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宗教施設見学のつもりが無償で働く人々の工場見学だった話。エホバの証人見学編。


※あくまでも筆者の独断と偏見で構成されたnoteです。個人の考えを肯定するつもりも否定するつもりもありません。


はじめに

エホバの証人の日本での一番大きな施設は神奈川県海老名市にある。それも厚木市にはないことでお馴染の厚木駅から1キロ以上離れた場所にある。郊外の大学的な場所にあることに昔から関心があった。非信者の方でも見学をしたことがある記述をネット上で確認できたため、エホバの証人の公式ページで申し込みをし行ってみることにした。

GoogleMAPの罠

最寄り駅は厚木駅であるが近くまで行くバスは隣の駅の海老名駅から出ていた。30分に一本のバスへ乗り込むと座席は全て埋まっているくらいの乗車率であった。最寄りのバス停は2つあり、農業高校前と神社前。余計なお世話であるが、高校と揉めないのかとか神社という他の宗教施設の前を模した名前で大丈夫なのかなど余計な心配をしてしまう。

農業高校前で降りると少し離れた場所にものみの塔(エホバの証人の正式名称)と書いてある建物が見えたため途端に緊張してしまった。

門が空いていたためドキドキしながら門をくぐり守衛の方が建物にいたので話しかけた。守衛さんの顔を見るとなんとも言えないが信仰がありそうな空気を感じる人だ。言語化が出来ないが、よく宗教施設に行くと似た匂いを纏った人に出会う。話を聞くと工事を行っており、現在居る入口ではなく別の入口が受付と言われた。QRコードで入口の行き方を示している線が書かれてあるgoogleマップを読み込み、入口を目指すことになった。

後数分で約束の時間のためgoogleマップが指し示す方向に進むとたしかに最短経路であるが逆方向の道であり入ることができる場所が無かった。あの地図に線が引かれいた意味はそういう事かと思い引き返して逆側の道に進む。歩いているとよく分かるがとてもとても広大な敷地だ。郊外にこの建物がある理由がほんの少し、歩いているだけでわかった気がした。

やっとの思い出入ることができる入口へたどり着いた。10分くらい経ってしまったようだ。そのくらいとても広い建物であった。

この入口から入り現在の見学者受付窓口のホールまで数分かかり初夏の昼下がり汗をかきながらたどり着いた。


私、普通の人なんですけど

たどり着いたホールの入口はホテルのフロントのようであった。男性2人、女性1人が受付の場所にいた。彼らに本日見学予約をしていたことや遅れてしまったことを謝罪する。すると名前や所属の教区(エホバの証人で所属している支部的なもの)を書いてくださいと紙を渡された。本日の日付で10人程度の人の名前が先に書かれていた。外国人の方であろうアルファベットの名前もあった。また先客の人達は教区名がしっかり書いてあり、筆者のような人間が来るべきでないというより来ることが想定されていないと感じた。

「私普通の人なんですけどどうすればいいですか」

教区が無いことを伝えるに相手を刺激しないで伝えるのはどうすればいいのかと思いながら恐る恐る"普通の人"と口に出していた。自分で言いながら普通とは一体何なのか。どう考えても一人で宗教施設見学している方が可笑しいだろと心のなかでツッコミを入れていた。

教区がないことを伝えると名前のみの記載をしロビーの椅子に腰を掛けて待つことになった。その際受付三人衆は信者ではなく来た筆者に困惑しているような発言をしており、申し訳ない気持ちになった。数分後先程の受付の女性が私の前に来て彼女と私で見学をすることとなった。
ここまでの印象としては、招かれざる客の上に遅刻してきたが丁寧な対応のため少し好感を持った。

聖書の勉強に興味があったんですか

受付のホールから二人で外に歩き出す。私は何故来たのかと尋ねられて、インターネットで見学ができることを知り施設に興味があったため申し込んだことを伝えると興味深そうなリアクションをされた。

 「聖書の勉強に興味があったんですか?」

彼女からこの言葉を言われてて筆者のテンションは急撃に高まった。エホバの証人といえば、聖書の勉強に興味がありませんかといろんな家に訪問するイメージを昔から持っているからだ。小さい頃流行ったギャグを本物から聞いたような感情になった。

高まる感情をそのまま口にする事はデキないので曖昧な言葉を発し、ごまかした。すると彼女は今工事中で正規の見学ルートではないんですけどと、建物の裏口にありそうなドアを開けた。薄暗い建物の中、階段を上る。

