信じていますサンタクロースを

・はじめに

 この話は、小さいお子さんや、まだサンタクロースを信じている方には適していません。

 そっとこのページを閉じてください。 

  一応、忠告をいたしましたので、ここからは自己判断ということでお願いします。

「ふざけんな。おい、おれの夢を返せよ」
「お前謝れ、土下座だ、土下座しろ!」
といった苦情は一切受け付けません。


1章 サンタクロース システム

 12月25日はクリスマス。
 たくさんの子どもたちが楽しみにしている日の
1つである。

 理由は、サンタクロースがやって来るからだ。
 サンタクロースとは、1年間一生懸命頑張った子どもたちに欲しいものをプレゼントしにやってくる陽気なおじさんのことだ。

 ほとんどの人間は、小さい時はその存在を信じるが、大人になるつれに、それがシステムだということに気付く。気付く年齢は人それぞれ違うのだが。

 僕がサンタクロースをシステムだと気付いたのは
小学校4年生の時。この年齢が早いのか遅いのかは分からないが、気付いたというよりかは、母にバラされたのだ。それも、クリスマスとはまったく関係のない時に……
 忘れ物をしたか何かで母に説教をされていた時に、母が怒りに任せてサンタクロースがいないと
言い放ったのだ。
 どうせなら、もっと別の方法で気付きたかった。

 小学校4年生ともなると、同期たちの中にも、チラホラとサンタクロースがシステムであると気付いたものもいた。だがこの時点ではまだクラス100%が気付いたわけではないので、気付いたものは必死に気付いていないものに気を使って、サンタクロースはいる風に、振る舞っていた。小学4年生ながらに気を遣っていたのだ。

 ……小学校はまだいい。
 秘密を共有できる仲間が何人かいるから。
 しかし、僕の場合、問題は家である。

 家には2歳年の離れた弟がいる。
 弟はまだ小学2年生なので、サンタクロースがシステムだということに気付くのは早すぎる。僕のせいで僕より2年も早く気づいてしまうのは可哀想すぎる。

 だから僕は家でも、サンタクロースがシステムだと分かってはいたが、信じているフリをしなければならなかったのだ。この時ばかりは、僕にサンタクロースの正体をバラした母の目をまともに見れなかった。

 それが先に生まれたものの使命なのかも知れない……

 そんな弟もその3年後くらいにサンタクロースがシステムだとようやく気付いたようだ。彼は小学5年生の時みたいだったけど。
 いったい、どのように気付いたかは分からないが……

 弟がシステムだと気づいた翌年のクリスマスからは、親から直接プレゼントをもらうパターンになった。このパターンになると厄介なことが1つ。

 サンタクロースシステムの時は、成績がよくなくっても、あんまりいい子じゃなかったとしても、希望通りのプレゼントが届いていたが、このパターンになると、成績や態度がよくないと、場合によっては好みのプレゼントを買ってもらえない。ワンランク下げたプレゼントや、意図していない物がプレゼントになったりする。

2 章 子どもが生まれた際に

 今は、子どもがいない僕であるが、子どもが生まれた際に、このサンタクロースシステムについて心配なことがある。

 それは、サンタクロースシステムを開始するタイミングと終了を伝えるタイミングだ。

 僕が思うに、サンタクロースがシステムだったという内容は、
「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるわけではなく、お父さんとお母さんがアレコレして出来る」
という事実と同じくらい知るタイミングが重要だと思う。

 開始するタイミングが遅れると……
「どうして家にはサンタクロースが来ないんだ!」
と可哀想な思いをさせてしまうことになるだろう。    
 場合によっては、これが原因で、我が子がグレてしまうかもしれない。

 反対に、開始するタイミングが早すぎると……
「サンタクロース何それ?」
 と我が子が幼きながらに中二病のレッテルを貼られてしまい、周りから浮いてしまうだろう。
 場合によっては、これが原因で、我が子は幼稚な人間に育ってしまうかもしれない。

 終了のタイミングについては、子どもが自分自身で自然に気付いてくれれば理想的だが、僕の子だ。   
 勘が鈍い子が生まれる可能性がある。その場合、開始と同じように、終了も僕が教えなければならない。

