夢の中で明日を想う


愛する人と愛する犬が死んだ、夢をみた。

それはとても緻密で現実味のある夢で、夢から覚めた後も、

これが夢だとわからないくらいだった。



夢の中では愛する人が突然目の前で倒れて、家に帰って

きたら愛犬が、ただの毛むくじゃらの物体となって

横たわっている。そんな夢だった。

夢の中でわたしは、もうこの世が終わるんじゃないかと

思うほど泣いて、泣いて、身体中のすべての力が

なくなったとき、ふいに、目が覚めた。

目が覚めたとき最初に思ったのは、「ああ、どうしよう」

だった。自分が取り返しのつかないことをしてしまった

ことに気づいたように、血の気が引いていた。

しばらくして、ベッドの足元に丸くなって眠っている

そのふわふわした生き物が視界に入ったとき、はじめて

ああ、さっきのは夢だったんだと悟った。



これまで、自分が誰かに殺される夢は何度も見たことが

あったけれど、目の前で誰かが死んでしまう夢は見たことが

なかった。だから、少し気になって、わたしは生まれて

はじめて「夢占い」というものを調べてみた。

「死」という項目を見ていたら、こんな記述があった。

「恋人が死ぬ夢は、ふたりの関係が今後良い方向に

変わる兆し」

「愛する人」は、厳密にいうと「恋人」ではないのだけど、

そのくらいは多目に見てもらえるのだろうか。

いずれにしても、「死」はいつも夢の中ではいいことが

起こる前触れなんだなと知る。

たしかに、夢の中でこんなにひどい思いをしたのだから、

その分現実ではいい思いをさせてくれ、と思う。



夢の中で死んでしまったあの人にも、近いうちに

いいことが起こるのだろうか。

きっとそうだったらいい。と、もう会えない愛する人の

明日に思いを馳せて、今日も眠りにつく。


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