製本工場

開けた場所に出るとそこは工場だった。今回の見学8割が聖書の印刷、製本など本作りの工場を見学するモノであった。エホバの証人で出版している聖書の製造工場だったのだ。筆者は非信者でも見学できることは知っていたが、詳細なルポは(リサーチ不足なのか)なかったので思っていたのとは違うと思わなかったと言えば嘘になる。

見学で見ることが出来るのは施設の入り口部分付近のみであるが、この場所だけ見たら誰しもが宗教施設なんて思わないだろう。大きな機械があり、この時は流れていなかったが、コンベアなどもありラインが動いていれば単なる印刷業者でしかない。

エレベーターにて製本作業の別工程へ向かう。その際案内役の彼女と世話話をしたが、彼女は母親が昔からエホバの証人の信者で、小さい頃から親しんでおり、20年くらい海老名の施設に居るそうだ。

とても上品な女性で、私が見たことのある親と同じ考えて生きられたいい子タイプの女性のように見える。また日本でのエリート信者が集まる施設に長年居る方なのでこの気品も納得だ。

エレベーターで上がっ先の作業を見ながら説明をして貰う。エホバの証人で出版している聖書はアメリカと海老名の二箇所で作られているそうで、いろいろな国の言語の言葉のものがこの場所で印刷されているそうだ。読めない言語での作業の苦労や色々な気候に対応する為製本のノリにはこだわりがあるなど教えてくれた。

筆者は印刷系の工場に居たことはないが、工場軽作業のバイトをしたことがある。設備や労働者の装いなどは昔のバイト先と変わらない。本当にシッカリした工場なのだ。

ただバイト先の工場は殺伐としていたが、こちらの作業員達は、案内役の彼女にフレンドリーに手を振っていた。親しみや親愛を感じる態度だ。彼女が信頼されている方なのか風土なのか分からないが少し怖いくらいの明るさを感じた。

無償の奉仕

作業員の方が案内役の彼女に話しかける。若そうな方男性で彼女とは歳の差を感じたがとてもフレンドリーに話しかけている。すると彼女は筆者の事を紹介し

「イッターネットで調べて見学に来たんだって」

と言ったやはり余程珍しい客人なんだなと改めて認識した。

作業員の男性ともう一人の友人の方と少し話す機会を頂けたので聞いてみると、二人は今23歳の同級生で3ヶ月位この場所で作業をしているようだ。ここへ来て聖書作りに携わることによりたくさんの学びがあるとキラキラした目で筆者に伝えてくれた。真っ直ぐで嘘偽りがない瞳にドキッとした。怖いくらい純粋な人に見えた。

また彼に宗教2世なのかと少し回りくどい言い回しで聞いてみたが、工場の機械音がうるさいことと筆者の生き方の悪さでうまく伝わらなかった。自分のコミュニケーションスキルに落ち込んだが、しかしあの瞳はこの世界しか知らない人に思った。



 案内役の彼女がここでの労働は給料を貰っていないんですよと23歳の作業員の方と会話が止まった時に言った。




ここまで見てきたものはどこからどうみても普通の工場だった。作っているものは置いておくと、宗教の匂いはない。しかし賃金が払われていない。ここは間違いなく宗教施設なんだと思いギャップに足がすくみそうになった。

また彼らは無償の労働を誇りに思っている様に感じた。筆者はそうなんですかーや凄いですねーなど適当な合コンの相槌みたいな言葉を口から発していたが本当は凄く怖かった。一人で未知の世界に足を踏み入れてしまったようで、海老名という場所は筆者の学生時代のクラスメートとかも暮らしていた身近な街にこんな世界が広がっていたなんて知らなかったし、知らないほうが良かったんじゃないかと。

秋葉原にあったオウムが運営してたため人件費が掛からなかったため安かった、伝説的なPCショップのマハーポーシャ的な世界観が広がっているなんて。

個人的な考え 

筆者自身新興宗教二世として生きていて(個人的な母の宗教での思い出話note)↓

宗教という場所が自身の居場所になっている人なども知っているので、存在を否定しようという気持ちは全く無い。しかし20代前半のあの青年たちがいろいろな世界を見て現在の無償で聖書作りの労働をしているのであれば良いが、どうしても筆者より若い彼らの事が心配になった。一番楽しい年代であり大切な年代だと思うので今後の人生後悔しないのかなと。

また個人的にはボランティアというものすら嫌いで労働には対価が払われるべきだという思想の持ち主である。やりがい搾取や善意を利用した奉仕なども好きではないし、やって欲しい事があるのであれば相応の報酬を支払うべきであると考えている。

