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東京から京都へ。移住をしたら、レールが消えて自由になった。



ああ、あの京都での日々が夢みたいだなあ……



はじめての引っ越しと家事に慌てふためき、色々な場所に赴いて人と会い、縁があっていただいた仕事に挑戦し、カフェ巡りは怠らず、ホームパーティーを開くなどしていたら、あっという間に3週間が過ぎてしまった。

有給消化期間を終え、いまは新しい職場の仕事に慣れるため、一時的に東京の実家に戻ってきている。

東京に帰ってくると、夜の明るさや音の大きさ、心を無にして乗る満員電車、目がまわるようなスピードで進む人たちの時間に流されて、自分自身も東京モードに逆戻り。


あの3週間の京都生活は、夢だったんじゃないか……?


そんな心許ない気持ちになってメモ帳を開いたら、そこにはちゃんと自分の言葉で、「京都での日々を通して感じたこと」が綴られていた。

せっかく生まれた感情や気づきを、ちゃんと残しておきたい。そんな想いで、今回は「3週間の京都生活を通して感じた、移住してよかったこと」を書いてみようと思う。

▼京都に移住をした理由


東京における「成功」「幸せ」の基準に縛られて


移住を経て、いちばん強く感じているのが「心が自由になった」ということ。

今までは、仕事も暮らしも何もかも、自分が住んでいる「東京」の基準が当たり前で、その基準に少しでも満たないと、自信をなくしたり不安になったりすることが多かった。


たとえば……

  • 就活が不安だから、1年生の間にインターンを始めておこう…!

  • 仕事と育児を両立するために、20代のうちに市場価値を高めなきゃ…

  • あの人はこんなにも有名になっているのに、自分は何の肩書もない…

  • いつも会員制のお店に行ってSNSに投稿しているあの子が羨ましい…

  • 自分だって素敵な人と結婚して、都内のマンションに住むんだ…!


これらは、わたしがつい最近までとらわれていた価値観。(書き出してみると、かなり恥ずかしい……!)

色々なできごとを経て、少しずつ考え方は変わってきたのだけど、「成功」や「幸せ」について考えるとき、どうしても他人と比べてしまう自分がいた。

当時はその「基準」を疑わず、そこに満たないのは「自分の能力が低いんだ…」「努力が足りないんだ…」と思い、ひたすら走り続けて不安や焦りから逃れようとしていた。


移住したら、東京のレールから外れた


ところが。

京都への移住をきっかけに、長年暮らしていた「東京」という土地を離れたことで、わたしの心の状態は少しずつ変化していった。

京都での生活が始まってから、1週間が経った頃。


「そういえば、こっちに来てから全然SNSを見ていないなあ」


ということに気づく。



それと同時に、


「東京の新しいお店の情報が気になる」

「いま世の中で、どんな話題が注目されているのか気になる」

「何かアウトプットしないと、自分のことを忘れられるんじゃないか」


といった感情が、自分の中にほとんど生まれてこない状況に驚いた。

東京にいた頃は、「話題になっているお店にまだ足を運んでいない自分は、食通として遅れてしまっている…」という負い目や、「この子はこんなにも有名になってキラキラしているのに、自分は何もできていない…」という焦りが心の中を渦巻いて、苦しかった。



誰かが敷いたレールに沿って一斉に努力して、「自分よりもすごい人」と比べて落ち込み、ゆるやかに「その他、大勢」の中に埋もれてゆく。

そんな底なし沼のような日々が、「住む場所」を変えただけでこんなにも変化するなんて、移住をする前は想像もしていなかった。

移住をきっかけに、意図せずわたしは「東京のレール」から外れていたのだ。

鴨川沿いを歩く、帰り道にて


住む場所を変えたら、自由になった


京都に住まいを移してから、東京のことや東京にいる人のことがほとんど気にならなくなったのは、「自分は東京の人ではなくなった」という意識が芽生えはじめたからだと思う。

ふいにSNSで、誰かの幸せな姿や成功している様子が取り上げられているのを目にしたとしても、「自分とは別の世界の話だなあ」と自然に事実を受け止め、ざらざらした気持ちになることなく、流せるようになった。



