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勝手に1日1推し 73日目 「かげきしょうじょ!!」

「かげきしょうじょ!!」(1~11)斉木久美子     漫画

さらさちゃん、かわうぃーですね!「かげきしょうじょ!!」に本格的に向き合ったのはアニメでした。本屋さんにて、タイトルのフォントやカバーがとても可愛かったので気になってはおりましたが、読むまでには至らずでございました。が、アニメ化されたとあって、鼻息荒く視聴しました。はあー、乙女の青春。可愛くてずっと応援しちゃってました!夢に向かうってこうもキラキラ輝いているんですね。というのが、アニメの感想。それで、原作も読まねば!と、はたまた鼻息荒く購読しました。何度でも言いますが、オトナっていいです。もう夢を追うことは叶わずとも夢を買うことができるから素敵です。オトナ買い、贅沢ここに極まれり。

さて、アニメとは似て非なり、原作を読んだ感想です。アニメは分かりやすく纏めていたんだなぁと。テンポ良く進めるために省いたり変更したり、色々整えていたんだなぁと。もちろん、アニメも素晴らしかったです!声優さんたちの演技もエンディングのベルばら感も最高でした!

「渡辺さらさ、オスカル様になります!」大正時代に創設され、未婚の女性だけで構成された『紅華歌劇団』。その音楽学校に入学した少女たちの青春が、幕を開ける──! 予科生の授業が講義ばかりで辟易としているさらさ達は、実習をしたいと講師に申し出て…?    Amazon

が、原作を読むと印象が少し変わります。少女たちの夢を追う青春ストーリーというだけでなく、才能と言う名の不条理に立ち向かう様、芸事に対する姿勢、極めること、続けることの難しさ、喜びと挫折、更にはジェンダー問題などなど、ページを追うごとに少女たちと共に青くなったり赤くなったり、想像以上に深く濃い部分もありました。

そして、構成が斬新!これ、アニメと全然違っていたので、驚きました!起承転結で構成されるところが起承転、だったり結承転だったり結起承転結だったり。気分が高まって盛り上がってきたところで、決定的と思われるシーンや出来事がすんなり訪れないところなんて新鮮で面白かったです!ストーリー的にはそれほど新しいという訳ではないように思いますが、時制や場面、視点の移り変わり、見せ方でこんなにもワクワクドキドキさせられるんだなあと感心しました。シンプルな展開もシンプルじゃなくなっています。

もちろん、キャラクターがめちゃくちゃ魅力的なことも言い置かねば!です。ヒロインのさらさちゃん、愛ちゃんは言わずもがな、それ以外のトップを目指す紅華乙女たちも、歩んできた道や経験、信念に裏打ちされた個性に惹きつけられます。番外編などでもしっかり掘り下げられており、物語を豊かに彩っています。それぞれが持つオリジナリティが光ります。さすが紅華音楽学校に合格した面々でありんす!!タイトル通り、かげきしょうじょ、全員が主役級です。頑張る紅華乙女と年相応の素の乙女の対比もいい!音楽学校の先生方の背景もいい!!アニメでは描かれなかった国広先生のエピソードは泣けます。

そして、少女たちの奮闘と共に印象的だったのが、伝統芸能におけるジェンダーについてです。女人禁制。古っ!!でもこれも21世紀の現実。落語では「落語心中」(雲田はるこ)、能では「俺の家の話」(宮藤官九郎)、などなど記憶に新しいこれらの作品でも伝統芸能におけるジェンダー問題は扱われておりましたが、あくまでサイドストーリーだったように思います。本作は真っ向から性別の為に歌舞伎役者になれないと知った女の子が、その問題の解決策として、女性だけの社会へ目を向けて、そこで更に男役を目指すところに滾るものを感じます!熱い!!梨園の女性たち、、、涙。暁也くんも複雑だけどねえ。

ってそこまで、斉木先生がこだわられているかは分かりませんし、作品内で大きな比重を置かれているかと言えばそうではないかもしれませんが、そういった社会的な部分を強烈には主張しないからこそ余計に意味深く、興味深い作品だなあと思っております。

芸事に対する名言も髄所に見られ、ふむふむと頷くばかりです。美里屋宗家、15代目白川歌鷗師匠の圧巻の台詞、

芝居に遊びはあっても 遊びの芝居なんてねぇんだよ いつだって本気さ

にはシビレました!粋ですね~。真の意味での芸能とはそういうものなのでしょうね。もう一つ、安道先生のサルエリ(努力型)とモーツァルト(天才肌)のたとえのように、才能のある人であっても努力の上で成り立っているという事実。こちらも芸事を極めるに辺り、トップを目指すに辺り絶対に忘れてはならないことなのでしょう。そう言えば「のだめカンタービレ」でも千秋先輩が指揮する曲を研究し続けるシーンがあったけれど、まったく同じことが言えるのかもしれません。その他、スポーツでも何でも輝きの裏に膨大な努力ありなのです!

紅華歌劇団に関してもやはり、心の機微や想像力を働かせ、悩み、研究し、勉強し、たくさんの努力を積み重ねることがトップ様への道へと続いている。そして、そのヒントや手助けになるのが他者との関わりだったりする訳で、自分とは異なる感性を持つ他者からのアドバイスは飛躍の糧となり得るのです。そこのところが今後の展開の見どころかなあと思っています。舞台はチームワーク、かげきしょうじょたちの成長が楽しみでなりません。

全は個にして 個は全になり 個は孤にあらず

ですよ!!

前述の通り、番外編として各キャラが取り上げられているのですが、私は唯一の意地悪(?)キャラ、聖先輩に心奪われてしまいました!思春期の渦の中、流されないよう、のみこまれないよう、同調圧力に屈せず自律する様がかっこいい!

私の「好き」は嘘も本当もないから 男でも 女でも 好きな人には好きしかないから!!

と堂々と言い放つ凛とした姿は、紅華での振る舞い同様、嘘のない芯の強さと気高さを感じ、彼女の強烈な個性に惹かれずにおれませんでした。

とにかく夢を叶えるには、相当のパワーと情熱、根気が必要ですよね。そんな夢を追う姿は、あらゆる人々にとてつもない希望を与えるものです。読んでいると凄く元気をもらえます!ありがとう、紅華乙女たち!そして思わずにはいられない、言わずにはいられない、宝塚を見たいなあぁ・・・と。

ちなみに、この作品を知る前より柔軟剤はさらさを使っておりました。ふんわりふわふわで優しい香りがまるきりさらさちゃんです。

ということで、推します。


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