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勝手に1日1推し 72日目 「仁藤と田塚の日常」

「仁藤と田塚の日常」(1~2)砂糖と塩    漫画

つれづれなるままに 日暮し 硯に向かひて 心にうつりゆく よしなしごとを そこはかとなく 書きつくれば あやしうこそものぐるほしけれ  徒然草

古文やら和歌って何やら艶っぽいですよね。和歌や短歌は実際、恋愛を詠んだものも多い訳で、百人一首なんて実に43首が恋愛に纏わる歌なんですって。現代の恋愛の場面で扱われると、本当にドキっとすると言うか何と言うか、ひどくなまめかしさを感じてしまって、扱っている作品を大好きになってしまう魔法にかけられてしまうのであります。大好物です。

「あやしうこそものぐるほしけれ」に「異常なほど狂おしい気持ちになるものだ」の意味が隠されているんですよ。どっきりしちゃうでしょ。てか、こちらは随筆だけれど、恋する気持ちに当てはめたとしたら、どっきりしちゃうでしょ。秘めたる思いと言うか、切実なる思いと言うか、一途な思いと言うか、そういう内なる滾る思いがビシバシ伝わってくるんだもんなあ。

さて、この一文が冒頭シーンを飾る本作を気に入らないという理由があるはずもなく、好き過ぎました。ロックオン。こちらも「高良くんと天城くん」(はなげのまい)同様、私がBLジャンルにハマるきっかけとなった記念碑的作品です。LINE漫画で全話読めますので是非。無料だよお、幸せだなあ、日本に生まれて良かったね。この度2巻が発刊されましたが、いやあ、可愛いんだよなあ。

仁藤と田塚は幼馴染みで同級生。
一見クールな田塚だけど、仁藤にとっては優しくて頼りになる親友でもある。
進路が違っても仲良くしていける、そう思っていたところに
田塚から好きだと告白されて……。
田塚のことは好き、でもこれは友達としての「好き」だから――。 Amazon

内容は王道の幼馴染BLです。中学生~大学生の2人が紆余曲折あって付き合い始めたところで、まだまだ連載中でございます。現2巻では、切なかったり歯がゆかったりしつつも、決して裏切られない展開で安心して読めるところが魅力です。仁藤と田塚の日常がゆるゆる続いていくんですけど、決して退屈にならないのが不思議です。いい意味で王道路線を行く2人に寄り添い易いからなのかもしれません。いっくん(仁藤)がてんぱった時にお目目がぐるぐるしちゃうとか、りっちゃん(田塚)が余裕のない時こそかっこつけちゃうとか、諸々、私たちが日常的に遭遇する場面や味わう感情がたくさん散りばめられております。恋への共感もまた「あやしうこそものぐるほしけれ」ですね!絶妙な切り返しで終了するエピソードとか、絶妙なギャグセンスとかも好きです。「魅惑のエビフライ」読みたいし、「ワイルドはんばーぐ」見たい。絵とキャラ、物語がバチコーンと合っていて、先生のセンスが光ります。ゲイの男の子とゲイじゃない男の子との恋愛、脈々と受け継がれるお互いのことを想い過ぎるBLが今後、砂糖と塩先生の手腕でどんな展開を魅せてくれるのか、楽しみで仕方ありません!3巻も楽しみだなあ。スキを語りまくる赤瀬くんと内気な谷口くんも気になっております。

ちなみに、1・2巻のあとがき、サイコーでした!3巻のドットは何色かなあ。ブルーかグリーン辺りかしら?装丁がとにかくキュートで作品のイメージにピッタリ!ローマ字のロゴも可愛いらしいし、パステルカラーもいい。デザイナーさん、天才じゃない?本作に限ったことではなくて、どの作品でもその作品の世界観をしっかり表現したデザインが施されているので、完璧過ぎて毎度唸ります。スマホではなく大きな紙面で読める幸せと共に装丁にもいつも心奪われるてしまうのです。背表紙もラブい。本は良き~。まだまだ電子には負けんばい!

よろづにいみじくとも 色好まざらん男は いとさうざうしく 玉の巵(さかづき)の底なき心地ぞすべき  徒然草

「どんなに優れていても、恋を知らない男というのは非常に物足りない。立派な盃の底が抜けたように、見かけ倒しで男としての魅力に欠けている」ものです。逆もしかり。恋するキラメキにときめこう!仁藤と田塚のように恋をしよう!

ということで、推します。


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