要約:「超AI時代の生存戦略」 落合陽一
前章
・ここ数十年間で起きてきた技術的な進歩について、私たちは好意的に捉えてきた。しかしAIが登場しシンギュラリティの気配が近づいた今、それに対する私たちの眼差しは好意的なものから恐怖を帯びたものに変化しつつある。
「次に仕事を奪われるのは私なのではないか?」
・AIと人間を差別化するものとして「クリエイティビティ」というものがよくうたわれる。しかし社会の構図は「機械 対 人間」ではなく「人間 対 機械親和性の高い人間」に変化すると想定したならば、そこに「クリエイティブに生きる」なんてあやふやな結論は存在せず、機械親和性を持つか持たないかがポイントになる。
第1章:超AI時代の「生き方」
・グローバル化が極度に進んだこの世界で「自分らしくある」ことは難しい。しかしあえて世界を狭めてみると、「自分らしさ」を定義するのは容易だ。自分らしさを求めるならば、コミュニティを決めることが重要なのかもしれない。
・ワークアズライフの考え方の中では、役割を分担をするということがキーワードだ。普通のタクシーの運転手は顧客を得るという責任と顧客を移送するというサービスを担うが、Uberの運転手は後者しか持たない。負わなければいけない責任(するべき仕事の種類)が少ないことは、ストレスフリーなワークスタイルを形成する。
・趣味性は肉体に紐づいたフェチズムであり個性の裏返しだ。趣味的でないものはシンギュラリティ化していく合理性に吸収され尽くすだろう。
・人生には報酬が必要である。報酬は「ギャンブル的報酬」「コレクション的報酬」「快感的報酬」に大別できる。自分の行動により、何の報酬が、どれだけ得られるのか。報酬をデザインすることは重要である。
第2章:超AI時代の「働き方」
・今24歳の人が大学9年間を費やして学んだことが、今では15歳が3日間で習得できたりする。前者にとっての9年間という時間が、あっという間にコモディテ化したのだ。時代より進捗の遅い学びは無駄となる。
・ウィキペディアを調べれば十分な知識というものは、持っていてもあまり意味がない。ただし、すぐに検索できる程度の知識は持っておかなければならない。知識に対してざっくりフックがかかっているような状態、これがこれからの時代に理想的な知識の持ち方だと思う。
・スペシャリストであることはこれから前提となる。スペシャリストでありかつジェネラリストであるのがもっとも良いが、単なるジェネラリストにこれから価値はなくなる。
・何らかの分野で1位になる、ニッチを制するということは非常に価値がある。それは、民主主義社会をハックするためのアクセス権となる。
第3章:超AI時代の「生活習慣」
・仕事で溜まったストレスを仕事以外のことで発散するのは最善ではない。理想的なのは、仕事の中でストレスから解放されるということだ。
・世の中は化粧品をはじめ、コンプレックスビジネスに溢れている。何が自分にとってのコンプレックスなのか、それを把握することはキーワードとなる。
・自分が帰属しているコミュニティの友達は仕事にも直結する。これを友達と分けて考えるのは、インターネット時代の特徴と言える。
・お金を使う時には「投資」という概念があった方が良い。それは株式投資などの狭義の意味ではなく、自己投資や他者投資などを指す。貯金としてプールしたお金に増減は発生しない。
//肯定
自分らしくあるために、楽しく仕事をするために、そんなチープなテーマも落合陽一の手にかかれば、全く違う料理になる。彼が出した答えを聞き流すことができないのは、彼が一つの分野のトップオブトップであり、彼の言葉を借りるならば「社会ハックへのアクセス権」を持っているからだろう。
//批判
これからの時代で優秀である全体がスペシャリストであることだと氏は述べ、その条件として一つの領域におけるトップになることを挙げる。しかしそれは難度が高すぎはしないか。優秀の定義としてそれを挙げるならば了解できる。しかしそれがスタンダードになる未来は、来ないと思う。
//所感
あらゆる技術がブラックボックス化した今、それを駆使する人々の言葉は魔法使いのそれと同じだ。プログラム一つで社会を塗り替える魔法使い。未知の魔法を前にして動けなくなっている私たちに向かって、彼らはいうのだ。「AIがあなたの仕事を奪う」
この恐怖に立ち向かうためにはどうしたらいいのか。魔法使いが指差す方向に逃げればいいのか。魔法使いを殺せばいいのか。
そんな魔法溢れる社会における哲学書、本書についてはそんな印象をもった。別に魔法に対抗する手段を教えてくれている訳でもなく魔法を教えてくれている訳でもない。ただこの本が教えてくれるのはそれらよりももっと大事な、「この社会で生きていくための方法」だ。
私たちは社会に、意識的に適応していかなければならない。哲学を片手に。
//メモ
・一人一人が責任を感じるのはせいぜい30人くらいまでのコミュニティだと言われている。
・趣味性を持っておかないと、何かをしようという原動力は生まれにくい。
・自分の報酬がわかっているか?
・時代の速度より遅い進捗は、いくらやってもゼロになる。
思考の剝片を綴っています。 応援していただけると、剥がれ落ちるスピードが上がること請負いです。