ジョブ型雇用は日本人を幸せにするのか?
今回のテーマは「ジョブ型vsメンバーシップ型」ジョブ型雇用は日本人を幸せにするのか?
個人的にこの回めっちゃ良かったです。番組としても、MCとしても、目指す姿がこの回で形になった気がします。
さて、近頃よく耳にするようになった「ジョブ型雇用」。新型コロナウイルスの影響で、リモートワークやセルフマネジメントが広り、このジョブ型雇用に取り組む企業が急増。すでに日立製作所や資生堂、富士通、KDDIなど大企業を中心にジョブ型雇用の導入や拡大を発表しています。
またある調査によると66%の正社員が「副業・兼業は、報酬よりも仕事内容を重視」しており、ビジネスプロフェッショナルは副業・兼業を自らの「キャリア形成」や学びの機会と捉えていることが分かりました。
しかし、ジョブ型雇用が日本の文化にはマッチしない、また、若者の失業率が高まり社会問題となりうるなどの懸念も。果たして、日本では今まで主流であったメンバーシップ型雇用はなくなっていくのか?一億総フリーランス時代が到来する中、ジョブ型雇用は日本人を幸せにするのか?また、日本でジョブ型雇用が広がる潮流であるとすると、私たちはどうサバイブしていくべきか?
個人的には、KDDIやヤフーのように副業や兼業を解禁するのは賛成です。
しかし、完全ジョブ型にするのはちょっと違うんじゃないかと。まずそういう学校教育でないのに、いきなり転換したところで、文化にマッチしないと思いますし、精神的にもダメージを受ける人が増えてしまうのではないか。
また、生産性だけで人間を評価する社会が果たしてよいのでしょうか?成果ばかり求められると、働き手としては戦々恐々としないか?
ゲストにはユニリーバ・ジャパン 人事総務本部長の島田由香さん、株式会社ナレッジワーク代表取締役CEO麻野耕司さん、お隣韓国の目線から語っていただけるタレントで国際文化社会学者のカン・ハンナさん、そしてビズリーチ代表取締役社長の多田洋祐さん。
多角的な視点から、日本の雇用の未来を徹底討論しました!
そもそもジョブ型雇用が既存のメンバーシップ型と何が違うのか?ということですが、
日本で主流の「メンバーシップ型」では「人」が役職にひもづき、育成がベースの考え方。一方、「ジョブ型」では、まず先に「役割」ありき。ポジションごとに必要な経験やスキルが明確に定められ、成果がベースの考え方です。
世界でスタンダードなのはジョブ型です。新卒一貫採用という考え方も日本のみです。欧米諸国にも「新卒者(Graduates)」という言葉がありますが、新卒者を雇うのは中途採用者より賃金が安いことが理由です。ジョブ型雇用では雇ってもいつ辞めるかわからないという可能性があるため、日本のように新卒社員を「金の卵」のように育成していく傾向は海外ではありません。
ジョブ型がスタンダードである欧米諸国では、就業者1人当たりの生産性が高いとOECDのデータから読み解くことができます。その理由の1つには、契約にないジョブローテーションや残業がないため、ゴールが明確で生産性を高めやすいことにあります。これがジョブ型のメリットとなります。
ちなみに、なぜ1位がポーランドかというと、1人あたりの労働コストが比較的低く、大企業が移転しているという理由が挙げられます。翻って日本は時間あたりの生産性においても、主要先7か国で最下位。
ジョブ型のデメリットとしては、新卒者は圧倒的に経験が不足しているので、就職しにくく不利な立場にあります。欧米社会で若年層の失業率が高い原因にもなっています。日本の労働生産性の低さは批判対象になりますが、逆に言えば日本は生産性が低い代わりに失業が少ないということです。
番組前半の議論では「一億総フリーランス時代到来!?ジョブ型雇用は日本人を幸せにするのか?」についてゲストの意見はこのようになりました。
という回答に。
まずYESの意見から見ていきますと、島田さんの見解は、ジョブ型で用いられるJD(職務記述書:担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた書類)がなくても仕事はできる。企業は今JDを作ることに仕事のエネルギー注いでしまっている。とのこと。
