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野草食日記 172 椿の花の栄養学 その2 オレイン酸のこと

前回に引き続き椿の花の栄養について考察していきます。
「椿の花の栄養学 その1」は下記のリンクよりご覧いただけます。

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山菜の会の際、東京家政大学の中村先生に伺った椿の花の特長。
2つ目は「油」ということでした。
椿は種だけではなく、花びらにも油が含まれているのだそうです。
当日のメモを見返してみると、そこには「オレイン酸」と書かれてありました。

②椿の花に含まれる油について

ネットで調べてみると、椿油に含まれる「脂肪酸」の種類に関しては詳しい記述を見つけることができました。
しかし、花びらに含まれるそれについては出典が明らかでないものばかりです。
それら数少ないネット上の情報でも、やはり「花びらにオレイン酸が含まれている」と書かれていましたので、今回はその「オレイン酸」が一体どういうものなのか調べてみることにします。

◎脂肪酸とは?!

先に出てきた「脂肪酸」という言葉。
よく聞きますが、改めて考えてみるとよく知らなかったことに気づきました。
さてさて「脂肪酸」とは一体何なのでしょうか?!

株式会社食環研衛生研究所のコラムによると、脂肪酸とは・・・

⚫︎脂質の主要構成要素
⚫︎脂肪酸が他の形体の様々な物質と結びつくことにより脂質を形成している
とのことでした。

一般的な概念として、脂質は健康に悪いというイメージが定着していますよね。
ところが脂肪や脂肪酸は人の健康に欠かせないものなんだそうです。
そういえば、以前健康オタクの気がある母が、油は身体に悪いってんで、油抜き生活をしたら肌がカサカサになってしまい、「油も身体にとって必要なものなのね。」なぁんて言っていたことを思い出しました。

◎脂肪酸の種類
飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸 の4種類です。

飽和脂肪酸 
⚫︎肉、乳製品 卵黄、チョコレート、ココナッツ、パーム油などに多く含まれる
⚫︎ステアリン酸、パルチミン酸、アラキジン酸など
⚫︎エネルギーとして使われやすく、体内で合成できる
⚫︎過剰摂取は健康面でデメリットあり

一価不飽和脂肪酸
⚫︎オリーブオイル、菜種油、アボカド、タラ肝油、イワシ油などに多く含まれる
⚫︎オレイン酸、ミリストレイン酸、エイコセン酸など
⚫︎比較的エネルギーとして使われれにくく、常温で液体の脂肪酸
⚫︎オメガ9系脂肪酸とも呼ばれる

多価不飽和脂肪酸
⚫︎魚油(青魚)、植物油(トウモロコシ油、大豆油、サラダ油等)、クルミ、えごまなどに多く含まれる
⚫︎リノール酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコペンタエン酸(EPA)など
⚫︎体内で合成できない必須脂肪酸を含む
⚫︎オメガ3系、オメガ6系脂肪酸に分類される

トランス脂肪酸
⚫︎マーガリン、ショートニング、加工油脂などに含まれる可能性がある
⚫︎植物油を高温にする過程などで生成される脂肪酸
⚫︎健康に対するマイナス面が報告されている


脂質は健康に悪いというイメージは、主に飽和脂肪酸の過剰摂取とトランス脂肪酸によるものなのかな?!と思います。
また、最近ではリノール酸から生成されるアラキドン酸がアレルギー症状(花粉症やアトピー)を引き起こす可能性も指摘されています。
私自身も、2年前の2月に皮膚にひどいアレルギーが出た時に、一時的に油断ちをして改善したことがありました。

◎オレイン酸の特徴

脂肪酸についてわかったところで、改めてオレイン酸について見ていきましょう。

医療機器で有名なニプロ、また、サプリメントを販売しているのわかさ生活など、いくつかのサイトを参考にしながら書いてみようと思います。

オレイン酸は、酸化されにくく、発ガンの元といわれる過酸化脂質を体内で作りにくいという特性があります。
加熱によって酸化することもないので、揚げ物や炒め物にも向いているそうです。

肉類や乳製品などの飽和脂肪酸を食べすぎると、血管内に悪玉コレステロールが過剰に増えます。
悪玉コレステロールが増加し酸化すると、血管内壁にコレステロールが付着し、血管を塞ぎ、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。
悪玉コレステロールによって血管中に置かれたコレステロール、これを回収する役割を持つのが善玉コレステロールです。
オレイン酸は、この善玉コレステロールを減らすことなく、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。

◎椿の花にオレイン酸は含まれるのか?!

それについての資料は探し出せませんでしたので、種から採れる椿油にどのくらいのオレイン酸が含まれるのか見てみましょう。
花びらと種では含まれる量はかなり違うとは思いますが、きっと比率としては同じような割合なのではないでしょうか。

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                         出典 Wikipediaより

全体の約86%がオレイン酸です。
では、オレイン酸が多いことでヘルシーな油と言われているオリーブオイルと比較してみるとどうでしょうか?

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                          出典 Wikipediaより

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資料により微妙に差はあるものの、約70%がオレイン酸、つまり椿油のオレイン酸含有率はかなり高いということがわかります。

◎まとめ

椿の花びらを甘酢漬けにして食べる、と言っても1度にほんの数枚です。
なので、目の健康や生活習慣病の予防にちょっと貢献できます・・・という控えめな言い方が似合いそうです。

山菜の会の当日、中村先生のお話で印象に残ったことがありました。。
それは、「〇〇が1000個分」などと謳っているサプリメントが世の中にはいっぱいあるけれども、ひとつの成分だけを凝縮したものは危険性があると。
現在良いと言われているものでも、何年か後に同じような解釈がされているとは限らないし、自然ではない。
「何よりもバランスが大切。」という先生の言葉に心の中で大きく頷いたことでした。

色々なものを偏りなく食べて、自然とバランスが取れているのが理想です。
数字に頼らずバランスを整えるためには、自分の身体と向き合い、時々の変化を感じられる心の余裕が大切ですね。
ゆとりを持ち日々を暮らす・・・100%は無理だとしても、出来る限り心がけていきたい、そんなふうに思います。
椿の花を食べることも、数多ある食材の中の「小さなバランス」のひとつとなることを切に願いつつ・・・。

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協力
東京家政大学名誉教授 中村信也先生
まほろば東京クリニック 小林蓉子さん

参考資料









 

     


野草の勉強や観察会のために使いたいと思います。