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帰り道でも帰りたい

「おうちに帰りたい!」

バイトに向かう平日の昼下がり、停車中の電車に小さな男の子がお母さんに抱っこされながら乗り込んできました。男の子は何が気に入らないのかわかりませんが、ずっと「おうちに帰りたい!」と言って泣いています。

何がそんなに嫌なんだろうとしばらく見つめていたのですが、どうやら2人は家に帰る途中みたいです。坊や、泣かなくても大丈夫。君は今おうちに帰っている途中だよ。と心の中で呟いてみます。

でも泣き虫がついてしまった男の子にそんなことは通じません。「帰りたいよお〜」と「うんうん」という会話の応酬がちょっとおかしくて笑いそうになっていたところ、運転の交代に駅員さんがやってきました。

その駅員さんは涙を流す男の子を一目見ると、小さく手を振ってあげました。なんてかわいい光景!と胸がキュンっとします。小さき人は相変わらず泣いていますが、駅員さんはニコニコしながら彼の顔を覗き込んでいます。LOVE & PEACEだ・・・とほくほくしながら眺めていました。

結局降りるまで彼が泣き止むことはありませんでした。他人事なのでかわいいなと気軽に思ってしまいますが、お母さんって本当に大変だなあと尊敬します。どうかあの帰りたくて仕方がない男の子が、はやく安心できますように。お母さんも機嫌良くおうちに到着できますように、と念を送ってみます。

ああ〜わたしも帰りたい。今日は夜までバイトなんだよなあ。バイト先に着くまであと30分。バイトが憂鬱なわけでないですが、行かなくていいもんなら行きたくないなという感じ。まあでもあの坊やみたいに涙を流すほど嫌いうことでもないのでしぶしぶ向かうとしましょう。

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