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思いつき1場面物語~ざわめき


スポットライトの熱。観衆の歓声。ざわめきが裏の世界まで届く。

「すごい人気だね」

「本当、なにがそんなにいいのかしら?」

「僕らには解らない何かさ」

小さなネズミ達は口々に思った事を言い合う。そんな会話になんの意味も無い。それでも、その時思った事は音にされて舞台裏の狭い通路に小さく響いた。

「もう、お喋りしてないで手を動かしてよ」

「そうだよ、怒られちゃうよ」

「そうね、何より食いっぱぐれるわ」

中くらいのネズミ達が口々に小さなネズミ達を窘める。ネズミ達の手には各々ノコギリが握られている。足元の木屑が木材を切っていることを物語っている。

「わかってるよ」

「ちゃんとやるよ」

「ご飯は大切」

小さなネズミ達は特に反抗するわけでもなく口々に中くらいのネズミ達に答えた。後はノコギリを押し引きする音が響くのみ。

ステージの上では美しい歌姫が観衆に手を振りパフォーマンス。会場の熱気は最高潮というところ。舞台裏のネズミ達にもそれは伝わってくる。

「本当、騒がしいのね」
 
「綺麗な服だったよ」

「お腹の足しにはならないじゃない」

「でも仕事にはなったよ」

何人かのネズミ達がお喋りをする。会場で一体になれるファンでもなければ、歌姫の素敵な歌声も店で流れ続ける有線と同じだ。なんなら、少し耳障りに思うくらいだ。聞こえのいい言葉が、聞こえのいい音に乗せられ、踊っている。踊らされている。

『もう切り終わる?』

ネズミ達の耳に、歌姫でも観衆でもない声が聞こえた。

「もうすぐだよ」

ネズミ達の中の一人がその声に答えた。

『そっか。頑張って。帰ってきたら皆でご飯を食べよう』

声の主は平坦な喋り方でそういった。感情の読み取れない声だった。

「うん、わかった。あと少しで帰るね」

ネズミも同じように声に表情は乗らない。平坦な、のっぺりとしたお喋りが舞台裏でノコギリの音と混ざり合っていた。
必要な箇所を切り終え、ネズミ達はそれぞれロープを括り付けた。皆、貼り付けたような笑顔で頷きあう。

「さて、、、これをこうして」


歓声が悲鳴と怒号に変わったその日、街行く人達のうち数人は走り抜けるネズミ達を見ていた。
正確にはネズミの形をもしたフードを目深にかぶる子供達の姿を見ていた。
楽しそうに走り抜ける、お揃いの衣装の子供達がその後街を混乱に落とすことなど、その時は誰も思いもしなかった。

____________________________『ネズミの王は虎視眈々と』

布団の中で思いついたままに1場面書きました。自分でもよくわからない。彼らはこの後なにをするつもりなんだろう。でも、きっと、世の中の正義とは違うんですよ。けれど、彼らの正義をただ信じるんですよ。世の中の正義、または彼らと正反対の正義は如何動くんだろう?

たまに思いついたままに1場面物語を書きます。
読んでくれて有難うございます。
普段は雑な何かを書いてます。
物語も雑なんですけどね。笑

まぁ今日はこの辺で。

おやすみなさい。あなたの夜か朝かは解らないけれど、それが良いものだといいなぁと思いながら眠ります。



サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。