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自分の役割

私が初めて社会人になったときH部長という方が居た。

彼は身長が低くいかにも好好爺な雰囲気を持った人だった。
直属の上司は名前も思い出せない課長が居たが、彼から何を学んだのかは正直思い出せない。だがH部長のことは20年以上たった今でもふと思い出す。

私の大学卒業の時期は俗にいう「失われた10年」と言われるものに見事にかぶっていた。
いわゆる就職難である。そんななか私はまずは「営業力」ってものはどこに行っても役に立つと考えていました。
コミュニケーション能力自分を売り込む能力数字を上げる達成感、何より高卒で某会社に入った同級生がバシバシ商品売って歩合で結構な額の給料を貰っているいのを見ていました。そこでよくある住宅リフォームの訪問販売会社の求人に応募し就職した。
研修を終え、支店に配属、私の住んでいた近所の支店に配属されました。

配属された支店は本当にどうしょうもない支店で先輩営業マンは営業と称しパチンコ屋に入り浸っているような本当にダメダメな人たちでした(笑)
その支店に私を含め新人3名、少し前に赴任したH部長、支店長1名、ダメダメ営業マン5名、それと営業事務のお姉さんが2名だったかな。そもそも支店に支店長居るのに部長職が居るのは不思議なのだがどうも本社席のままこっちに来ていたみたいだった。

今思えば実直で真面目な新人3名にテコ入れの本社組のH部長。支店の立て直しに躍起だったのかもしれない。
そんな中で旧軍的な体育会系のノリで1日2時間3クール毎日営業周り。成果が無ければ追加で2時間追加の4クール目をてくてく一日中歩いて個人宅を行脚する。
そうこうしていると本社から営業管理部門の社員(要は監査である)が来るようになり私の後も一日だけ付いて回った。
一日で終わったってことは私に問題なかったのだろう。その当時大卒のペーペー。言葉使いや所作は大学時代のサービス業のバイトで出来上がってはいた。
だが話術やクロージング力なんて勿論まだまだ未熟だ。
ただ実直に歩いて訪問し続けた。そのうち営業所の存続の話が出始める。

「今月シーリング達成できないと閉鎖かもしれない…」

そんな暗い話が見え隠れする。そんな月の頭、不在者宅に入れておいたポスティングのチラシから問い合わせがある。私が入れたチラシだった。

「真面目にポスティングしてれば来る事もあるってあいつらも分かればな…」

ぼそっと好々爺の顔のままH部長が呟いていたのを今でも覚えている。
結局H部長がクロージングに行ってくれ、その案件は私の売り上げになった。入社3か月目初の売り上げだった。

そうこうしているとその月の末だったか、大きな案件が私の訪問先から舞い込む。2月分の支店シーリングに匹敵する額。中古物件買って丸々改装できそうな金額だ。その時H部長が私を初めて昼飯に誘ってくれた。飯を食って昼からの訪問に備えていると

「なぁ七節?今回のあの案件、支店を生かすのに使うがいいか?」

正直最初私は何を、言われているのか理解できなかった。
かいつまんで話すとこんな感じだ。

・シーリングを達成できなければ支店が無くなる
・限界まで値を下げてでも取りに行きたい
・営業の歩合は無くなるまで交渉で使いたい

私はなんだかんだで、あの会社が好きだった。
別に給料も基本給で生活的には問題なかった。毎日色んな発見があったし、なるほど、と思うことが日々あった。

「H部長。部長がやりたいようにやって頂いて問題ありません。」

H部長は好々爺の顔で笑っていた。

H部長は義理を通しただけだったのかもしれない。歩合が売りの営業職に歩合が無いって今思えば「そりゃないよ」なのかも知れないがあの当時の私はそれで良いと思っていた。
結局その案件、工事規模は少し小さくなりはしたが決まった。心ばかり歩合は付いた。支店長賞という寸志程度の形だったが(笑)
あれそういえば現金支給だったのだが支店長のポケットマネーだったのではないだろうか…

そしてボチボチ私自身も契約が自分でとれるようになる。部長がクロージングを教えてくれた。毎日楽しかったが支店の売り上げはシーリング行く月もあったが芳しくはなかった。
一緒に入った新人は半年と立たずに飛んだ。訪販営業なんてそんなものらしい。新人が来るがやはり飛ぶ。早いと三日で飛ぶ。ダメ先輩も5人いたのが3人まで減っていた。今思えば恐ろしい世界である。それでも田舎で月収固定25万+歩合は大きい。新人はすぐ飛ぶが毎月のように来た(笑)
8か月目くらいだろうかH部長が一回本社に戻った。

そして運命の日が来る。

駄目営業たちがほんとに契約取れないからガチの内部調査が入ってしまったのだ。
そして営業に行かずパチンコしていたことがばれる。全員辞めた。残ったのは1年に届くか届かない私と支店長と新人が1名。
支店も立ち行かないので閉鎖と相成った。私に提示されたのは3つの道

・希望の支店(地元の県にもあった)へ移動する
・H部長の口利きでH部長がいる本社へ
・退職

H部長が「一緒に来んか?」と言ってくれたのは非常にうれしかった。ちょっと悩みもしたのだが結局私は退職した。一生住宅リフォームの訪問販売をやるつもりはなかった。
その当時まだ23歳。夢も希望もまだまだいけるとこもたくさんあると思っていた。
これで私の住宅リフォームの訪問営業販売のお話は終わりである

さて?今回のノートは会社の中での自分の役割について役職とは本来どのようなロールを行うのかを踏まえて考えてみたい。

ざっくり組織で考えると
・社長
・取締役
・部長
・課長
・それ以下(主任・係長・班長・ヒラ)

こんな感じかな?

さて社長や取締役は戦略レベルでものを考えます。次に部長職は戦略を作戦化します。そして課長は戦術としてその作戦を運用し、実働をそれ以下とともに行います
会社によって多少違いかもしれませんが概ねそんなところ。

私がいた会社では本社は

「売上を上げろ」

と言っていたのでしょう。

現場に出てきたH部長は売り上げる作戦を立てて部下を管理しつつ指令を出す。しかし下が育ってなかったのでクロージングは受け持っていたのでしょう。そして支店を生かすためにマネージメントを含めて私をフォローして支店の為に案件を使うと選択されたのでしょう。部長以上は原則会社側の立ち位置なのです。

よく「部長が優秀なら、部長が自分で働けばいいのに」という人がよくいますが、それは部長の役割をよく分かってないです。部長はあくまで指示を出す役割で、その指示をもとに実行するのが部下の役割です。つまり課長以下のお話ですね

ここが「部長が何しているかわからない」って現場で聞く話の原因でしょうね
部長がやるのは実務ではなく指示出しとマネージメントです。

そして課長以下、本来は課長が部下を率い作戦行動を行うべきなのですがその課長が機能してないので致し方ないですね。そして私は兵隊として実直に動いた感じですかね。

担っている業務が違う以上役職によってロールは違うのです。意外と知らない人が多いですけどね。

自分の立ち位置が何を会社に求められているのか?
これは常に会社も教育しなければなりませんが予備知識として働くうえではもっていないといけないのではないなと良く思います。

貴方の立ち位置はどうですか?ロール上手くできていますか?
この昔語りのノートが皆様の何かの足しになったなら幸いです。

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