仕事の本質は雇用制度や仕組みにあるのではなく、やったか、やらなかったか。つまり色んなことにチャレンジして、いかに経験を積んだのかでスキルが決まる。スキルがない人はジョブ型になったら職に就けないのではないかと不安に思っている人は多いが、スキルはやった人だけにつく。やらないから不安になるだけ。
韓国はジョブ型がスタンダードだと言うカンさんは、日本は部署移動が多すぎで、目に見えていない仕事のプロセスがストレスだと指摘。目に見える成果や実績で評価した方が、最初はきついかもしれないけれど、ゆくゆくは幸せになっていく。
サムスンはジョブ型でLGはメンバーシップ型のようで、サムスンはどんどん外に出させてインプットさせる文化だそう。MBA習得やスタートアップでの経験を活かして、Uターンの社員も沢山いる、とのこと。
佐々木さんは、No。ジョブ型が合うか合わないかは職種と年齢に寄って変わります。佐々木さんのようなメディア職はジョブ型が良いのですが、何に向いているかわからないうちはメンバーシップ型がよい。また、ジョブ型だと「溢れた仕事」をやるチャンスがない。この溢れた境界線の仕事の中に面白いものが落ちている場合もあるので、専門的な仕事のみをやってしまうのでは、可能性が広がらないという懸念も。
メンバーシップ型でも成果は残せると言う多田さん。大切なのは、どういうキャリアを描きたいかをデザインすること。なので短期的に見るとジョブ型移行には賛成。
ちなみに、この日本由来と言われているメンバーシップ型の成り立ちを調べたところ、日本的経営の3つの「特」と言われている、労働組合、終身雇用、年功序列にその原型があるようです。特に、この終身雇用の考え方は、松下幸之助の経営思想から生まれたと言われていて、世界恐慌の際に大規模なリストラを進言されながらも従業員を1人もクビにしなかったというエピソードがあり、社員と世の中から大きな信頼を得たようです。この信頼があったからこそ、パナソニックは戦後の急成長を遂げることができたと言われています。
日本的経営に基づいたメンバーシップ型雇用は、長期的な視点に立ち、人を大切にするという日本社会の価値観を反映した経営の考え方とも言えますね。
今回、日本の労働市場を変えにきた(!)という麻野さんはというと、
まず職種を選べる社会になるべき、とのこと。麻野さんが大好きだという半沢直樹の中で、登場人物が東京中央銀行に「就社」していることに気づいたそう。就社だと、ひとりひとりが誇りを持って仕事ができず、誇りがなくなって行くと益々仕事にネガティブな感情を抱いてしまう。
また、会社のジョブローテーションはおかしい、との意見も。若手にも職を選ばせてあげるべきだし、新卒採用も職種型にして選ばせてあげるべきだと言います。
島田さんも後に続きます。本人と対話なしに、興味のないことをさせるべきではない。
多田さんも島田さんに同意し、時代によって雇用スタイルも変えていくべきなのに変わっていないと指摘。仕事や会社が嫌だったら辞められるのだから、キャリアの主体性を考え「自分で決めるスキル」を身に着けたほうがよい。
古坂さんも、自身のお子さんが自分で選ばせるとより早く成長するといった気付きから、まず最初に仕事を選ぶという行為が大事との認識を示していました。
そして、仕事を選ぶという体験を若いうちにさせることが成長に繋がると麻野さんは力説します。
多田さんの仕事の前提は「いきいきと働く」ことだそうで、96歳で亡くなる直前まで焼き鳥屋を経営していた祖母を見て気づいたのだそう。彼女のようにひとりひとりが主体的に仕事を選び、その選択に責任を持ち、スキルを磨くことを怠けなければ自然といきいきと働けるようになる。
暗いニュースもありますが、就労者がいきいきと働けるようになればもっとハッピーな社会になるはず。努力をせずに悩むのがナンセンス。
メンバーシップ型では専門性や経験が少ない若者の可能性を広げられるという考えがある一方で、ジョブ型雇用は職種をまずは自分で「選ぶ」という点で、仕事に対する責任感やモチベーションがかなり変わってくるという意見もありました。
佐々木さんはここまでの議論を踏まえて、ジョブ型反対意見から「ジョブ型はやりがいを加速する」に意見を変更!
