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ジブリのマーケティング

昨夜放送されたスタジオジブリの最新作

【アーヤと魔女】

ジブリ初のフル3DCG作品とあって、賛否両論あるようですが、私は良かったと思いました。

アーヤは赤ん坊の頃にこどもの家という【孤児院】に預けられ(というよりも、ほぼ捨てられ)、大きくなってからは魔女に引き取られて【魔女の家】で魔女の手伝い(というよりも、ほぼ手下)として働くことになります。

捉え方によっては、アーヤが置かれた環境は可哀想な境遇ように捉えることも出来ますが、アーヤは【こどもの家】でも【魔女の家】でも自由気儘に生きています。

ここに作品のテーマである『わたしはダレの言いなりにもならない』が描かれており、且つ、それを押売のように押しつけるのではなく、アーヤという少女の生き方を通して自然と伝える作品に仕上がっているところがジブリらしくて良かったと思いました。

コロナ禍の今、思うように生きられない世界になって、夢や希望を持てずにいる人たちも多くいることと思いますが、この作品が発する『どのように厳しい環境に置かれても、どれだけ選択肢を持てるかで自分の人生くらいは変えられるよ』というメッセージこそが、本作品のマーケティングだと思います。

本作の放送を前に幾つかの関連番組も放送されました。その中で宮崎駿監督は『皆が浮かれているとか、まだ気がついていないときに、終末が近いぞとかいうときはファンタジーになるんですよ。「風の谷のナウシカ」ですよ』と語っていました。

すなわち、「風の谷のナウシカ」は偶然のヒットではなく、ヒットすると分かっていて映画化した作品なのです。

ジブリ作品は、『頑張れ!』と伝えたい人に『頑張れ!』とダイレクトに伝えることはしません。その作品を観た人に、なんとなく明日から気持ちを切り替えて頑張ろうかなと思わせること、尚且つ、それが今必要だというタイミングでそれを提供することこそが、スタジオジブリのマーケティングです。

だからこそ、東日本大震災で計画停電になった状況化でも、ジブリは作品づくりを止めませんでした。届けるべきメッセージを、届けるべきタイミングで届けなければ、ジブリのマーケティングは成立しないからです。

【アーヤと魔女】を企画した頃は、100年に一度のウイルスでこんなにも世界が混沌としたものになるとは想像もしていなかったでしょうが、まるで導かれるかのようにして、このタイミングでこの作品を届けることになったことにも、ジブリが背負う宿命のようなものを感じずにはいられません。

ちなみに、宮崎駿監督が現在製作中の新作は冒険活劇だそうです。ジブリの冒険活劇といえば、風の谷のナウシカや天空の城ラピュタなど長年に渡って愛される名作揃いです。

今度こそ最後に成るであろう宮崎駿監督の作品が、こんな時代にジブリ作品が、私達にどのようなメッセージを伝えてくれるのか、【アーヤと魔女】への最大級の賛辞と、新作への大いなる期待を込めて、今はそのときを楽しみに待ちたいと思います。

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