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私と、お芝居との距離。

今までずっと、この感情と向き合うことが怖くて逃げてきたけど、大学を卒業して社会で生きていくこれからのためにも、しっかりと言葉で表しておきたいと思った。恥ずかしいけど、本音を。

久しぶりにWOWOWオリジナルドラマ『ダブル』を見た。演劇に魅了され、お芝居に没頭した二人。才能のある者とない者。色んな壁とぶつかりながらも板の上で舞い続ける二人。大好きなドラマだけど、当時見ていた感覚とは全く違う。今は、とても胸が苦しくなる。

「私だって本当は、お芝居がしたい。」

幼い頃から音楽や踊りといった表現が大好きだった私は、いつからか役者という夢を抱いていた。厳しい世界であると現実を見ていた私は、自分になんてできっこないと思っては逃げて、それでも夢見た瞬間は、いつか挑戦する日が来るだろうと未来の自分に押し付けて、夢から目を逸らした。そして、気づけば大学生になっていた。私は挑戦できなかったんじゃない、自分の意思で挑戦しなかった。

大学に入学すると同時に、顔全体にニキビが大量にできた。自分の顔が醜くて、人と接するのが怖くなって、とにかく泣いた。スクリーンに映る同世代の役者に嫉妬して、辛くて、とにかく泣いた。そして、これは夢に挑戦しなかった自分への罰だと思った。私はいつ選択を誤った?どこからやり直せば変われるの?挑戦できる瞬間は、何度もあった。何度も何度も。私の輝ける場所はどこにあるの。ノートに殴り書きで「逃げたくない」って何度も書いた。

大学2年、せめてやらない後悔はしたくないと思って演劇サークルに入団した。ずっとやりたかったお芝居ができる、それだけでとにかく幸せだった。「わたし今、お芝居してる!演じてる!」稽古、台本、腹式呼吸。演劇の空間で放たれる一つ一つの言葉が、全部幸せな響きに聞こえた。

「私、ずっと演劇やり続けたい」

でも、お芝居をする喜びと並行して"絶望"も感じていた。お芝居が楽しければ楽しいほど、絶望した気持ちが強くなった。主演をやらせてもらった舞台が、私にとって一番幸せな瞬間で、一番絶望した瞬間だった。

ただ純粋に、やりたいなら続ければいいのに。そんなことは分かってる。自分の心に素直になって、周りが見えなくなるくらい演劇に没頭してしまえば絶望なんて感じないのに。そんなことは分かってる。でも、お芝居に魅了されていくうちに楽しいだけじゃ気が済まなくなる。演技が上手くなりたい、こういう作品に出たい、こういう役を演じたい、アマじゃなくてプロになりたい、大きな舞台に立ちたい、役者になりたい。中途半端に終わることだけは絶対に嫌だから、進むならば絶対に叶えたくなるから。夢があるなら、無邪気に追えばいいのに。そんなことは分かってる。でも、次々と出てくる野望を叶えられる自信はなかった。というより、そんな気力と体力はなかった。

叶わない夢に一生懸命近づいたところで、どうしようもない。生きていけない。路頭に迷ったら、そのまま座り込んでしまう。立ち上がれない。そうなった時、絶望感に襲われた自分はきっとダメになる。それがすごく怖くて怖くてたまらなかった。

私は続けた先にある絶望に恐れを抱いて、今ある絶望と向き合うことを選んだ。

今の私は、映画に没頭している。新たに抱いた夢を追いかけるために、必死で食らいついてる。お芝居のことなんて考える暇も与えないくらい必死に向き合ってる。実際、とても楽しいし自分の輝ける場所を見つけたような気もしている。そして、今ある幸せをもっと幸せにするために生きたいと思う。それでもやっぱり時々思ってしまう、お芝居したいなって。

演劇サークルの人たちに誘われた演劇は忙しさを理由に行けないって言ってたけど、行きたくないが本音。自分の嫉妬心に気づきたくないから。こんな邪念まみれの自分と、純粋に演劇を楽しんでいる人たちを比較して苦しくなるのが嫌だから。本当に惨めだと思う。でも仕方ないの、この惨めな自分と向き合いながら生きていくのが私の宿命なんだ、きっと。

私はこれからもきっと、この絶望と生きていく。
でもいつか、希望になる日が来ると信じたい。今まだある邪念が消えて、消えなくてもどこかで折り合いがつくようになって、いつかは純粋にお芝居がしたいと思える日が来るんじゃないかって。演劇を楽しみたいと思える日が来るんじゃないかって。願いたい。と、また未来の自分に押し付けた願望を抱いてるけど、この押し付けは今の自分の生き甲斐にもなっている。そのときはまた、演劇を始めたい。趣味として。野望なんて全部捨てて、純粋に没頭したい。

この先のことなんて全く分からないけど、
昔も今もこの先も、多分ずっと変わらないことは
「お芝居」って、最高に魅力的ってこと。
私の人生、ずーっとお芝居に狂わされてる。
でも、それでもいい。やっぱり好きだもん。

またいつか。



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