なのでこの場所で労働している人達とは仲良くはなれないだろうなと、機械音でザワザサしている工場の中強く思った。

工場の中を見回すと沢山の人達が働いている。この人たち全員無償の奉仕をしているのかと思うとなんと言えば良いのか分からない。しかし彼らは案内役の彼女にフレンドリーに挨拶をしていて明るく楽しそうだ。無償の労働をしていると聞かされる前にも思ったが、再度この明るさを見ると時間と労力を使ってまで何故信仰したくなるのか筆者には理解ができなかった。

抽象的な質問になるんですけど

工場の作業工程を見たあとソファーの休憩場所がありそこに座ることになった。案内役の彼女にストレートに聞いてみようと思った。
 
「抽象的な質問になるんですけど、どういうところが好きでやってらっしゃるんですか」

どんな趣味でも推しへの愛を聞くのは楽しいことなので、エホバ推しの意見を聞いてみようじゃないかという気持ちで意を決して尋ねて見た。

彼女曰く、小さい頃からのエホバの証人で聖書を学ぶことで神を感じ、聖書がお守りのようだそうだ。現代社会を生きていると不安な事いっぱいだが、神がいればよい世の中になる安心考えられると教えてくれた。また世界中に仲間がいるのも安心感が得られるためだそうだ。

また現代社会の不安事としてウクライナ戦争を挙げていたが、ロシアは正教を重んじているが、キリスト教ではあるが仲間意識はないと言っていた。エホバの証人の公式ホームページでキリスト教ではあるがカトリック、プロテスタントではないと書いてあったが正教とも違うという意識であることは興味深かった。

伝統系キリスト教のホームページだとたまにエホバの証人や旧統一教会と自分たちは違いますと主張している所もあるので、お互いに仲間じゃないと思っている部分に申し訳ないが少し笑いそうになった。

32ページと16ページ

休憩から見学順路に戻ると、聖書の文字のフォントのこだわりなどが書いてあるパネルが貼られている。エホバの証人では2013年に英語版、2019年に日本語版の新しい聖書を出しておりその際の字体の拘りが書かれている。聖書は分厚いために見やすいように字体のフォントを濃くして見易くしているようだ。濃いフォントと普通のフォントが並べられてたが個人的には普通のフォントの方が良いと思ってしまった。分厚い本だと感じ方が違うのかもしれないが。

また聖書以外の出版物はどの言語も16ページか32ページと決まっているのでフォントには強い拘りがあるようだった。各言語同じ言葉を表す文字数も違う上に、その時々で長さなんてかわるだろうにページ数固定は正直非効率的ではと感じた。

パネルを見ていると前にも見学者の方がいる上に後ろの見学者の方は海外の方の様だ。海外の方も沢山見学に訪れるそうで、珍しい光景では無いと言っていた。

絵文字

パネルを見ていると、エホバの証人内での医療や司法の相談に関しての記載のある場所にたどり着いた。絵で表されていたが、柔道着のマークと輸血に斜線が引かれているマークが描かれている。

否定しているや敵と思われたくないので輸血についてなど触れないで見学をしていた。その上見学内容が工場のため本当にエホバの証人に来ているのかわからなくなりそうだった。

しかし輸血がいけないことや争いごとに否定的なため柔道の授業や部活が行けないエホバの証人のルールを端的に表すマークがあったので笑いそうになったのを我慢した。

歴史

階段を下がるとエホバの証人の日本での歩みが描かれたパネルコーナー。ここが今回の見学の最後の場所となった。

戦前は迫害されながら活動していたことや、海老名での施設は1980年頃にできたことが記されている。

案内役の彼女が強調していたことは、日本でのエホバの証人は特殊な聖書を使っていると言われていたが、以前はエホバの証人内での作った聖書でないものを使っていたという話だった。公式ホームページなどでもその様な主張をしているのを確認していたので、進研ゼミで見たやつだ的な気持ちになった。

まとめ

今回日本でのエホバの証人で一番大きな施設である海老名にある日本支部へ行った。驚いたのは宗教施設というよりかは印刷施設であったことだ。3000人くらい収容できる大ホールなどもあるようだが、工場という側面が大きいと思った。また彼らが「聖書の勉強に興味がありませんか」とやってくるが、聖書の出版自体を自分たちで行うくらいの根幹であることが分かった。

しかし信仰心で無償の労働をしている人たち。それも筆者より若い20代前半の人がそのような環境で生きていることが、あまりにも衝撃的だった。信仰の自由というものは保障されるべきと思う上に、一度会っただけの他人が人の人生に口を出すべきではないと強く思うが、筆者としては労働の対価は支払ってもらうべきではないかと思った。

今回見学においてとても快く2時間も時間を使っていただいた事に関してとても感謝しています。

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