2020.8.25-30 付箋とプレイフルな色、なくしものとホテルステイ
ここのところ、人生で一番というくらい付箋を消費している。
付箋は、使う前に糊がついていないほうを指の腹でぐっと押すようにして立ち上げて準備をする。ほんの少し浮き上がったところを弾くように撫でながら、ときどき一枚ずつ剥がして本の間に貼る。その感じが当たり前のようで新鮮に感じられるのは、たぶん、あまり付箋を使ってこなかったせい。
付箋はいつも、万年筆とインク瓶が描かれた小皿に入れている。墨っぽいインクのニュアンスが好きで買ったこの小皿には、付箋のほかにささやかな華やぎをくれるものをころころ入れている。原稿を打ちながらふとしたときに目に入る指輪、本のかたちのクリップ、それから気分転換用のミニ香水。
ミニ香水は、ステイホーム期間に買ったNOSE SHOPの香水ガチャのもので、愛用している香りの合間にちまちま使っている。NOSE SHOPは店員さんとお話ししながら香りを探すのが楽しいお店で、香水ガチャはテーマごとにミニサイズの香水がランダムに届くというもの。私が買ったときは紅茶と寝香水とお花のテーマだったかな。自分では選ばないような香りにもお気に入りが見つかって楽しい。前に行ったときに気になったけれど在庫がなかった香りとあわせて、ささやかながら応援の気持ちでぽちったのだけど、次にお店に行けるのはいつのことになるんだろう。
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少し前、UZUのアンケートに答えてみたところ、リップが送られて来た。私に送られて来たのは、「+2」(スモーキーレッド)というカラー。9/18~全国発売の新商品UZU 38℃ /99℉<YOU>のプロモーションだったみたい。
ひと塗りしたときのなめらかさが重たくなくて、するんと心地よかった。鏡の中に映った色は、自分ではあまり選ばない色だからか新鮮な感じがした。
あと、ラベルの印刷がニス盛り加工なのかな、色違いのインクをわざと重ねているのがお洒落。
似合う色もいいけど、気分に合わせて色を選ぶのもいい。いつでもハッピーでいなくてもいいし、ハッピーでない一瞬だって愛おしい。という感じのコピーに惹かれてなんとなく答えたアンケートだったけど、ああこれは心に響かせたい、そしてファンを育てて「私たちのブランドを自由に選び取ってほしい」ためのプロモーションなんだな、と受け取った。心地よい働きをするPRで、すっかり好きになってしまった。今度、アイライナーを買ってみようかな。
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ライター仕事の請求書を投函し、そのままカフェで原稿をするつもりで支度をしていたところ、ウォークマンが見当たらないことに気づいた。記憶の中の動線をたどりながら小一時間ほど探したけれど、見つからなかった。部屋の中で行方不明なのか、落としてしまったのかもわからない。カフェで四時間くらい音楽を再生しつづけたスマホは熱々になってしまった。
やや聴覚過敏の気があるのか、耳から聞こえる音を頭の中で文字にしてしまったり多分に拾いあげてしまいがちなので、外からの音を柔らかく遮断したい。スマホで音楽を聴くのがどうにも性に合わないのとノイズキャンセリングが必要ということもあり、今週はずっと隙間時間にウォークマンの価格を調べては逡巡、をくり返していた。どこにいっちゃったの、私のトワイライトレッド。掌の中に音楽がないと、心細くてたまらない。
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週の真ん中には、役所(とハロワ)へ行くのと気分転換という理由を付けて、ホテルに一泊した。この夏二度目の、おこもりホテルステイ。
私の部屋は私のためにあるものだけど、時には私でいっぱいの部屋から逃れたいような気持ちになったりもする。そして、すべてが数歩以内で完結する上に、部屋の状態を維持するために手を割かなくてもいい空間というものは、あまりにも快適なのだった。
ホテルを選ぶときのこだわりはそれなりにあるほうで、中でもデスクの広さと絨毯の模様は必ず確認する。今回はデスクが広めでいいなと思ったダブルを予約したのだけど、このご時世ということもあってかクイーンにアップグレードしていただいていて……デスクが……。
でもこの奥にあるソファが気持ちよかったので、これはこれでいいなと思った。足を乗せてねそべるようにして、えんえんと資料を読んだ。ホテルにしては明るめな空間というのもよかったな。
ホテルに泊まることの楽しみの内訳に、インテリアのトーンやアメニティ、説明の多寡やお金のかけどころでブランディングや想定される利用者層が見えることがあげられるのだけど、そういう部分はビジネス~シティホテルのほうが幅があって面白いなと思う。
しかし、自分を引きずっていくような気持ちでたどり着いたハロワで見た求人が、なかなかに地獄だった。しばらくふわふわするつもりでいるとはいえ、あまりにも……という求人が数少ない中を占めていることがずしんと胸に来た。何度も画面を見たけれど、このご時世ということを加味しても……というものばかりで、私がたまたまそこに飛び込んでいかなくて済んでいるだけで、もしかしたらわがままなのかもしれないと思いながらも、すぐそこにある地獄の深さについて考えていた。
ちょっと沈んでしまったので、夜ご飯はデパ地下で鯖寿司とふんわりした卵焼きのお弁当を買って自分の機嫌をとった。おいしかった。
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原稿の合間に、Amazonのほしいものリストと楽天ROOMにちょこちょこ追加している。自分のための備忘録としての利用だけど、眺めるたびに幸せになるので、いい休憩の仕方を見つけたと思う。
……と、ほしいものリストを眺めてながめてしばし。いいよね? 仕事に使うものね? セールしてるしね? とKindle Paperwhite をぽちった。先週の日記を読んだ友達がダイマ記事を書いてくれたり、作業通話中に軽やかに「買いなよ」と背中を押されたりして、だいたい買う気にはなっていた。明日届くんだ。楽しみ。
ゆるふわ社畜が極まっていたときは、欲しいものなんてほとんどなかった。大好きな本すらろくに買えないこともあった。あたらしく買った服を着て外を歩くだけでなんだか特別な気持ちになるようなささやかさを、最近になってようやく思い出せた気がしている。……そういうこともあって、ちょっと自分を甘やかしてしまっているんだろう。
まだ手にしていないものというのは曖昧な存在であるはずなのに、何だかとてもきらきらして見える。香水も指先の彩りも、まだ手にしていない素敵なものも、たぶん、そういう透明なところを愛している。もうちょっと落ち着いたら、ほしいものリストを見ながら本屋でゆったり散策するつもり。
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