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いぬのはなし その1

いぬはかわいい。

驚くほどかわいい瞬間が毎日必ずあるすごい生き物だ。

今でこそ、生活の一部になり、なくてはならない存在だが、人生でいぬと暮らすのは初めてだったので、飼い始めた当初は、ほんとうにほんとうに大変な思いをした。

はじめて家にきたいぬは、ちいさくてふにゃふにゃでかたいところがひとつもなかった。

はじめの一ヶ月はお世話が大変すぎて、正直なところ、まだ早かったかもしれない、甘く見すぎていたかもしれないと後悔していた。諦めかけてもいた。挫けそうになった。

でも、目の前にいるのはいのちだから、我々にいろんなことを要求してくるいのちだから、頑張れた。

子犬というのは一瞬でおおきくなる。まいにちまいにちおおきくなった。

たくさんうんちを踏んで、おしっこも踏んで、洗われて、ごはんをたべて、おおきくなった。その姿をみていた。


いぬのよいところはたくさんあるが、一番と言ってもよいくらいなのは、言葉を話さないところだと思う。
言葉を話さないからといって、何もわからないわけではないのもよい。

はっきりから、なんとなくまで幅はあるけれど、わかる。そのとき思っている気持ちのみで満たされた表情でこちらを見てくる。


こちらがいつどんな状況であれ、変わらぬ態度をとってくれるのもよい。元気でも、そうでなくても、変わらず。そのおかげで、元気でも、そうでなくても、わたしなんだと思い知らされる。そのことが、どれほど嬉しいことか。

飼い主の体調を受け入れているとか、励ましているとかではなく、関係がないのだ。調子がよかろうが悪かろうが、飼い主なのだ。飼い主だから、撫でてほしいし、遊んでほしいだけ。

撫でることは、元気がないときにもできることのひとつだったので、喜んでそばにいた。


ほんとうは、いぬと夫と、3人で一緒に死にたい。

でもきっとそれは叶わない。

確かなのは、いぬが、夫が、わたしの人生を素晴らしい時間にしてくれていること。

そしてわたしが、いぬと、夫の人生も、すこしでも良いものにできているといいなと思う。



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