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中国にとってのミャンマーのクーデターは、「軍事力で国民を服従させて、治安を維持する事が正しい」という、中国の本音を暴露して、ワクチン外交などでの「中国は大人」というお芝居を台無しにする災難です。●対ミャンマー、米アジア戦略の試金石 民主主義重視のバイデン外交


 ミャンマー国軍によるクーデターへの対応は、バイデン米政権のアジア戦略の試金石になる。国際協調を掲げ、民主主義の価値を重視するバイデン大統領が事態収拾に向けて指導力を発揮できなければ、ミャンマー軍政を中国との関係強化の方向に追いやってしまう可能性もあるからだ。
国軍クーデターと認定 対ミャンマー援助制限―米
 バイデン氏は1日の声明で、ミャンマー国軍による権力掌握やアウン・サン・スー・チー国家顧問らの拘束を「民主化移行と法の支配への直接攻撃だ」と非難。制裁復活を辞さないと警告した。ミャンマーの民主化は、バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権の外交成果の一つだったが、予期せぬ形で「逆戻り」に直面することになった。
国務省は2日、事態を正式に「クーデター」と認定したと発表。ミャンマーに対する支援を制限することになる。政権内では、クーデターに関与した国軍関係者らへの制裁も検討している。ただ、国務省でアジアや人権問題を統括する次官補らがまだ決まっていない中で危機対応を強いられ、「政権内はカオス」状態だという。
バイデン政権は、権威主義体制を強化する中国と対抗する上で「自由で開かれたインド太平洋地域」を重視し、同地域で法の支配や民主主義の価値観を推進する構え。だが、民主主義の理念を追求するあまり、ミャンマーへの圧力を強めれば、同国が中国への接近を再び強めかねないと懸念する声も上がっている。
ミャンマー軍政は過去、国際的に「孤立」する中で中国の経済支援に依存していた時代がある。
バイデン氏は声明で、国軍の権力放棄や拘束された人々の解放に向け、「国際社会は声を一つにして団結すべきだ」と呼び掛けた。バイデン政権は既に欧州やアジアの同盟国と「集中的な協議」を開始しているという。
一方、国連安全保障理事会は2日午前(日本時間3日未明)、オンラインで非公開会合を開き、ミャンマー情勢を協議。拒否権を持つ中国はクーデターへの非難を避けており、安保理として一致した行動が取れるかは不透明だ。
●ミャンマーめぐり安保理、声明など出せず
2/3(水) 6:04配信【日本テレビ】
国連の安全保障理事会は2日、ミャンマー軍によるクーデターに関する緊急会合を開きましたが、安保理全体としての声明などは出せませんでした。
ニューヨークの国連本部前でミャンマー系住民らがクーデターに抗議の声を上げる中、安保理の緊急会合はオンラインで開かれました。 終了後、議長であるイギリスの国連大使は、「今後も議論を続ける」とした上で、「安保理として一つの声を出せるよう願う」と述べるにとどまりました。
関係者によりますと、クーデターを非難し拘束された人の解放を求める報道声明を出すことが検討されていたものの、中国などが非難を避ける中、安保理内で足並みはそろわず、見送りとなったということです。
一方、アメリカ国務省は、今回の事態を「クーデターと認定する」と発表し、現在行っているミャンマー政府への援助を、少数民族のロヒンギャなどへの人道支援を除いて、見直す方針を示しました。
●「ミャンマーの混乱は民主主義の犠牲」中国紙が論評
2/2(火) 18:17配信【テレビ朝日】 
中国共産党系のメディアはミャンマーで起きたクーデターについて「民主化の挫折」という見方を示し、民主主義の導入が原因だと主張しました。  
中国共産党系の「環球時報」は社説で、ミャンマーの非常事態宣言を受けて「称賛されてきたミャンマーの民主化は挫折した」という見方を示しました。  
さらに、「西側諸国は民主主義をアピールするが、ミャンマーの失敗は民主主義を受け入れたために払った犠牲というべきだ」と主張しました。
【引用終わり】
 中国にとっては、(本音の所は親中派の)バイデン氏が米国大統領に就任したので、時間をかけて(うまいこと言って)関係改善しようとしていたのに、とんでもない災難が降ってわいたという所だと思います。
 今回のミャンマーのクーデターに対して、バイデン新大統領は毅然としてミャンマー軍を批判するしかありません。
 一方中国は、ミャンマー軍を擁護するしかありません。
バイデン大統領は、米国リベラル派が言って欲しい事をいわねばなりません。中国共産党は人民解放軍が言って欲しい事をいわねばなりません。