 終了を伝えるタイミング。
 これが早すぎると、
「けっ、サンタなんていねーのかよ。」
と我が子が冷めた人間になる恐れがある。

 反対に、終了を伝えるタイミングが遅すぎると、
「お前まだサンタクロース信じてんのかよ!」
と馬鹿にされてしまう恐れがある。
 友だちからサンタクロースシステムについて教えられるのはあまりにも不幸だ。

 おそらく、その現実を受け入れることが出来ない。大人になってもサンタクロースを信じている人は恐らくこのタイプだろう。

 日々、こんなことばかり考えてしまい、不安でしょうがない。サンタクロースシステムは、親が教える責任があると思う。
 しかし、どのタイミングで、どのように伝えるのが適切なのか?

 周囲の友人にこんなアンケートを取った。
「サンタクロースがシステムだと知った年齢はいつですか?」

 その結果、9歳~10歳と答えた人が14人と一番多かった。その次が11歳~12歳。

 この結果により1つの基準として、
『小学4年生』『小学5年生』。
 この2期間の間には、サンタクロースがシステムだということを知っておいた方がいいと。

 中学生になっても
「今年はサンタさんに何頼む?」
なんて会話をしていると馬鹿にされるもしくは
引かれる。
 
 サンタクロースがシステムだと気付くことは、
大人になるための一歩なのかも知れない……

 これで、サンタクロースがシステムだということを教えるタイミングは、小学4年生が適切だということは分かった。

 あとは伝え方。
 どのように伝え方がよいのか?

 ゆっくりと時間を使い、順をおって説明する
のがよいのか。僕のように説教の途中であっさりと短めに言うのがよいのか。
 どちらも上手くやれる自信はないが……

 一応、僕なりに、考えた方法が1つだけある。
 4年生のクリスマスにプレゼントとともに1枚の手紙を置いておく。
 その手紙には、今まで欺いていたことに対する謝罪を一通りした後、サンタクロースがシステムだったことを説明し、来年からサンタクロースは来ないことを伝える。頑張りによっては、父母からプレゼントを貰える可能性があることも書いて。

 そして、手紙の最後に、
「このことについての疑問があったとしても、自分の胸のなかに止めておいてほしい」

 こうすれば、難しい質問をされることもないので
答える必要もないのでは。

 ただ、息子が手紙を読み終えたあとに平然を装えるかは心配ではあるが。

 今のうちに願っておこう。
 その時がきた時にどうか息子が黙って理解してくれますように。

 生まれるのが、勝手に息子だと決めつけていたけど、ごめん、娘かもしれない。
 男の子と女の子。それによってそれぞれ感覚が違うだろう。

 例えば、男の子だと
「うんこ」「おちんちん」という単語を物凄く面白いと思うだろうが、女の子はそれを不快だと思うかもしれない。

 無論、それだけではなく、
男の子と女の子によってサンタクロース
にお願いするプレゼントも変わってくるだろう。

 男の子は、ゲームや合体ロボのおもちゃなど、女の子なら、何とかちゃん人形とかぬいぐるみとか
かわいい系とか。

 サンタクロースに頼むプレゼントに値段の上限があるのか分からないがわりと、男の子の方が得していると思う。

 女の子ならなあ……
 20歳くらいの女の子が
「サンタクロースはいるもん」
と言っていたらそれはピュアで可愛い。
プラスポイントだ。

 逆に、
 20歳くらいの男の子が
「サンタクロースはいるぜぇ~」
と言っていたらそれは中二病っぽく見えてカッコ悪い。マイナスポイントだ。

 だとしたらだ。女の子なら、サンタクロースの存在を明かさない方がいいのかも。

 少し話を戻すが、
サンタクロースのプレゼントに値段の上限がない。

 上限はないのは困るなあ。
 ここは我が家では上限を新たなルールとして加えることがいいのかもしれない。

「サンタさんは全国の子供たち1人1人にプレゼントを配らなければならないから1人8000円までのプレゼントにしなければならないって決まっているんだ。もし、そのなかにサンタさんのことを思う優しい子がいたら、プレゼントのお金を3000円にしてあげて欲しい。そしたらサンタさんの負担は減るから。」

