心を軽くしてくれる!!おすすめ本紹介(よしもとばなな 江國香織)
こんにちは、ななです。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
実は最近、私自身環境が大きく変化しました。
けれども、仕事終わりに思いつきで友人と近所の川原で語り合ったり、ずっと気になっていた映画を一人で見に行ったり...そんなちょっとした「楽しい」出来事に背中を押されています。
このブログは最近、エッセイのようにつらつらと自分の感情を綴っていましたが...
久しぶりに皆さんに私が出会った素敵な本たちを共有したくなりました。
そう思ったのも、ずっとつけていた「読書ノート」を読み返してみた事がきっかけに。
最初は読んだ本の感想を綴っていこうと始めたこのノート。
今では本の中でときめいた言葉をただ単に書き留めるものになっているのですが...
自分がその時々で響いた言葉だけが詰まったそのノートはとても煌めいていて、読み返すだけで心が躍ったのです。
きっと「美しい」と思う言葉は人それぞれ異なると思うのです。
その人のこれまでの経験、出会い、境遇、その時の心情によって変わってくると思うのですが、私が感じた「美しい」を皆さんにも知ってほしい、率直にそう思ったのです。
人それぞれ感性が異なるからこそ、「この言葉自分も好きだな」「なんか違うな」と感じ方は様々だと思いますが、私の「好き」を、そして私を構成している言葉を知ってもらうという事は私自身を知ってもらう事でもあると思ったのです。
この記事が、皆さんが自分がどのようなものが好きで、そう思う理由は何なのか、どういった物が自分の感性に影響を与えているのか、改めて考えていただくきっかけになればいいなと思います。
前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのはよしもとばななさんの本と江國香織さんの本です。
ゆるっと見ていってくださいね。
★よしもとばななさんの「海のふた」
大好きすぎて3回も読み返しました。笑
この本の中で綴られる、一つひとつの文章が、言葉がとてもみずみずしく綺麗で、でもどこか切なくて...
描写の美しさと儚さが、丁寧に選び抜かれた言葉で綴られています。
主人公のまりちゃんは美大を卒業後、生まれ育った故郷に戻り、小さなかき氷屋を開きます。
そんなまりちゃんの元に様々な理由で心に大きな傷を抱えたはじめちゃんという一人の少女がやってきます。
これは、ふたりの少女の優しく、どこか儚いひと夏の物語です。
幼い頃、火事で顔に大きな火傷を負ったはじめちゃん。
男勝りでまりちゃんと、繊細なまりちゃんは全く異なるようで、共通しているのはきちんと自分の意志・考えを持っている事。自分が正しいと思う事を信じている事。
美しい海と、豊かな自然が溢れるまりちゃんの故郷、西伊豆。
この本ではそんな西伊豆の描写が細かく描かれていて、読むだけで太陽に反射してキラキラと輝く海が浮かび、潮のにおいがし、ゆったりとした時間が流れます。
そんなまりちゃんの故郷は、人間の手によって、少し前までそこにあったはずの自然が段々と消えていき、愛のないお金の使われ方のせいで、町の温かさや賑わいがなくなってしまっているという問題を抱えています。
そんな事実に不甲斐ない思いを抱くまりちゃん。
作中、こんな言葉が綴られています。
「外側から急に押し寄せてきたお金の流れは、町の人達がちょこっと考えたいろんなかわいい工夫や、小さく大切にしてきたことをどっと流してしまった」
それは、この本の著者であるよしもとばななさん自身の訴えである気がします。
これまで、この方の文章が大好きで何冊か手に取ってきましたが、私達の住む町がチェーン店や商業施設に囲まれ、「個性」や「愛」がなくなっていく事への違和感を何度か綴っているのを見かけました。
「変わっていく」事が間違えな訳ではないけれど、そこに寂しさを感じる作者の複雑な思いが、ひしひしと伝わってきます。
「実はいろんな事ってそんな確かなものじゃないって事に気づいたら苦しすぎるから、あまり考えないでいられるように神様は私たちをぼうっとさせる程度の年月はもつような体に作ってくれたのだろうか」
確かに、今見ている私の景色も、私を囲む人々も10年後、20年後、同じように存在しているとは限らない、その変化に気づいてしまった時、私はすんなりと受け入れる事が出来るのだろうか...そんな事を思いました。
私がこの本の中で最も大好きな文章。
「 人と人が出会うとき、ほんとうは顔なんか見ていないのだと思う。その人の芯のところを見ているのだ。雰囲気や、声や、匂いや…そういう全部を集めたものを感じとっているのだと思う 」
はじめちゃんと、まりちゃんが初めて出会うシーンで綴られている、この言葉。
きっとそれは、人に限らず、物や場所においても同じで、その人・物に対して感情を抱くとき、理屈では説明出来ない、本質的な部分を感じ取っているのではないか、この文章を読んでそんな事を思いました。
だから結局、心の内側から湧き出てくる感情に抗う事はすごく難しいのだと。
人が生きていく上で大切な事がこの一冊には詰まっている気がします。
本が終わりに向かうにつれて、次のページをめくる手がなかなか進まなくて…それはあまりにもこの本を読み終えてしまう事が名残惜しくて、まだこの世界に浸っていたくて...
