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少女A伝

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短編小説集です。
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#高校生

へいへい

へいへいは、バカだ。
偏差値の低い私達の高校の中でも、群を抜いて頭が悪い。
よく忘れ物をするし、授業中は寝てるし、男子達が馬鹿らしい遊びをしている時、中心にいるのは大抵へいへいだ。

そんなへいへいに興味を持ったのはいつ頃だったのか、もう覚えていない。
彼は、サッカー部に所属していた。
部活の中でどれくらい上手いのかはわからない。
けれど彼は運動神経が良いから、きっと足でボールを思いのままにコント

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ハナゴンドウの矜持

泣いている友人を慰めるのは、なんて心地がいいのだろう。
目の前の美しい少女は、さっきから頰を赤く染め、形のいい眉を歪めて涙をこぼし続けている。
遠くから夕陽が、教室をまるで舞台のように照らしていた。

教室には私と襟子しかいなかった。
校庭からは、部活動を終えた生徒達の喧騒が聞こえてくる。
風が、電車が遠くの線路をわたる音を運んでくる。
けれど、私の耳には襟子の啜り泣く声しか届かない。
まるでこの

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