瞼の向こう側の世界

 眠っている状態と起きている状態だったら、眠っている状態の方が好きだ。時間の流れはあっという間だし、無駄なことを考えて落ち込んだり自分の情けなさに消えたくなったりしなくて済む。なのに眠りにつくことは難しくて、眠りにつくまでに毎日何時間もの時間がかかる。やっと眠ったかと思えばすぐに目覚ましに起こされる。
 今日も眠れなくて文を書いているけれど、もう朝になってしまう。眠っている状態は好きなはずなのに、眠らなきゃいけないという義務感に襲われる。少し明るくなった窓は、僕に時間切れですと言わんばかりに朝日の光を取り込んでいる。
 僕はこういう時間が嫌いではない。生産性のないことにぼんやりと思考を巡らせ、その曖昧な思考を文字に起こしている。僕が生きていることを実感する、とても貴重な時間。この時間がずっと続けばいいのにと願っている僕は、眠っている状態よりも起きている状態の方が好きなのかもしれない。

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