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勝手に1日1推し 69日目① 「ラムスプリンガの情景」・「親愛なるジーンへ」

「ラムスプリンガの情景」・「親愛なるジーンへ」(1) 吾妻香夜

アーミッシュ。私が初めてこの言葉を聞いたのは、彼らと彼らの暮らしぶりを知ったのは「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」でだったように思います。どういう人々かと言うと、

アーミッシュ(英語: Amish[2]、ドイツ語: Amische[3])は、アメリカ合衆国のオハイオ州・ペンシルベニア州・中西部などやカナダ・オンタリオ州などに居住するドイツ系移民(ペンシルベニア・ダッチも含まれる)の宗教集団である。 移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られる。原郷はスイス、アルザス、シュワーベンなど。人口は20万人以上いるとされている。 Wikipedia

以上です。

「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」では、「デビルズ・プレイグラウンド」と言うアーミッシュのドキュメンタリー映画を紹介していました。車を持たず、馬車で移動。電気も電話も使わず、歌や踊りなどの少しの快楽も禁じ、自給自足の生活しています。そんな中、ラムスプリンガ(ルムスプリンガ)を謳歌する若者たちの姿は、まるでリアル版「ラムスプリンガの情景」です(時代に違いがあるので、本作とは若干印象が異なります)。酒、煙草、セックス、ドラッグ、何でもありで放蕩の限りを尽くします。そんな中、アーミッシュになるかどうかの葛藤はとてもリアルで心が痛みます。もし、ならない選択をした場合は地獄へ落ちると信じてる、、、まるで呪縛のようで、可哀そうだな。

あ、ちなみに、アーミッシュはあらゆる快楽を断つことが求められているのです。成人するとアーミッシュになるかならないかを自分自身で選択することが出来ます。なので、その前にアーミッシュの全ての掟やしがらみから解放されて過ごして良い期間があり、それが「ラムスプリンガ」という儀式です。ラムスプリンガ後、アーミッシュにならない選択をした場合は、地獄行きのみならず、二度とコミュニティに戻ることは許されませんので、その厳しさには震えます。

このリアル版「ラムスプリンガ~」の「デビルズ・プレイグラウンド」についてですが、YouTubeで鑑賞可能でしたので再見してみました。興味のある方は是非~。漫画の世界が、というか、こういった生活が18世紀から21世紀、今現在まで300年以上代々引き継がれているなんて、中々衝撃的ですよね。

って、それが本題ではなかった!そもそも、そこまで知られたコミュニティではないと思われるアーミッシュがBLになっているなんて?!と言いたかったのです。発見した時には、ひっくり返りました!読まずにはおれん!!と鼻息荒く入手し、熟読しました。

「ラムスプリンガの情景」は、本当に詳しくアーミッシュについて描かれています。生活習慣、風習、宗教観、戒律、信念などなど、とにかく興味深いです!この点だけでも読む価値大ありですよ!

とは言え、BLですから、ラムスプリンガ期間にBがLしちゃう訳です。美い土地で、家族や友人に愛され、穏やかにアーミッシュの村で育った、未来を約束された青年テオと、大都会NY、父を亡くし、ダンサーとしてブロードウェイの舞台へ立つ夢も潰えた、孤独なイングリッシュ(アーミッシュはドイツ移民でドイツ語を使うので英語を使う人をイングリッシュと呼ぶそうです)の青年オズ。同じ世界とは思えぬような正反対の生活を送る青年2人が運命の恋に落ちる物語です。

全く環境の異なる2人の対比が素晴らしく、その違いが共鳴し合い惹かれ合うのが本作の見どころかなあと。世間知らずで幼く、素直で純真なテオとショービズ界で辛酸を舐めつくした世慣れし、斜に構えたオズ。テオの清らかな心はオズを癒し、立ち直らせ、恋や新しい感情を教えたオズはテオにアーミッシュを去る決断をさせます。

狭い世界から、広い世界へ出たい、という共通の願いが2人を後押します。本作、スピンオフ作品「親愛なるジーンへ」に共通し、重要なシーンでは度々登場する「川に暮らすニジマスが海へ出るとスチールヘッドという大きな魚になる」という比喩表現が全てを物語っております。読み返してみたら、しょっぱなからニジマス状態のオズの部屋のラジオから流れてた~。芸が細かいですね!

あと、アポロ11号の月面着陸、ベトナム戦争という光と闇が入り乱れる時代背景を描いている点も効いています!80年代のアメリカで実際にあったかもしれないリアリティーを感じさせます。

とにかく、家族とは会えない、村には帰れない、つまり全てを捨てることを覚悟し、オズといることを選んだテオに幸あれ!と願ってやみません。

それから、テオを心配するダニーにも注目です。兄ジーンも村を去ってしまった過去を持ち、愛する者の喪失の哀しみを知るダニーは、再び親友テオをも失ってしまうことになりました。果たしてアーミッシュとして生きることが、アーミッシュの教えを信じることが本当に幸せなことなのか、とダニーを思うと少しセンチメンタル。

そして、最後に、とにかく心に響くというか、心つかまれたセリフをお一つどうぞ。

キミはキミの岐路を自分で選んだことがないと見える そういうやつは一見優しい人間に見えるが本質はただの臆病者

ズドーン!!!はい、その通りでございます。痛み入ります。心しておきます、、、オズじゃなくて、私に言われたのかと思ったわい。

で、「ラムスプリンガ~」のスピンオフ作品ということで「親愛なるジーンへ」も同様に扱いたいのです。が、このまま続けるの長くない?長い。長すぎるので、次回に回そうかな。

ということで、推します。(→つづく)


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