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蝉っておいしいの? 猫と話すための4つの秘密

「猫って気ままで何を考えてるかわからないけど、それが魅力なんだよね~」

<なーんてよく言われてるけど、まったく失礼しちゃう。
猫こそちゃんと考えてますよ、ただちょっと気が変わりやすいだけで。
人間がニブすぎるんですよ、あたしたちのせいにしないでちょうだい>

これ、わたしがうちの猫に聞いた話なんですけどね。

ここだけの話、わたし、うちの猫が考えてることがわかるんです。時々ですけど。
え、妄想じゃないのかって? そうですね、実際のところがどうか証明する手段はありません。
でもそれは人間も同じことじゃないですか。
言葉を使って分かり合った気になっているけど、心からの言葉かなんてわかりっこないでしょう?

おっと、いささか口が過ぎましたかね。

ともあれ実際のところ、猫と話ができたらいいなあ、そんな風に思ってる人は多いでしょう。
もうちょっと人間の察しがよくなったら猫の気苦労も減ることでしょう。

お、これはwin-winですね。それじゃあ特別に、その秘訣をここでお伝えしましょうか。

本題に入る前に、猫と話すってそもそもどんなことか、わたしの初めての経験をお話しさせてください。

わたしはサバ子という鯖柄の毛がつややかなメス猫と暮らしています。
サバ子は人見知りのようでわたしにしか懐かず、来客があると物影に隠れてとんと出てきません。そして決まって、翌日くらいまで不機嫌は続くのです。なぜサバ子がそこまで神経をとがらせるのか、ニブい人間のわたしにはわかりませんでした。

ある日、独り言のようにふとサバ子に尋ねました。

「サバ子、なんでわたしの友達からいつも隠れちゃうの? みんなと仲良くしてほしいのになあ」

次の瞬間、頭のなかで風船がはじけたかのようにぶわっ、と言葉が広がりました。

<あたしたちの家>
<勝手>
<話して>

それは人間の会話と違って、時間とともに音声を紡ぐものではなく、感情を伴うキーワードが一気に塊として投げつけるもの。

サバ子の言いたいことは、どうやらこういうことでした。

<あたしたちの家なのに、どうしてあたしに何も言わないで勝手に人を入れるの? ちゃんと話してよ>

なるほど、わたしは知らないうちにとんでもなく失礼なことをしていたようでした。

国民的ホームドラマに置き換えて、わかりやすくしてみましょう。

いい気持ちで酔っぱらったマスオさんが、ノリスケくんを連れて帰ってきました。
やんややんやと盛り上がり、やれつまみをよこせ、ビールも足りない、と言ってきます。
お客を迎えるサザエさんは大変です。
大好きな夫の大切なお客様ですから、もちろんもてなしますが、いい気持ちはしません。
「準備があるんだから最初に言ってくれたらよかったのに……。 そもそも私の都合もきかないで」

そうです。
わたしはサバ子に何の説明もせず、サバ子にとっての他人を自宅に唐突に招き入れていたのです。
そりゃあ自宅でゆっくりくつろいでいたサバ子からしたら大変な失礼な話。
しばらくわたしに不信感を持って近寄らなくなるのも、当たり前です。

それに気づかされたわたしは「ごめんね。これからちゃんとサバ子に話すから、どうか付き合ってね」と、これまでの自分の無神経さを詫びました。

次の機会は、サバ子に許可をとりました。
「今日の〇時頃、友達の〇〇さんが来るよ。よろしくね」
目を見て、できるだけ体に触れた状態で丁寧に。

すると、なんと!
今まで家具の裏に隠れて一向に出てこなかったサバ子が、同じ部屋で過ごすようになり、時には足下に体を擦り付けてくれるまでになったのです。

本当のところがどうかなんてわからないけど、この出来事から始まったサバ子との新しい生活で、わたしは猫と話すためのコツを掴んでいきました。

そのポイントは、4つあります。

1.自分の気持ちを言葉にして伝える

 相手はどうせわからないからと決めつけては伝わりません。
 上手に話せなくていいので、真摯に話しかけましょう。
 相手が猫の場合、必ずしも簡単な言葉にする必要はないようです。
 言語ではなく、気持ちを受け取っているようです。

2.自分と相手を別の存在として認識する

 当たり前のようだけど、近い存在ほど所有物として扱いがち。
 〇〇してほしい、〇〇してくれるはずだ、という期待は捨てましょう。
 特に飼い主の場合「自分のことが好きなら」という前提がついて期待が膨れがちです。
 切り分けが難しいのですが、相手に押しつけなければ要望や希望を持つのはセーフです。

3.先入観、知識を捨てる

 ネットで「猫の気持ち」を検索したなら、それは忘れましょう。
 人間の言葉こそ使えなくても、猫はしぐさ、声色、表情、タイミングなど、その全てで表現しています。
 
「女心」「男性心理」の説明を読んで「そんなに単純じゃないんだけどな~」って思ったこと、あるでしょう?
 そう、コミュニケーションはそんなに単純化できることはありません。
 目の前のできごとが全てです。

4.ひらめきをそのままつかまえる

 1~3を力まず自然体でできるようになると、気持ちが澄んでフラットになります。その時にポッと頭にひらめくことがあったら、考える前につかまえましょう。

 自分が普段考えないことや、質問の答えになりそうなものなら、確度は特に高いです。自分流の解釈で意味づけをせず、できるだけそのままの状態で受け取りましょう。「考えるな、感じろ」が合言葉です。
 
もちろんこれに科学的なエビデンスはなく、かといってスピリチュアルや霊能力の類でもありません。ちょっとした与太話です。

でも、もし自分が一緒に暮らす猫の考えていることがわかったらと思うと、ちょっとわくわくしませんか?

暑さの盛りのこの時期、うちの猫は毎朝活きのいい蝉をくわえてゆうゆうと凱旋します。
そこでさっそく聞いてみました。

「蝉さー、くわえてる時にめっちゃ鳴いてるけどうるさくないの?」

<んー、ビリビリするから口の中が楽しいんだよねー>

わー! 響きを楽しむなんて、考えたことなかった!
っていうか、口の中で暴れまわるセミを想像しちゃったよー!

うん、知らない世界が広がるのって、いいですよね。
蝉を口の中に入れると楽しいことは知りたくなかったけど。

あ、蝉ね、別においしくないみたいですよ。

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