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撮影の名脇役

美術・スチール写真担当 川口さん

 こんにちは、『ななめの食卓』で美術を担当した川口です。
 今は大学を卒業し、(なぜか)テレビ局で報道カメラマンとして10キロ近いカメラを担ぎ、いろんな人にいろんなことを言われながら、お休みの日は整体に行く日々を送っています。
 
 宣伝の文章を書いてほしいとの依頼を受けて、ちょうど1年前の今頃撮影していたのか~と思いつつ、もう一度作品を見返したら、いろいろな思い出が蘇ってきました。
 
 この授業に参加し始めた5月頃、わたしは将来何がやりたいのかわからず悶々としていていました。そんなときにこの授業の存在を思いだし、そういえば早稲田に行きたかった大きな理由は映画だったなと思い、劇中にもあるように、まさに「ぼーっとしてるよりかは動き回る方がまし」という思いから半ばヒントを求めるような気持ちで参加していました。
 
 例に漏れず、撮影現場での経験はほぼなく、唯一前年に同じ授業で美術を担当していた友人をすこしばかり手伝った経験があったことから、「責任重大なことはしたくないけど、ごはんが出てくる映画だし、料理くらいならできるかな」という感じで美術を担当する流れになっていました。
 
 作品を見返す中で、細かいことをあげるときりがないくらい、1カット1カットでの様々なストーリーが思い出されるのですが、それぞれの役割の中で、それぞれ気になることが違うとそれはもうカオスで、でも撮影が進むごとに作品への愛着が徐々にわき、とにかく必死になって私たちなりの「いいもの」を追い求め、あーでもない、こーでもないと意見をぶつけ合った記憶は、気力を失いかけていた私の学生生活終盤の最後の良き思い出になっています。
 
 この映画の魅力は、なんといっても監督の他者に対する「想像力」と「観察力」だとわたしは思います。何かと自己投影しがちな自分に対して、他者を通してわかろうとすることを教えてくれました。それからこの映画は繊細で複雑なテーマを扱っていますが、答えをすぐに見つけようとするのではなく、繊細なものを繊細なまま、複雑なものを複雑なまま受け入れてもいいんだ、と肯定してくれた作品でもありました。
 
 改めて贅沢で楽しい時間を過ごさせていただいたなと1年前の自分をちょっとだけうらやましく思いつつ、今年はオンラインで、どこからでも100円で観られるようなので、たくさんの人に届け~!という気持ちです。

 次は助監督・編集の山下くん!見た目より背が高いです。

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(度重なる追加撮影のたびに料理や小物の準備をするのはなにより大変だったと思います...。監督の意図をいつもうまく汲み取ろうとしてくれてありがとう!)

スチール写真 photo by 川口