はここでは、たんに「在庫」というより以上のことを、それよりいっそう本質的なことを言っている。

「技術への問い」(関口訳)P.30

集-立

  1. Ge-stell

  2. enframing

  3. 集-立

  4. 総かり立て体制

  5. 参考)フレーム

われわれはいま、それ自体を開蔵するものを用象として用立てるように人間を収集するあの挑発しつつ呼びかけ、要求するものをこう名づける集-立〔Gestell〕と。

「技術への問い」(関口訳)P.34

命運

  1. Geschick

  2. destining

  3. 命運

  4. 運命

  5. 参考)スキル


なにかをするように導くこと、なにかをする気にさせること、このことはドイツ語では、派遣することを意味する。われわれは、開蔵するようにとまず第一に人間を導くあの収集しつつの派遣を、命運〔Geschick〕と名づける。

「技術への問い」(関口訳)P.43

救うもの

  1. das Rettende

  2. saving power

  3. 救うもの

  4. 救いとなるもの

  5. 参考)節約

『しかし、危険のあるところ、救うものもまた育つ。』
このへルダーリンの言葉を慎重に熟慮しよう。「救う」とはなにを意味するのか?・・、まさに技術の 本質は、救うものの成長をそれ自体のうちに蔵しているにちがいない。

「技術への問い」(関口訳)P.51

叶えるもの

  1. das Gewährende

  2. grant

  3. 叶えるもの

  4. 存続を認めるもの

  5. 参考)付与

すなわち、ただ叶えられたもの〔das Gewährte〕のみが存続するのである。原初的に早くから存続しているものは、叶えるものである、と。

「技術への問い」(関口訳)P.58

以上

追記:存在と時間の方のいくつかも頻出なので取り急ぎ二つ追加しておきます。

Zuhandensein, ready-to-hand,「道具的存在」「用具存在」「手許存在」等
Vorhandensein, present-at-hand,「事物的存在」等


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?