ここまでの議論では、日本企業はジョブ型は取り入れるべきか否か、でしたが後半では「ジョブ型雇用サバイバルガイド」ということでジョブ型雇用時代のTipsを教えていただきました!
まず、佐々木さんの見解は、ジョブ型時代に必要なのはサラリーマン思考から抜け出すこと。「自分の会社がどうなるか」会社を軸にして不安にとらえる事がナンセンス。マインドセットを会社から自分の仕事(キャリア)に変える。会社に対してではなく、顧客に貢献できるか、社会に何を生み出すかというマインドに変えるべき。責任を会社ではなく自分に持つということですね。
多田さんの意見は、今の自分の現在地と目的地をたなおろしするという意味で、キャリアの健康診断を提唱。どのように診断するのかというと、まず自分の職務経歴書を書いてみる。自分が明確に何をやってきたか?何ができるのか?という自分のWikipediaを作成する。自身の価値を上げるために、企業も個人も定期的に診断するべき。
カンさんは同時進行でインプットとアウトプットを計画的にやっていくのが大事だと言います。インプットに最適なのはリベラルアーツや外国語など、自分の専門分野以外にも普遍的なもの。ジョブ型雇用に自分自身をシフトしていくためにも、まずはインプットさえしていれば不安に感じる事は少ないと言います。
島田さんの「ぱら」ダイムシフトとは、心の見方を変えていくこと。物事はなんだって悪くもよくも考えられるので、自分のマインドセット次第で、なんでも良い方向に変えていけるということ。
また22歳までに就職しないといけないと言う固定観念をやめるべきだと提言。仕事をワークインライフ=人生の大切な一部として、楽しくできる方向へ持っていくように心掛けているそう。
麻野さんからは、ジョブ型移行を不安視している人に提言。VUCAの時代を仕事に生きてほしい。会社に生きていると、もし倒産してしまうとよりどころがなくなりますが、仕事に生きていると、そのスキルを生かしてどこででも生きていける。スキルのない人が会社にたらい回しにされていると益々悪循環に。そのためにまず新卒から職種別採用をしているところに就職すべきだと言います。
教育を変えるよりも、教育の出口である企業から変わるべきだと言う多田さん。93年にJリーグが出来て、それに応じてサッカーにおける教育システムが変わり、アスリートのキャリアが世界へ開けたように、会社が変われば社会が変わる。社会が変われば自ずと教育もついてくる。
社会が良い風に変わっていく一つの切り口として、ジョブ型雇用は導入したほうがいいとの満場一致の意見でした。
そして古坂さんの選ぶキングオブコメントでは
という、島田さんのコメントに!
本当にたくさんの金言があったので、古坂さんも絞るのが難しそうでした。
「やってるやつは、才能とか言わない」という古坂さんの言葉の通り、たられば論のような非建設的な言葉は努力をしていない人が言うべきではない。自分がなりたい理想の姿を描き、それに大して何かしらのアクションを起こしている人はそういう事を口に出しません。スキルのありなしは、やったか、やらないか。非常にシンプルです。
キングオブ奥井共感コメントは、麻野さんの
に決めさせていただきました。
ほとんどの人が就社している現状を、議論で終わらずに本気で社会に提言したいという麻野さんの熱が物凄かったです。
最初ジョブ型と聞くと、生産性だけで人間を評価され、戦々恐々となり不安が増大するのではないかと思ってましたが、逆で、会社ではなく生き方を軸に決めるこの時代、スキルがあればネガティブな不安はなくなるんです。仕事を決め、スキルを磨くための真っ当な努力をしてさえいれば、何も怖くない。
最後に、私が大好きな本を1冊紹介します。多田さんのおばあさんの話で思い出したのですが、いきいきと働いてる人って自分のスキルが人生に活かされている人だと思うんです。この本には自分の活かし方や、いきいきと生きる事の大枠が書かれていて、スキルやキャリアハック系の本を読んで知識を得ようと試みるよりも、行き詰ることなく読めます。
興味があればぜひ読んでみてください。
心の見方を変えるだけでやりがいにも幸せにもなる。どう働くかはどう生きるか。今回は学生のみなさんも是非見ていただきたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?