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京都移住、はじめました。安全地帯を手放して、私が移住を選んだ理由



「来年から一緒に京都に住もうって言ったら、どうする?」




2022年、5月のこと。

朝の鴨川を眺めながら、近くのお店で買ったパンを頬張っていると、隣で目を輝かせながら、恋人がそう口にした。

「楽しそう!住みたい」
「もちろん、一緒に行くよ」

なんて簡単に言えなかった。それくらい彼の目は本気で、わたしは曖昧な笑顔で彼の視線を受け止めたまま、しばらく黙り込むしかなかった。



「京都に住む」なんて夢みたいなこと、現実になったらそりゃあ幸せだ。でもわたしには、大事な仕事がある。

大好きな上司に誘われて転職した、今の会社ではまだやりたいことがあるし、何より出社は必須だ。少なくとも30歳になるまでは続けるつもりだったし、こんなに早く辞めるなんて考えられない。

たしかに、京都はわたしの大好きな場所だ。でも、今のように頻繁に旅行で訪れることができるだけでも充分幸せなのだ。

正直、憧れの場所に「住む」ことなんて、これまで一度も考えたことがなかった。

関西には縁もゆかりもないし、知人もいない。最近移住や二拠点生活をする人が増えてきているとはいえ、まさか自分が移住だなんて。そんなに気軽にできるものなのだろうか……。




突然目の前に現れた問いの大きさに、わたしは戸惑い、思考が完全に停止してしまった。





それから10ヶ月後。


2023年、2月23日。


わたしたちは、本当に京都に移住することになった。





***


はじめまして。岡崎菜波です。

このnoteでわたしを初めて知ってくださる方もいると思うので、簡単に自己紹介を。

1995年生まれ、27歳。出身は、茨城県水戸市。3歳のときから東京の板橋区に10年間、ブラジルに4年間、東京の世田谷区に9年間ほど住んでいました。

仕事はWeb広告代理店に2年間、教育系の事業会社に3年間在籍。職種としては、Webマーケティングやイベントの企画・運営、大学営業・広報などをしてきました。小さい頃から文章を書くことが好きで、副業でライターのお仕事もしています。

詳しい自己紹介やポートフォリオは、下記のnoteにまとめています。今後お仕事などで関わってくださる方は、ぜひご覧ください。


***


わたしと彼の「京都移住計画」について、この10ヶ月間ほとんど誰にも話してこなかったことを、これからnoteに少しずつ綴っていきたいなと思い、文章を書きはじめた。

職場の人はもちろん、毎日顔を合わせる家族にすら、京都移住のことをなかなか打ち明けられずにいた。

はじめてこの計画について話したのは、昨年末のこと。そのときは家族全員にたいそう驚かれたし、なにより母にはかなり心配された。

これまで、誰かに聞いてほしかったけれど言えなかったことや、書き留めておきたいけれどSNSには公開できなかったことを、「京都移住」が現実になった今、きちんと言葉にして残しておきたい。

散々悩んで葛藤してきた、この10ヶ月間の自分のためにも。移住や二拠点生活に憧れているけれど、まだ身近ではない、少し前までのわたしのような人のためにも。

第一回目のnoteでは、京都移住を決めた理由を振り返ってみようと思う。


理由① 京都を愛しているから


一つ目から当たり前すぎて拍子抜けしてしまう内容かもしれないけれど、いちばんの理由は、やっぱり京都が好きだから。


「生まれ変わったら、京都で生まれたい」


それがわたしの口癖だった。

とはいえ現世では叶わぬ夢だから、せめてお金持ちになって別荘を持つか、出張や旅行で行けるような仕事に就きたいな……。

そんなことを思いながら、5年間、日々の仕事に打ち込んできた。

物心ついたときから、京都という土地に憧れを抱いていたわたしは、5年前、京都出身の先輩との出会いをきっかけに、毎年のようにひとりで京都を訪れるようになった。

京都駅のホームに降り立って空気を吸い込んだ瞬間から、わたしの身体はみるみる元気を取り戻し、町を歩くと自分が自分に戻れるような感覚になる。

それを何度も経験しているうちに、京都は自分の第二の故郷だと感じるようになった。

ここ数年は、長期滞在するたびに拠点にしている大好きなNINIROOMがある神宮丸太町から、鴨川沿いを歩いて出町柳で映画を観たり、大福を買って食べたり。

叡電に乗って、恵文社をはじめとするお気に入りの本屋さんで購入した本を片手にカフェで読書をしたり。そんな「日常の京都」を味わうのが、わたしの人生の楽しみになっていた。

