勝手に1日1推し 42日目 「囀る鳥は羽ばたかない」

「囀る鳥は羽ばたかない」ヨネダコウ     漫画

面白過ぎて、度肝を抜かれました。続きが気になって気になって、読むのが止まりません。2人がどうなるのか気になって気になって、読むのが止まりませんぅぅ。でした。BL作品ってことになっているけれど、ハードボイルド作品であるとも言えそうです。ストーリーを支える屋台骨が2本あるので、本当に読み応えがあります。そして、マスキュリズムの頂点に君臨するであろうヤクザ界で展開することにも注目したいです。

ヤクザの若頭、矢代とその付き人、百目鬼(どうめき)のお話です。矢代のもとに付き人としてやってきた百目鬼。ドMで変態、淫乱と噂の色人矢代に、百目鬼の真っすぐな好意が作用し始め、矢代や彼らを取り巻く人々が変わっていきます。それぞれの過去も明かされます。こちらがBL編。そして、同時に描かれているのがヤクザ編で、内部の跡目争いや他組との抗争、刑事との関係がすっごく面白い!とにかくあっちもこっちもそっちもハラハラドキドキ。息つく暇なし!登場人物が多いも、それぞれのキャラに背景があり血が通っており、物語があります。深く掘り下げられています。裏切り、騙し合い、ドロドロの内部抗争のクライマックスは手に汗握るものがありました。すごい!男の嫉妬、怖っ。とても読み応えがありますので、こちらは実際読んでお楽しみいただきたいと思います。三角さん、かっけー!

さて、BL編で、矢代がドMの変態、いつでもどこでも誰とでもスル淫乱男という設定なのですが、なぜか?というところが肝かと思われます。それは、正に「ジルベール現象」によるもの。(41日目の推し「風と木の詩」)子供時代に性的虐待を受け、尊厳を踏みにじられ、洗脳され続けた結果、歪んだ性と感覚を植え付けられてしまっているのです。男たちから受ける虐待めいた暴力的なセックスは、そのうち彼の存在意義となっていったのでしょう。本人は気づかないふりを続けるのですが、百目鬼との出会いでセックスの意味が変わってきます。セックスを愛の行為と認めると崩れ去るのは自己。嗚呼、無常。お可哀そうな矢代。無感情に徹して生きることが彼を彼たらしめてきただけに、突然の感情に恐怖します。矢代はひたすら何者にもなりたくないのです。哀しい。(涙)

作中、変態的な行為を進んでしてるし、狂った考えを持っていますけれども、実は誰よりも一途で健気、可愛らしい人なんですよ、矢代は。読み進めていくと彼の本当の姿が見えてきます。いかに「ジルベール現象」が彼に強く影響を及ぼしているか、それがただただ辛いです。百目鬼は彼の真の姿を見抜きます。外見だけじゃない全てを綺麗だと見るのです。だてに名前が百の目がある鬼じゃないよね~、強いし、素直だし、真面目だし、最高かよ!細やかな気配りやそれとない優しさ、頭の良さも矢代の魅力で、百目鬼以外にも彼を慕う上司と部下(?)はたくさんいます。ついていきます、頭!って私もなりました。逆にそれを羨む輩がたくさんいるのですよ、ちっ。

さらに、男たちを性的に惹きつけてやまない矢代ですが、美しいという見た目がだけでなく、全てを放棄した、ある種無防備な、いつ消えてもおかしくないような儚さを纏っていることが最大の要因のように感じます。ほっとけない、的な。何とも言えない雰囲気を醸してるんですよね。うっとり。

6巻で一旦終結して、また7巻から新たなステージに入りました。矢代と百目鬼はどうなる?矢代は組に戻る?はぁ、また最初から読みたくなったじゃないの、どうしてくれるの?

好き過ぎて、ついつい長々書いてしまいました。まだ言い足りないくらい、すこぶるオススメです!まだ連載中なのもいいです。たくさんの方に是非是非お読みいただきたいです。エンターテイメントとして、最高ですよ。

ヨネダコウ先生、今後も楽しみにしております!

ということで、推します。

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