勝手に1日1推し 49日目 「葬送のフリーレン」

「葬送のフリーレン」原作:山田鐘人 作画:アベツカサ     漫画

マンガ大賞の大賞に選出ということで、ずっと読んでみたかったのですが、やっとのことで読むことができました!年を取ると涙もろくなりますから、イヤです。なんか読みながら結構泣いちゃってました。私だけ?

魔王を倒した勇者たちのその後を描いた作品です。魔王討伐パーティーの一員、エルフの魔法使いフリーレンは人間よりもはるかに長寿なため、10年もの長きに渡るの討伐の旅も別段特別に感じず、快挙を成し遂げた討伐後も我関せず、1人魔法収集の旅に出る。別れ際、パーティー一同と交わした半世紀流星を見る約束のため、再びその地に戻ったのは50年後。みんな年を取り、勇者ヒンメルは亡くなります。エルフにとっての10年や50年は人間にとってのそれとは異なることを理解し、なぜヒンメルについて何も知ろうとしなかったのかを悔やむフリーレン。人間を知りたいと切望する。ヒンメルともう1度会うため、死者との対話が叶うという魂の眠る地を目指し再び旅を始める。

というのがざっとしたあらすじです。

葬送=死者と最後の別れをし、火葬場、墓地に送り出すこと。またそのための儀式。 ウキペディア

だそうです。まだ物語は続いていますが、私はフリーレンが自分自身の心を葬送するための物語だと感じました。

エルフ、ドワーフ、魔王、戦士などなど登場人物はもちろん、魔法使いの修行、魔族との闘いなど内容も絶対的なファンタジーなのですが、現実の世界を思わずにはいられませんでした。災害や不慮の事故、最近ではこのコロナ、大切な人がある日パッといなくなってしまうという喪失感と後悔、記憶や思い出と今が繋がっているという感覚。現実味があり過ぎます。本作には、こんなメタ的要素、リアルとファンタジーが表裏一体な感じを受けました。なので、冒険ファンタジーでありながら、現実離れした感が少なく、全体的に落ち着いた雰囲気が流れているのかなあと思います。戦いのシーンも、戦い自体より、戦う彼らが誰とどんな時間を過ごしてきたかに重きが置かれています。喪失を長い時間の流れの中で再生していく、そんな力強さが素敵です。とっても不思議な魅力のある作品でした。

フリーレンは大切な人の突然の死をきっかけに、自分がいかに50年を蔑ろにしてきたのかに気づき考えます。ヒンメルはどう思い、どう感じたか。あの時ヒンメルはこうだった、この時ヒンメルはああだった、という具合に、かつての旅路を踏襲していくのですが、ほんとに、涙なくして読めないんだよなあ。フリーレンが当時見えなかったこと、考えなかったことが分かった時、感情が爆発します(私の)。当時の経験が今を生きる糧になっているのが分かった時、感情が爆発します(私の)。今更だと、過去を取り返しのつかないものと諦めていた僧侶ザインを自分と重ね合わせ、

それがどうした 「私は今の話をしている」

と明言するヒンメリとフリーレンがリンクするシーンでは、ビックバンが起きました(私の)!過去が最高の未来(現在)をもたらすのって、人生においてとびきりのご褒美です。フリーレンの心に、そして人々の心に生き続けるヒンメル。本当の勇者だよぅ。

50年前と今の旅が入れ子になって物語が進み、ヒンメルから受けた言動を今度はフリーレンが弟子たちに施します。その弟子たちそれぞれの物語も並行して描かれており、こちらも今後どう展開するのか楽しみでなりません。メンバーもまた増えるよね?きっと。

冒険譚としてももちろん面白いです!勇者一行が現パーティーも昔のパーティーも完全無欠なヒーローじゃない設定が、今時だなって思います。好き。物臭坊主~。ほっこり系の笑いも良き。ヒンメルが褒めてくれたへんてこな魔法を集め続けてるフリーレン、かわいいなあ。それが役に立つのもいいなあ。そして、私は切実に「失くした装飾品を探す魔法」が羨ましい。ピアスって片方失くなる。

単行本の最後、次巻の予告がありますが、「魔法使いの物語は”〇〇”へと進む。」の〇〇が凄くイイ!1=戦火、2=祈り、3=追憶、4=試験。次巻も本編と共に巻末予告にも注目しております。

ということで、推します。

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