米中双方とも、自分の支持者を裏切れば自分の政権基盤が揺らいでしまうからです。
ですから、バイデン大統領が就任して、気候変動などで協力する振りをしながら、米国内の反中世論を鎮静化させるという中国の希望は一気に後退しました。当面実現に向けて動くことはできなくなりました。
いわば、バイデン・習近平関係は、(仲良くしたいのに、支持者が許してくれないから仲良くできなかった)トランプ・プーチン関係と同じになる可能性が強くなりました。
また、このミャンマーのクーデターは、ASEANを結束をより遠くに追いやりました。ASEAN各国の反応を二分化させたからです。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の2月2日の報告を引用します。
●ミャンマーのクーデター、ASEAN各国の反応は二分化
2021年02月02日
2月1日にミャンマーで発生した国軍によるクーデターに対し、ASEAN各国の反応は、懸念を示すもの、内政問題としてコメントしないという反応に二分された。
シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムは懸念を表明
シンガポール外務省は「重大な懸念」を表明…
インドネシア外務省も「懸念」を表明…
マレーシア外務省はツイッター上で「深刻な懸念」を表明…
ベトナム外務省報道官は、記者会見において「状況を見守る」とした上で、「地域の平和、安定、協力のために状況を安定化させ、国を発展させてほしい」とした(ベトナムプラス2月1日)。
タイ、カンボジア、フィリピンは「内政問題」とコメント
一方、タイ副首相は、「ミャンマーの内政問題だ」としてさらなる言及を避けた(「バンコク・ポスト」紙2月1日)。
カンボジアのフン・セン首相も、内政問題として「状況を注視する」と述べるにとどまっている(「クメール・タイムズ」紙2月1日)。
フィリピンの大統領報道官は、内政問題のためコメントは控えるとした上で、「フィリピン政府の関心事項はミャンマーに滞在するフィリピン国民の安全だ」と述べるとともに、早期の正常化に期待するとした(政府通信社2月1日)。
ブルネイはASEAN議長国コメントを発表
ブルネイはASEAN議長国声明において、今後の状況を緊密に見守り、ミャンマー国民の意志と権益に沿って、対話、和解、そして正常な状態に戻るための働き掛けを行うとした。
さらに、本件は民主主義の原則や法の支配、人権保護や基本的自由の尊重などのASEAN憲章の目的・原則を想起させるものだとした上で、ASEAN加盟国の政治的安定は、ASEAN共同体の平和、安定、繁栄の実現のために欠かせないと強調した。
【引用終わり】
 私は「外交用語」には詳しくないのですが、中国メディアもミャンマー政変をクーデターと言わずに「内閣大改造」 と表現しているので、「内政問題だ」という言葉は、批判しないという事なのでしょう。また「懸念」という言葉は批判するという意味のようです。
 最も、私の観る所ではベトナムを批判派、フィリピンを批判しない派には安易に分けられない気もします。この両国のコメントは、後ろに中国を観ているからこそのような気がします。
 また、インドネシア・マレーシア・ブルネイはイスラム教国ですので、イスラム=ロヒンギャを迫害するミャンマー軍に良い心象は持っていないはずです。タイは自分もクーデターで政権をとった軍事政権なのでクーデターを批判するはずはありません。
 即ち、後ろに中国がいるミャンマーを、華僑国家シンガポールが批判した理由だけが、選挙結果を軍事力で覆すことに対する懸念のような気がします。
 現在中国は、国際的な中国批判を鎮静化するために、ワクチン外交をしています。気候変動でも(何にもしないけれど)いい顔だけはしていました。経済会議でも、綺麗ごとを並べていました。頑張って「中国は懐の深い大人だ」という芝居をしていたのです。
だから、中国にとってはミャンマーのクーデターは、災難なのだと思います。「軍事力による恐怖で国民を服従させて、治安を維持する事は正しい」という中国の本音を、婉曲にでも発言しなくてはならなくて、「懐の深い大人だ」の芝居が色あせてしまうからです。
さらに、軍事独裁国が国連の安全保障理事会で批判されたり、制裁されたりする事を止める「軍事独裁国の擁護者」として行動も求められました。
結果「やはり中国は、軍事独裁国だ」と、中国が自ら白日の下に暴露して、中国に騙されるのが得意で大好きでもある世界のリベラル系のマスコミや、(バイデン親大統領だけでなく)欧米のリベラル左派議員に、中国自身が冷や水を浴びせてしまったのでした。

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