ショートショート:『金』‐時と涙を超える魚
温い空気のせいかなのか
それとも 湿る瞳のせいなのか
かすんだ視界の片隅には
ぼんやりと浮かび上がる様々な色した まぁるい光玉。
子供がきゃっきゃとあげる声は
私の耳に入ることなく 高く 夏空の中に吸い込まれてゆく。
祭り通りを行き交う人を避けるように
私は一人 道を外れた所にある神社の石垣に
いつになっても曇りが晴れない視界を
ただただ受け入れながら 座っていた。
もうダメだ。
自分を繋ぎとめていた細い糸が小刻みに震え
無言の悲鳴を上げていた。
今までボロボロにな