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利他と仏業

多分、カンはすごくいいんだと思う。

中島岳志さんの連続セミナーを聞いて、自分が向いている方向が、そう変ではないらしいということはわかった。なんとも心強くて、しばらくウキウキしていた。

今、関わっているパロロ本願寺は東本願寺系で、親鸞の他力本願はこの宗派の中心的テーマだ。他力=本願=大願法力ということで、仏なるものは人を助けずにはいられない業を背負っているらしい。愛するために人間を作ったキリスト教の神様と助けずにはいられない仏の業を背負った阿弥陀様がついていれば、何もこわいものは無いような気がする。

方向性は間違ってないらしいことは分かったが、では、具体的に何をすれば? 考えていることと行動がリンクせず、概念だけがくるくるしている。

何をしたいんだろう、私。 
還暦になって青春時代の振り出しへ戻ったかのようだ。

そんなとき、たまたまだったけど、モウナファームの野菜お取り寄せ共同購入を始めた。コロナでロックダウンやステイホームとなり、レストランやお店におろしていた野菜が、西側でだぶつき始めていた。タイミングよく他にもモウナファームから買っている人がいることを知り、急遽、友人たちに声をかけ、20人以上が共同購入リストに載ることとなった。そのうちの7、8人が毎週、入れ替わり、立ち替わり野菜を購入してくれている。

野菜は大地や太陽からの一方的贈与なのだが、ハワイには大地を大事にするAloha Ainaの歴史がある。スリランカの故郷を内戦のために亡命という形で後にすることになったスーリアと弟、そして米本土の食品関連会社の重役だったピーターが、原野だったオアフ島のウェストサイドの土地を畑とアートビレッジへと拓いていった。もちろん、オーガニックファームだ。

Aloha Ainaは一方的贈与への応答だ。そんなことを感じることができるファームに一歩近づくようなことが始められて、ありがたいことだった。野菜は金曜日の朝、収穫で、その日の夕方にお寺に届く。お寺には広い駐車場があり、その一角の木の下で受け渡しをしている。ピーターがトラックの荷台にクーラーボックスをくくりつけ、その中に朝取れのカラードグリーンやらスイスチャードやら、水菜、大根、ビーツやらを詰め込んで持ってきてくれる。時々、使い方不明の野菜もあるのだが、それをみんなであーでも無い、こーでもないと調理方法や出来上がった料理をフェイスブック上で交換したりしながら、楽しい野菜生活を送っている。

ここにやはりコロナで閉じてしまったKCCファーマーズマーケットで、納豆やキンパ、キムチ、おはぎなどを売っていた大豆亭さんが加わって、予約販売をしてくれている。さらに、Islander Sakeさんの甘酒の予約販売も加わり、コミュニティ・ミニ・マーケットが小さく始まった。

さて、例年ならこの時期、いろんなお寺でBon Danceが大々的に開催される。パロロ本願寺も本来なら、毎週のように理事会と実行委員会が開かれて、ある種の狂騒の中にいるような時節だ。ところが、今年はコロナのため、島内の盆ダンスはことごとくキャンセル。お寺も人が集まれないため、がらんとしている。門前、市をなすという言葉があるけれど、お寺の周りは人が集まって、ナンボという面がある。信者さんたちがお年寄りになり、日曜日のお参りなどもまばらになってはいたけれど、ハワイのお寺を見ていると、いろんな可能性を思いついてしまう。

この場所でファーマーズマーケットならぬ、お寺マーケットが開けるようになるかもしれない。そして、もしかすると、いずれ貨幣を通さない交換経済が、パロロ周辺で可能になるかもしれない。そんなことを思わせるお寺コミュニティ・ミニ・マーケットの始まりなのでありました。


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