何度訪れても、ついその日の姿を撮りたくなる


理由② 自分の感性を取り戻したい


「好きな場所に住むことで、自分が自分らしくいられる。そうすると、自分の感性を最大限に活かして働けるようになる。」

彼にそう言われたとき、たしかに東京で会社員を始めてからのわたしは、周りの期待や評価ばかり気にして、自分らしさを見失っていたなあと思った。

弱みを克服しようとして、自分の強みや魅力を活かす方法を、全く理解していなかった。

東京が嫌いだと思ったことは一度もないけれど、とくべつ「居心地がいい」「自分の居場所だ」と感じたことも一度もなかった。

日本で好きな場所を挙げるとするなら真っ先に京都が浮かんだし、ただ京都という地に降り立つだけで、わたしは終始ご機嫌でいられる。

京都を訪れると、その数日間は自分の心の声に従って行動することができた。鴨川のきらめきや頬にあたる風の心地よさ、古い街並みの静けさや喫茶店に流れるゆるやかな時間。

そのどれもがわたしの心をくすぐって、自分の五感が自然な状態で開いている、そんな感覚になった。

自分がそういう状態でいると、様々な記憶や感情が呼び覚まされて、言葉が心の底から次々に生まれ、文章を書く手が止まらなくなる。

「ななみが京都に住んだら、そんな状態が毎日続くんだよ。俺はそれが、楽しみで仕方ない。」

彼にそう言われ、それはたしかにすごいことかもしれないな、と実感が湧いてきた。

自分の感性を、心を取り戻したい。「自分が自分のままでいられる」とはじめて感じた土地で、暮らしてみたいと思った瞬間だった。

理由③ 自由になりたかった


「自由になりたい」とはじめて思ったのは、社会人になってからだ。

それまでの23年間は日々に不自由を感じることもなく、大きなリスクに脅かされることなく安全地帯で過ごしていた。

社会人になって、自分が好きなことや得意なことより苦手なことの克服を求められることが多くなったり、周りからの評価や期待を気にしすぎて自分を押し殺し、相手の基準に合わせることが増え、生きづらさを感じることが多くなった。

そんなとき、出会ったのが今の恋人だった。

わたしからすると、のびやかな彼の行動には驚かされることばかりで、どうしてこんなにも自由に生きられるのだろう……と、不思議で仕方なかった。

彼の存在は心強く、眩しかった。一緒に過ごしているうちに、少しずつわたしも影響され、考え方が柔軟になってきているなあと思う。

「好きな場所に住む」ことは、彼にとっては当たり前の価値観。だけど、わたしにとっては信じられないこと。

だからこそ、自分も彼の基準で行動してみることで、自由になれるのかもしれないと思った。

大げさだと思われるかもしれないけれど、わたしにとって「住む場所を自らの意思で変える」というのは、楽しみ以上に不安や恐怖を伴う、大きな挑戦なのだ。

ひとりだったら、こんな決断はできなかったかもしれないなあと今でも思う。彼と一緒なら、わたしは少しずつ自由な自分になれるかもしれない。

そうして「移住」という、未知の世界に飛び込む決意をした。

2年前、息苦しさを感じて逃げるように京都に向かった


理由④ 好きなことを仕事にしたい


「京都にまつわる仕事がしたい」と思うようになったのは、前述した京都出身の先輩と出会ったのがきっかけだった。

「仕事をしたいんだったら住むのがいちばんだよ」という色んな人の台詞には説得力があって、たしかにそうだなあと頭では理解していたのだけど、だからと言って簡単には住まいを移すことはできない。

東京という京都から遠く離れた地で、「京都に関わる仕事がしたいんです!」とひとり小さく叫んでいる、そんな独り相撲な状態が続いていた。

結局、次の転職先も東京の会社なのだけれど、今でも京都に関わる仕事をすることは諦めていない。

これから一人ひとりと縁をつないでいって、その先で自分の力が活かせるお仕事をいただけたらいいなあと思う。

「京都」という場所以外でも、大好きな食や本、旅、宿泊施設など、好きなものの世界観をつくり、魅力を伝えられるような仕事をしたいという夢は、変わらずずっと持っている。

まずは、京都に移住した自分だからこそみつけられる京都の魅力を、色々な方法で伝えていきたい。

心が元気を取り戻し、静かに満たされる空間


理由⑤ 唯一無二の存在でありたい


最後は少し書くのが恥ずかしいのだけれど、わたしはずっと、唯一無二の存在でありたいと思いながら生きてきた。

「人間は、誰しも唯一無二だ」という考えももちろん理解できるけれど、そのうえで、自分にしか生み出せない価値を届けられるようになりたい、という気持ちがずっとある。

せめて自分が関わった人の中だけでも、「岡崎菜波=〇〇の人」というイメージができたら嬉しい。

だけど大勢の人がいる東京で暮らしていたら、自分の個性や魅力が何なのか、自分にしかできないことは本当にあるのか、わからなくなってくる。

有名人なりたいわけではない。大勢の人よりも、少数でいいから、わたしの感性や想いに共感してくれたり、面白がってくれたり、「一緒に何かしよう!」と言ってくれるような仲間ができたら充分幸せ。


大好きな人たちに囲まれて、好きな仕事をして生きる。


考えが甘いと感じる人もいるかもしれないけれど、まだまだ長いこの先の人生、時間をかけて、少しずつそんな理想に近づいていきたい。

まずは京都にいる間に、わたしの存在が誰かの心に刻まれるような何かを残せたらいいなあと思っている。

青々と葉が生茂る、春の鴨川に会えるのが待ち遠しい


京都が好きな方・移住に興味がある方へ


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は「移住を決めた理由」に絞って書いてみました。これからは、下記のマガジンの中で、京都暮らしや移住にまつわる文章を書いていけたらなと思っています。

(今のところ、移住を考え始めてから実際に移住するまでのできごとや考え方の変化、転職活動の中で起きたこと、考えたことなどを書いていくつもり。)

ゆるく更新していきますので、興味がある方は、ぜひふらっと覗いていただけると嬉しいです ◯


京都や関西に在住・お仕事で関わっている方へ


わたしも彼も、京都にはまだまだ知人が少ない状況です。

友達をつくりたい!京都に関わる仕事をしてみたい!とは思っているものの、何から始めたらいいのかわからない状態。

なので、「仲良くなれそう」「一緒に何かできそう」という方は、ぜひ繋がっていただけると嬉しいです……!

わたしは、主にnoteとInstagramで日々のことを発信していこうと思っています。

これから、どうぞよろしくお願いします 𓂃𓂂𓏸







岡崎菜波 / Nanami Okazaki
Instagram: @nanami_okazaki_

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