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勝手に1日1推し 77日目 「メタモルフォーゼの縁側」

「メタモルフォーゼの縁側」(1~5)鶴谷香央理     漫画

「好き」って凄い。「好き」な気持ちって嬉しくなったり楽しくなったり、希望とか未来とかを明るく照らしてくれる。ただ好きなだけなのに、どうしてこんなにも元気になれるんだろう。「好き」のための明日なら早く来てほしいし、次の日もそのまた次の日だって早く訪れて欲しいって思う。

嫌なことや苦しいことがあったり、空っぽだったりぺしゃんこだったりしても、「好き」さえあれば少しはやれる。こなせる。やり過ごせる。頑張れなくても、やれる。こなせる。やり過ごせる、気がする・・・。だから、いくつになっても新たな「好き」を追い求めたいし、探し求めたいなあと思います。誰かのためじゃなくて、自分のための「好き」がいつまでもあってほしい。人でも物でも何でもいいから「好き」な気持ちをドキドキをワクワクをその喜びを持ち続けていたいなあと改めて思いました。

当然、その「好き」を共有出来ることの喜びは、この上なし!!この気持ちの共有は、計り知れない充実感と多幸感を生み出すものです!年齢だって性別だって人種だって環境だって価値観(ある意味同じ?)だって、何だったら時空だって飛び越えることが出来ちゃう(?)のが「好き」を共有するということです!!

「メタモルフォーゼの縁側」。ズッキュン、ど真ん中。涙。

75歳の市野井雪さんと17歳の佐山うららさんはお友達。年齢差なんと58歳。1冊のBL本を通して知り合いました。「好き」を通して芽生えた友情は、いつしか生き方や考え方をも影響し合うかけがえのない存在となっていきます。

1巻が起、2~3巻が承、4巻が転で5巻が結。1~4巻は5巻のために、5巻は1~4巻のために、ONE FOR ALL ALL FOR ONEの精神が流れる一大長編でございました!!全てを読み切った時に訪れるカタルシスは言葉になりません。本当に素晴らしくて言葉になりません。絶対読んで。ほんと読んで。お願いだから読んで。全人類読んで。涙、、、、納得のタイトル回収も秀逸です。

人って思ってもみないふうに なるものだからね。

市野井さんのこの言葉が全てを語っています。市野井さんのように考えられるようになるなんて、年齢を重ねるのも悪くないな、なんて思ったり。この考えは作品の中核として最後までブレずに存在し続けます。2人の偶然の出会いは、必然的な変化を生み出し、思ってもみないふうなメタモルフォーゼを起こすのです。主人公以外の登場人物たちにもまた、同じように作用しています。つまるところ、出会い、タイミング、縁だよなあ、って。その運命みたいなもののぬくもりがそこかしこに感じられる優しさ溢れる作品です。

どうしてこんなに どこまでも 優しいものを作ったの

終盤のうららさんのモノローグですが、そのまま本作に対する私の思いでございます・・・

そして、何より市野井さんは、私でした。随所に私でした。いや、まんま私なのでは?!1巻の冒頭から私でした。

知らない間に 時間って経ってるのよね

これね!特に最近コロナだし、知らない間にお気に入りのお店が閉店しちゃったりしてない?久しぶりに行くと街が変わっている・・・

読むのもったいないな 奥付から見たりして

私もやる~、奥付から読んじゃう~。読むのもったいない、ってなって、中々ページが捲れないの。分かりみが半端ないです。

私初めて読んだんだけど なんて言ったらいいのかしら・・・応援したくなっちゃうのよ
表紙を見たとたん 親戚の子に会ったみたいな気分になっちゃって 嬉しくて 買っちゃったの

シンパシー!!私のBL感・・・いくつ挙げてもキリがないほどの市野井さんとのシンクロ率!

てか、とにかく、さすが年の功。あるがまま、思いのままの言動がいいんだよなぁ。日々の暮らしを丁寧に過ごす市野井さんがひたすら魅力的です。世俗を離れ、自分に沿う形で生活スタイルを維持している感じ。市野井さんのこの天真爛漫な大らかさがとにかく心地よくて、きっとこういう姿がうららさんの心と頭を柔らかく包み込んでくれたのだなあって思えてなりません。そんな市野井さんはうららさんの若さに感化され、新しい1歩踏み出すこととなる訳で、とてもいい関係性デスネ!!逆に年齢や立場が近しい人ほど本音が言えないみたいな人の不思議な部分も上手に描かれていて、とにかく心に刺さりまくります。

ちなみに前述の奥付についてヒトコト。なるほど凝っていて可愛い!是非見てみましょう。加えて口絵も可愛いんだよお。一筆箋とかにしてグッズして頂きたい!本気で買う。

さて、話を本編に戻しまして、市野井さんとは対照的な女子高生のうららさん。日常の息苦しさや未来への不安、自身と他者との関係など、思春期ならではの困難さを持て余しておりました。そこへ訪れたのが市野井さんとの出会い。様々な思いを抱える中で、

いろんなこと べつにいつでもやっていいのかもって (中略) 何歳かになったら「やってもいいよ」ってなる時が来るのかと 思ってたけど 今やっても いいんだなーと

これに気付けるのって気付かせてもらえるのって、大きいです。自覚している自分と自覚していなかった自分、なりたい自分となれない自分、どれもありのまま受け入れ、肯定し、見守ってくれる存在のありがたさよ。ビバ、「好き」友!

私も あんな風に 好きなものの話で 盛り上がったりしたい

と思って、もんもんと高校生活を過ごしていたうららさんでしたが、思ってもみないふうにコレを体験することになるのです。良かったねえ。

ラスト、うららさんが過ごした完ぺきな日。彼女が「完ぺきな日」と口にした奇跡の1日。他人からしたら何てことない1日だったとしても、自分にとっては最高の1日だっていうことの権化です。納得出来過ぎて感動した!うららさーーん!!!ホント、涙でページが滲みましたよ。泣いちゃうよ。鶴谷先生、天才!!

私はさ、朝ご飯に作った目玉焼きが好みの半熟さで、久しぶりに好きを語らえる友と会ってとことんおしゃべりして、それが大好きな公園でのピクニックだったりして、お天気も良くて最高で、見逃した気になっていた映画がまだ上映していることを教えもらって、帰りに見に行ったら思った通り好みの映画だったりして、それでお家に帰ったら、笑顔で誰かが迎えてくれて、今日の話をしたりして、更にはお風呂が沸いている1日だったら完璧だなあ。でももしかしたら、思ってもみないふうなことで彩られた日こそ、完ぺきな日って思ったりするんだろうな。人の数だけ完ぺきな日が存在するのって素敵です。何億通りの完ぺきな日。うっとり。

余談ですが、作中2人の交流のきっかけとなった1冊「君のことだけ見ていたい」、読みたいなあ。本筋と時折交差する展開も見どころなんです!最高だなあ。一見、主人公2人とは、交わらなそうな「君見て」(勝手に省略するな!)の作者コメダ優先生とのエピソードとか、幼馴染の紡くん&絵莉ちゃんのエピソードとか、思ってもみないふうな出会いや出来事が今の自分から脱却する手助けになるんだから、人との繋がりって捨てたもんじゃない!そこのところも見逃せませんよ!

何でこんなに楽しいんだろうね

で、結局、これが全て。そういう今日や明日を過ごしたいなあ。

今日には今日のため、明日には明日のため、あかりが灯る

のだから。

ということで、推します。

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