 よし、これがいい。我ながら名案だ。
これなら、
「新しい家が欲しい」といった無理難題なプレゼントをせがまれることはないだろう。
 なおかつ、人を思いやる優しい子が育ってくれるかもしれない。人を思いやることは大人になってもなかなかできないものだ。思いやることが出来る人は立派だからな。

3章 ある教育学者の話

 先ほどまで、サンタクロースはシステムで、サンタクロースは実際に存在しないと述べてきたが、ある教育学者はこんな定説を唱えていた。
「サンタクロースは確かに大半は、母または父が代わりにやっている。しかし、サンタクロースはいないわけではなく、世界中で選ばれた数人にだけプレゼントを渡す。選ばれる子は少ないため、選ばれなかった子には代わりに両親がプレゼントをする」

 この定説がもし本当ならまた、話は変わってくる。サンタクロースは実在しないと思っていた僕だが、それはただ、運が悪くサンタクロースから選ばれなかっただけ。ということになる。

 サンタクロースに選ばれていれば、僕は本物のサンタクロースに会えていたことになる。

 この定説を聞いて僕はあることを思い出した。

 実際に僕が小学4年の頃、小学校でこのような噂が流れていた。
「修君、サンタにプレゼントを貰ったのに親にもクリスマスプレゼントを買ってもらったらしいよ」

「は……?」
 これは二重受け取りになるのではないだろうか?
ちょうど、サンタクロースシステムに気づき始めた頃だったから僕はこのことに敏感に反応した。

 サンタクロースは両親なはずなのに、両親からプレゼントを貰う?

今までこのことについてずっとこの事が腑に落ちなかったが、修君は実はラッキーボーイで、実際に本物のサンタクロースからプレゼントを貰えたのかもしれない。
 両親もまさか、我が子がサンタクロースから選ばれるとは思っておらず、プレゼントを準備したので、結果的にプレゼントが2個届くこととなったのだろう。

 修君とは、もう何年もあっていないし、連絡先も知らないので真相は分からない。どこかで会ったらぜひ聞いてみたいことが3つある。

 修君は、実際に本物のサンタクロースにあったのか?
 本物のサンタクロースからのプレゼントにはどのような包装をされていたのか?
「このことは他言厳禁」と秘密のお手紙のような
ものは入っていたのか?

修くんよ、この小説を読んでいてくれてたら僕だよ僕、小学校4年生の時に君の真後ろに座っていた僕に、連絡をください。

 いや、修君だけじゃなくとも本物のサンタクロースに会ったことがある人はぜび話を聞かせて欲しい。

4章 サンタクロースについて

 ある教育学者の言うとおりサンタクロースが本当にいたとするなら、そのサンタクロースについてもう少しだけ探ってみたいことがある。

 サンタクロースは何人いるのか?
 そもそも人という数え方があっているのか?

 妖精とするならば、1匹、2匹だし、神様と崇めるなら、1柱とするのがいいのかもしれない。

 サンタクロースは、いったい何人いるのか?

 1人だと、1年にプレゼントを貰える子どもの数が限られてくる。下手すると、今年はアメリカ、来年は日本、再来年はインドと年度ごとに行く国を縛る必要があるだろうし。

 だからといって5万人もいるわけはないと思う。
 そこまで大人数のサンタクロースが入れば、もう少し目撃情報が出ていてもおかしくないはず。

 となれば、1か国に1サンタといったところだろうか?

 次に気になるのは、サンタクロースは、給与を貰っているのか、ボランティアでやっているのかという問題。
 
 もし、給与を貰えるというのなら、いくらくらい貰えるものなのだろうか?