だから私は何度だってこの本を手に取り、戻ってしまうのです。
いつだって波の音が聞こえ、優しい時間が流れる、この本の世界に。
★江国香織さんの「すきまのおともだち」
江國香織さんが紡ぐ言葉によって作られる世界感ってすこし不思議だけど、美しい。
この本を読んだ後、一つの旅が思ったような、そんな感覚になりました。
新聞記者として働く女性の語り口調で綴られるこの物語。
彼女は取材にとある町に行きますが、その途中で道に迷ってしまいます。
そんな中で助けを求め、たどり着いたのが、小さな女の子が住むおうちだったのです。
その女の子は作中ではずっと「女の子」
名前などないのです。
女性は、名前や年齢を尋ねますが、当たり前かのように返ってきた答えは
「あたしはおんなのこよ」
とただそれだけなのです。
読んでいて、私も「どういうこと!?」となりましたが。笑
でも思ったのです。
私達は相手の肩書きや、表面的な部分を知っただけで、その人の全てを知ったような感覚になっているのではないか...と。
「自分は女の子だ」としか言わない彼女は、最初はどんな子供なのか全く分からず、少し不思議で奇妙な存在ですが、物語を読み進めるにつれ、とても大人びていて、頼もしく、つつましい生活をし、でも時には子供らしい「あどけなさ」もあり...女の子がどのような人物なのか鮮明に分かるのです。
確かに相手の事を知る上で必要な事は、一緒に時を刻む事、ただそれだけなのかもしれません。
相手がどういう人かどうかなんて、表面的な言葉では説明できない、そんな事を私はこの本から感じました。
女性が迷い込んだのは現実とは別の「すきま」の世界。
彼女は、数日を女の子と共にその世界で過ごし、ふとした瞬間に現実の世界に戻る事が出来ます。
ただ、戻った時に彼女は気づくのです。現実の世界では全く時間が進んでいない事に。
彼女はそれから、結婚し、子供を産み、年をとっていきますが、忘れた頃に何度かまた、すきまの世界に迷い込みます。
けれども、その世界は何もかもが変わらないのです。
女の子は女の子のままで容姿も全く変わらない、街並みも全く変わらない。
現実の世界とは異なる時間の流れ方をする、そのすきまの世界に迷い込む事を女性は全く怖がりません。
むしろ喜んでいるのです。
もちろん、彼女と女の子が年齢という壁を越え、固い絆で結ばれたという事も一因としてあると思いますが、もしかすると歳を重ね、その分沢山の事が目まぐるしく変わり続ける中で、常に変わらない場所が存在している事にホッとしているのではないだろうか...とも思うのです。
江國香織さんの綴る言葉もまた、情景が鮮明に浮かんで、改めて言葉ってすごいなと思うのです。
時には、人を励まし、時には人を奮い立たせ、時に人を旅させる...
そんな無限の可能性で満ちた言葉に、私は毎回本を手に取る度に驚かされるのです。
思った以上に、一冊に対する思いが強くて長くなってしまったので、また次の投稿でもおすすめの本をご紹介出来たらと思います。
ちなみに、この間ブックオフで本を3冊購入しました。
読むのを待ってくれている本があるって幸せな事ですね。
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