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2023年のしんちゃんの映画:個人的所感

見る前になるべく他の感想は見ないようにしていたんですけど、それでもちらほらと「今年の映画は酷い」という感想が目に入ってきました。どうやら立場の弱い男性のことをかなり露悪的に書いているとかなんだとか。

実際視聴したところ、私は「これは大人たちから若者へのエールのつもりだったのではないか?」「その意図とは反して見た人の多くは傷口に塩を塗られたような気分になってしまったんだな」と思いました。

以下、ネタバレありで個人的に思ったこと


非理谷 充(ひりやみつる)の救済

名前からして非リア充、この時点で悪意を感じ取った人は多いかもしれない。彼は30歳派遣社員でいつも周囲から見下され、鬱屈した感情を抱えている。唯一の希望は推しのアイドルだったが、そのアイドルが結婚を理由に芸能界を引退、そこで闇の超能力パワーに覚醒してしまった……という粗筋。まあ我々ですね。子供のいる親や幸せな人は解らないけど、彼のことを「自分だ」と思って映画を観ていた人が多いんじゃないでしょうか。

個人的に「しんちゃんが彼の記憶に干渉(?)し、運命の分かれ道の場面において、充のことを助けた」という形で救済したのは良いと思いますし、凄く感動しました。
ただ最後、しんちゃんによって救済された彼に周囲が「説教」のようなことをかましたことに対し「上から目線で説教されている」と感じた人が多かったのかな、と思いました。

思想の強さ

個人的に引っ掛かったのが思想臭さでした。作中何度も「この先この国に未来はない」という出て来て、税金とか少子化とか疫病とか(ぶっちゃけあんま覚えて無いけど)具体例まで出てきちゃって、凄く「キエ~~~~!!!(じんましん)」ってなってしまいました。
正直解る、私もこの先真っ暗だと思っている!!でも直接言われると「はぁ~~?もしかして何か思想を植え付けようとしてます~~?」って作中で語られていることに対し、反骨精神が出てきてしまうんですよ……。勿論そうならない人も多いだろうし、私がひねくれているだけだと思うけど、私の他にもそういった感想を抱いている人がいたからこそ、作品そのものに引っ掛かりを覚えてしまった感想が多かったのかな、と思いました。

野原ひろし

「冴えないサラリーマンの代表だった野原ひろしが俺達に上から目線で説教してくるようになった」的な感想をふと目にしました。クレヨンしんちゃんが連載していた当時は、野原ひろしはうだつが上がらないサラリーマンでしたが、今の我々にとっては家族もいてローンがあるとは言えマイホームを持っている彼はエリートの枠です。
制作陣もその点を意識していたからこそ、ひろしと充を根本的に違う存在だとして書いたんだな、と言うのは伝わってきました。ただ野原ひろしは35歳で非理谷充は30歳、二人は5歳しか離れていないんですよ……君はまだ若い、ってあんたも結構若いぜ……。
その背景を踏まえると、年長者が若者にエールを送るとかじゃなくて、成功者が敗者に上から目線で説教をしていると捉えちゃうのも無理ありません。素人意見ですが充の年齢を20中盤くらいまで下げるか、なんならもう根本的にひろしの年齢設定を上げた方が良かったのかな、と思いました。

オトナ帝国

今回の映画は令和版オトナ帝国を目指したんだろうな、だけど残念ながらオトナ帝国には及ばなかったなあ、と個人的に思いました。

一つ思ったのは、今回の映画、何でもかんでも説明しすぎだな、ということです。
オトナ帝国の敵組織であるイエスタデイワンモアのケンとチャコは「昭和の世界を取り戻す」「過去への回帰」を目標に動いていますが、具体的にどんな理由で、何が切っ掛けで過去に戻ろうとしているかは、語られていません。未来に対する不安、過去に戻りたい、なんなら全て終わらせてしまいたい、という感情はどんな人、時代においても普遍的な感情で、だからこそ敢えて語らなくても良いのだと私は思います。今回も同じように未来が無いことを具体例を挙げて説明するのではなく、視聴者に委ねる書き方をして欲しかったです。じゃないと思想を押し付けられている気分になっちまう……。

また、オトナ帝国でもあった「ひろしの足の臭い」、確かにあれは今まで大切な家族の為に頑張って来たからこそ発生した臭いですが、今回それを直接台詞で説明されてしまったのが残念でした。台詞が無くても表現出来ていたことを、わざわざ口にするのは風流に欠けるんだぜ……。

あとこれは常々思っているけれど、しんちゃんの映画は時折「無理に感動系に持って行こうとしてる……」と思うことがあって、なんかもう一回ヤキニクロード的なノリの作品を挟んでリセットして欲しいなあ、と思いました。私がヤキニクロード好きなだけかもしれんが。ひろしもみさえも無理に名言言わんで良いよ!!良い台詞だけど!!

総じて思ったこと

私としては面白かったし、観て良かったな、と思ったのですが、それはそれとして作中の描写に引っ掛かる人の気持ちも凄くわかりました。

前半の「この国に未来はない~!」的なセリフがずーっと続くところとかはしんどかったけど、3Dを思う存分生かした数々のアクションシーンや、充をしんちゃんが救うところとかは凄く面白かったし感動しました。度々販促ムービーで言われていた「オラの仲間を泣かせるな!」の使いどころはFF9の「誰かを助けるのに~」並みにグッときました。あと映画で結構空気になりやすいひまわりの出番がちゃんと用意されていたのも嬉しかったです。

来年の映画はどうやら恐竜モノらしいのですが……まだしんちゃんの映画でやってなかったジャンルあった!!って普通に喜んじゃいました。毎年我々を驚かせてくれる劇場版クレヨンしんちゃんが、来年はどんなものを引っ提げてくるのか、今から楽しみです。

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