 だとしても寒い中、プレゼントを届けにいくのだからな。過酷な労働ではあるだろうし、時間との勝負だし。
 おそらくサンタクロースが活動できるのは、
「1時~3時30分」までの約2時間半。

 サンタクロースシステムであれば、子どもを寝かせてしまえば、何時でも行動することが出来るが、本物のサンタクロースは親にもばれてはいけないだろうから、それくらいの時間くらいから行動するしかないだろう。

 2時間半でいくら貰えるのだろうか?
 時給1200円+深夜手当をつけて、5000円。
 安すぎる。それでは少なくとも僕は引き受けない。

 ノルマ制で、1プレゼントを配るごとに、8000円貰える。20個プレゼントを配ることが出来れば、
16万円。これなら文句は出ないだろうけど、少しでも金を稼ぎたいサンタクロースはプレゼントする個数だけ稼ぎたいために、プレゼントを配る子を選考する際に、アパートやマンションに住む子どもばかりが選ばれてしまい、一軒家にすんでいる子たちはワクワク出来ない。

 やはり、日給一律 16万円と定められており、
プレゼントを配る場所とプレゼントの種類も予め決められているのかもしれない。だとしたら、もはやサンタクロースではなく、ただの宅配ドライバーになりそうだが。

 サンタクロースはよく、「完全年休364日」とか「ほぼニート」とか言われるため、サンタクロースは1日しか働かないと勝手に決め付け、給与を予想したが、これ自体が間違っているのかもしれない。

 サンタクロースも、実は年中出勤しているかもしれない。だって、仕事はたくさんあるはずさ。
 1~3月は休みだとしても、4月からは、長い長い選考会が始まる。
「今年は誰にプレゼントを渡そうか。」
 この月からはたくさんの子供たちを観察しなければならない。一番頑張っている子はどの子か?

 7月には、中間選考会に進める合格者を決める
。ここで、8割方の子供たちを落選させるため、慎重に選ぶ必要がある。ここで、落とされた子どもたちも十分頑張っているとは思うが。

 季節が秋に変わった9月。いよいよ最終選考が開かれる。ここで、今年はどの子たちにプレゼントを
配るかが決まる。

 配ること子が決まった10月。その子たちは何を欲しがっているのかを察する必要がある。直接聞くことが出来ないし、超能力が使われるわけでもない。
全神経を注がなければならない。

 11月 この時期になると、プレゼントの用意に取りかかる。サンタクロースなのに希望通りのプレゼントを届けられないと、サンタクロースてこんなもんかとガッカリされてしまう。
 
 そしてあっという間に12月。場所やプレゼントに間違いがないかの最終確認をして24日まで待つ。それと平行してトナカイの体調管理。当日トナカイが倒れたら、足が無くなる。

 こうしてみてみると、サンタクロースも年中忙しいもんだな。
 だとしたらやはりそれ相当の給与をもらって
いないと納得できないなあ。
 これが給与がでないのだとしたらやってられない。だって「タダ働き」どころか、プレゼントを買ったり、トナカイのエサ代など出費がたくさんあるから「マイナス」だ。

5章 サンタクロース様お願いがあります

 もし、サンタクロース様が本当にいるのならば、システムなんていってすみませんでした。
 少しでも多くの子どもに夢を与えるために自分の身を削っていて素晴らしいです。
 僕らオモチャ業界が、12月にウハウハ出来るのは、あなたの存在があるからだと思います。

 ありがとうございます
 お疲れ様です、本当にお疲れ様です。
 貴方には頭が上がりません。貴方には足を向けて眠れません。

 様々な子どもたちにたくさんのプレゼントをされていて、素晴らしいと思います。尊敬です尊敬しかありません。
 
 そこで、1つご相談なのですが、私にもプレゼントを頂けないでしょうか?

 ここに、1枚の宝くじがあります。 
 番号は、「137組139290番」です。

 僕は、物はいらないので、僕の宝くじが当たるようにどうか小細工をしてください。

 1等なんて贅沢は言いません。前後賞、いや2等かくらいでいいのでよろしくお願いします。

 もしくは、人気女優Mに会わせてください。付き合いたいとか結婚したいとかそんな贅沢も言いません。ただ会うことができればいいんです。
 
 もしこれで、僕の願いが叶うようであれば、サンタクロースは存在する。

 しかし、当たらなければ、やっぱり
 サンタクロースはシステムだ!

 〈了〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?