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連帯するか、個人でなんとかするか

放浪の末にオレゴン州ポートランドにたどり着き、住み始めて3年目に突入。映画AKIRAのように荒れるアメリカの情勢の中、日々生きる希望をポートランドでコツコツ集めている。住む街のいいところを見つけることは、わたしの人生のいいところを見つけること。1988年生まれ、鎌倉育ち。


↑上の記事に書いた、ジェニーのファームでのボランティアを通じて出会ったお友達との会話から考えさせられたことを、今日は書きたい。

ジェニーのファーム、ワパトアイランドファームで出会って、そこからときどき、予定を合わせて一緒にファームに通っているお友達がいます。ここではMさんと呼ぶ。

Mさんがファームの外でどんなことをしている人なのかは全然知らなかったので、数か月前のある日、畑仕事をしながら、Mさんの仕事について聞いてみた。

Mさんは、「スパでマッサージセラピストとして働いているよ。」と教えてくれた。

「今の仕事場はどう?セラピストの仕事は楽しい?」話を続けるために、さらに質問してみた。

Mさんは、こう答えた。「うん、セラピストの仕事は好きだけれど、仕事場のルールに許容できないことがあって、今、職場のみんなから匿名のアンケートを集めて、上司に訴えようとしているところ。今働いている職場、予約と予約の間に休憩を取るとこが禁止されてて、トイレにも行けないときがあるんだ」。

わたしはそれを聞いて、思わず、「え、その職場やばくない?それって虐待だよね?Mさんにはもっといい職場があるんじゃないかな?」と言った。そんな職場に残って、上司に抗議・交渉するよりも、Mさんがもっとマシな仕事場を探した方がよっぽどはやいんじゃないか。それに、そんなひどい職場に、「依存」しなくてもいいじゃないか、とも思った。

それに対して、Mさんはこう答えた。「うーん。でもね、同僚たちには、経済的な理由や、色々な事情で、今すぐ仕事を変えられる状況ではない人が多いんだよ。それを考えたときに、何もしないでやめるっていうのは、自分の生き方に反するんだ。ま、給料だけはいいとか、そういう事情もあるけどね。」

そのときは、そうなんだー、と言って会話が終わったけれど、なにか心の中に、言葉にならない違和感が残った。

そしてようやく最近、その違和感が自分の中で言葉になった。

それは、自分の価値観に対する違和感。

わたしは、「自分の属する集団・共同体のために何かする」よりも、「個人でなんとかする/個人で一抜けする」ことの方が、スマートだし、はやいし、他人や環境の変化を期待しない分、非依存的で、それが正解だと思っていた。クソみたいな環境や関係性を抜け出して、自分にふさわしい場所へたどりつくべきだ。そうわたしは思っていた。

でも、本当にそれが唯一の「正解」なんだろうか?

周りの人と連帯して、今いる場所、今の状況に変化を起こしたい。自分だけでなくて、みんながいる状況・環境を少しでもよくしたい。抜け出すのではなく、とどまりながら、ノーを言う。

なぜ、わたしはいつの間にか、このアプローチを「不正解」と定義するようになったのだろうか?

Mさんとわたしは、その後もファームに一緒に通い続けた。ある日、Mさんが、「実は最近、職場のルールが改善されて、みんなでちゃんと休憩が取れるようになった!」と教えてくれた。Mさんが、リーダーシップを取って連帯をつくり、勝ち取った変化なのだな、と思う。

そんなMさんとわたしは、最近、ファーム以外の場で偶然顔を合わせた。パレスチナのためのプロテストに行ったら、Mさんもそこにいたのだ。10月7日以降、1万人以上のパレスチナ人が亡くなり、その半分は子どもで、今彼らは自分たちが代々暮らしてきた土地を追い出されようとしている。国際的な立ち位置が低く、テロリスト集団のレッテルを貼られがちなパレスチナ人。

わたしが住んでいるアメリカは、ミサイルなどの武器を輸出することで、イスラエル軍のパレスチナに対する攻撃をサポートしている。今、アメリカ国内で、たくさんの人が住む場所を失いホームレスになったり、医療費、学費、生活費の高騰で苦しんでいるのに、なぜ、パレスチナ人の命を奪うことには大量の資金を投与できるのか?なぜ、わたしたちの命も、パレスチナ人の命も軽視するのか?

こういう問題は、個人で一抜けできない。アメリカがそういうクソな国なら、日本に引っ越してやろうとも本気で考えた。でも、わたしが日本に引っ越したところで、アメリカが人命を大量に奪っていること、この事実は変わるわけではない。

政府、社会、世界のあり方に、変わるべきところがあるのなら、個人個人が連帯して、微力を重ね合わせていくしかないんじゃないか?だって、政府、社会、世界、つまり、「自分よりも大きな共同体」なしに生きられる人なんてほとんどいないんじゃないか。そういう思いもあって、最近プロテストに出かけてみた。

連帯するか、個人でなんとかするか。どちらかではなく、両方のチョイスを、場合に合わせて選んでいくこと。ただ、今のわたしは、連帯とはなにか、どうしたら他者と連帯できるのか、に強い興味を持ち始めている。


面白い人と出会えるポートランドが好きだな、度
★★★★★(☆5つ中5つ)


はじめまして!アメリカに住んで約11年のNanaoです。ポートランドで日々コツコツと楽しみを見つけて生きてるよ。もしよかったら↑のリンクからInstagramも見てみてね。