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ガストの猫型ロボットが、自分の席には来なかった話

会社からの帰りが遅くなり、冷蔵庫の食材も昨日の夜にほとんど使い切ってしまったことを知っているので何か食べて帰ろう、と思った。

時間は21:36。
コスパ重視でサイゼリヤに行ったが21:15が最終案内だと言われ、
健康重視で大戸屋にも言ったが21:30がラストオーダーだと言う。

路頭に迷った結果、2階に煌々と光る「ガスト」の文字を見つけ、ついでに「から好し」の唐揚げも食べられるとの謳い文句も見つけ、
「唐揚げ食べたい。」
と吸い込まれるように階段を昇った。


「お好きな席にどうぞ」

最初こそにっこり顔の店員さんに案内されたが、席に座るとタッチパネル式の注文メニュー。
最近ガストに行っていなかった分それだけでも驚いていたのに、席についてメニューをポチポチしていると「にゃ~ん」と猫型ロボットがゾロゾロと料理を配膳していて二度見した。

近くには、ロボットでも動いていようものならキャッキャと騒いだりしそうな小さな子どもがいる家族席もあったのだが、誰一人として見向きもしない。
よくガストに来ているのだろうか、何たる適応力。

時には可愛い顔して運んでいるのが生ビールジョッキ1個という時もあって、猫とビールのコントラストに苦笑した。

さて自分が頼んだのは謳い文句に誘われたままから好しの定食。

猫から上手く受け取れるだろうか。
こまごまとお味噌汁やご飯やらがついてくるが、きっとお盆に乗ってくるだろう。
それに、取っている最中なのに猫が帰って行ってしまうみたいなこともきっとないのだろうが、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した。

待つこと10分ほど。
ついにその時が来……

「お待たせしましたー。」

再び、にっこり顔の店員さんの手から目の前に置かれた定食。

あれ……??

「あ、りがとうございます……」
いや、猫ではなくちゃんと人が持ってきてくれたのだからむしろ丁寧だ。ありがたいと思うべきなのかもしれない。

ただあまりに、猫から受け取るシミュレーションをしすぎたせいで、つい複雑な感情になってしまった。


美味しい唐揚げを頂きながら、なぜ自分の元へ猫が来なかったのか、いくつか仮説を考えた。

・最初にパネルを触った時に何名様か押すタイミングがあった。「1人」と回答した人には、可哀想だから(?)猫ではなく人が配膳する。

・から好し定食に関しては、揚げたてをいかに早く届けるかが肝になるので迅速に人が届けている。

・そもそも「ネコ型ロボットが配膳を回している」かのような演出がされているだけで、実はみんな人から受けとっている。(猫から受けとっている人を見かけたため没)

そしてひとつの答え(?)にたどり着いた。

・猫だから。


この、「なぜ私のところに来ないのだろうか?」という悶々とした気持ちが、猫カフェに行った時に友達の元にはたくさん猫が寄っているのに自分の周りには1匹も来なかったときの感情とデジャブだったからだ。悔しい。


そんなくだらないことを考えていると、途中隣に座ってきた、高校生か浪人生だろうと踏んでいた男子二人組が、猫からビールを受け取り、それを飲みながら家を買うか買うまいかという話をし始めた。
……高校生じゃなかったのかい。
それに、あまりに絵に書いたような「大人」の言動で苦笑した。


ファミレスに久しぶりに来ると、普段使ってない感情のアンテナみたいなのが磨かれるんだな、と思った。実際こうしてそれに突き動かされてnoteの筆を執っている。


また近々来よう。
そして、その時こそは猫と戯れるんだ。


そんな決意(?)を胸に、どこまでも自動なんだなと思いながらセルフレジで会計を済ませる。
ありがとうございましたー!という元気な声を聞きながらガストを後にした。


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