自分は、人とは少し違う人生を歩みはじめた。いま、周りに同じような人はいないから、他人と比べる必要はない。



だから、京都で初対面の人に自己紹介をするときも、自然と「マーケティングの仕事をしながら、ライターをしています」と言えるようになった。

(そして早速お仕事をいただき、慌てて個人の名刺をつくった。)

東京では、「マーケター」が多すぎて口にするのが少し恥ずかしかったし、「ライター」と名乗るには恐れ多く、自分は何者なんだろう……と、自分に自信が持てなかった。

もしかすると、わたしが自由になったのは、「誰か」ではなくて「自分」からなのかもしれない。

好みのカフェに出会えてご機嫌


夢が "現実" になり、新たな目標ができた


京都は物心ついたときから大好きな場所で、憧れの土地だった。

「京都に別荘を建てたい」とか「定期的に旅行できるくらい、お金持ちになる」という夢や目標を掲げたことはあっても、「住む」という選択肢を考えたことは一度もなかった。

だから、わたしにとって想像もしていなかったことが、恋人の提案(思いつき?)によって実現できた今回の経験は、わたしにとって大きな自信になった。



夢を目標に変え、思い切って実行してみる。

京都移住ができたのなら、ほかにも「夢のまた夢」だと思っていることを、現実にすることができるのでは……?

そんな風に思えるようになったわたしは、次の目標を「自分のブランドをつくる」に決めた。

まだ何をするのかは全く決めていないのだけど、目標を立てたからには、少しずつ行動をはじめていきたいなあと思っている。

いつかこんなカフェを開きたい


たった3週間だけど、移住してよかった。


ほかにも、京都に移住して「よかったなあ」と感じることはたくさんある。ここからは、箇条書きでリストアップしてみた。

  • 早速ライターとしてお仕事をもらい、京都の新しい世界に触れた

  • その仕事を通して、今後も関わりたい素敵なプロダクトや人に出会えた

  • 「京都移住計画」のイベントを通して、面白い人たちに出会えた

  • 上記をきっかけに、家の近くに常連さんになりたいお店をみつけた

  • そのお店の店員さんと仲良くなり、同世代の人を紹介してもらった

  • 「京都、遊びに行くよ!」とたくさんの人に言ってもらえる

  • 早速、前職のインターン生たちが家に遊びに来てくれた

  • 京都の中で、好きなエリアがたくさん増えた

  • 長年「行きたいお店リスト」に溜めていたお店を日々開拓できる

  • 住んでいる町を、普段着で歩けるようになった

  • 毎朝「今日は、どのパン屋さんに行こうかな」と悩む時間が幸せ

  • パンを買って、鴨川で頬張る時間はもっと幸せ


たぶんもっとあると思うのだけど、キリがないのでこの辺にしておきます。

ある日のおやつ。蚤の市で一目惚れした器に乗せて。






「京都移住」をきっかけに、わたしは自分自身の固定概念や、東京で暮らしているうちに無意識に形成されていた「誰かの基準」「他人の敷いたレール」から外れ、自由に生きられるようになった。

正直「えっ、こんなにも単純なことだったのか……!」と拍子抜けしているくらい。



もちろん、生きづらさや日々に苦しさを感じているすべての人に「移住」という選択肢を薦めようとは思わない。

仕事や家庭の事情もあるし、移住によって手放さないといけないものも、きっと多い。わたしもそうだったから。

だけど、今まで自分の意思で「住まいを移す」という経験をしたことがなかったわたしにとって、自分の身体を物理的に「今いる環境から、離す」ことの意味と効果は、想像以上だった。

諦めずに「京都移住のよさ」を繰り返し伝えてくれた彼に、感謝したい。


***

東京での新生活は、刺激的で楽しい。
いい仲間に恵まれて、仕事も充実している。

帰宅すると母のおいしいご飯が待っているのも、本当にありがたい……。



だけど、京都での日々を切り取った写真を見返しながら思う。

「早く、彼と一緒に京都の家に帰りたいなあ」と。




1ヶ月後、京都に帰ったら。わたしはどんな感情を抱くのだろう?

最寄駅に降り立ったとき目の前に広がる景色を、いまから想像してみたりする。


▼京都暮らしや移住にまつわる文章を書いています。ふらっと覗いていただけると嬉しいです ◯


岡崎菜波 / Nanami Okazaki
Instagram: @nanami_okazaki_



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