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OUT 殻を破る

こんにちは、Nanaです。


PIXAR SparkShorts の「殻を破る」(原題:OUT)を見ました。

相変わらず原題の方が良いですね。
Coming OUTやOutingという言葉がある以上、OUTの持つ意味は深くこの作品に浸透します。

アメリカに住むゲイ男性の話。
主人公のグレッグは引っ越しを控えています。そこへ両親が荷造りの手伝いに来たが、彼にはとある秘密が。
彼には言えない苦しさが。母親には話してもらえない苦しさが。
お互いに抱えた苦しさと、母親の優しさに触れたとき、何かが変わる。

簡単に要約するとこんな感じでしょうか。


作品冒頭に事実に基づいた話である、という言葉が出されます。
この監督は苦しい思いをされたと思いますが、すごく素敵な人たちに恵まれたのですね。彼の周りの方への愛が感じられる作品でした。

おそらくこの作品を見たすべての人が、母親の言葉に胸を打たれるのではないでしょうか。
どんなかたちでも幸せを願ってくれている、という普遍的な親の感情に感謝することはもちろん、息子がいわゆる普遍的な幸せとは少し離れたところにいると気づいている、という事実に心が動かされました。子どもが思っている以上に親は子どもを見ているのですね。
もちろん、これは当たり前のことではありません。そんな風に見てもらえずに成長してきた方もいらっしゃるでしょう。あなたはすごいです。よくやっています。
でも、私はこの作品のように、親は心の底から子どものことを想う存在であるべきだと思います。余裕がないときもあって良いですが、そのくらいの気持ちがないと子どもを育てる決意をしてはいけないと思っています。だけど、現実はそうじゃないと思っていたので、この作品を見て、理想像かもしれないけど、すごく感動しました。

私はどちらかというとこの作品に近いです。
私は家族に愛されて育ち、私も家族が大好きです。
だけど、私はアロマンティック・アセクシャル*を自認していて、自分の家族のような家族を築くことを理想としていません(性的指向に関してはまだ自認が揺らいでいるのでこれから変わるかもしれませんが)。
だから少しだけGregの気持ちがわかります。
家族が好きだけど、家族に好かれる自分でいたいから、ここだけは隠したいというずるい気持ちが。好きだから言えないことがあるということが。
私はただ結婚しない!一人で生きる!と宣言すれば良いだけですが、彼の場合は大切な人を大切な人から隠し続けなければならないという苦悩があります。

*注釈:アロマンティックは性別に関係なく他者に恋愛感情を抱かない性的指向のこと、アセクシャルは性別に関係なく他者に性欲を抱かない又は性行為を望まない性的指向のこと。団体や個人によって意味はやや異なるがここではこの解釈でご理解いただきたい。

その愛と苦悩の両面を10分弱のアニメーションでうまく表現している作品だと思いました。
SFチックなテイストは非現実的で時に観る人の心を離してしまいますが、短編映画としては有効な手段だったと思います。

あと、最後、彼の両親とボーイフレンドが初対面するシーンも素敵でした。
全員が不安な気持ちになったと思いますが、その緊張感と、会ってハグした後の緩和感が絶妙に描かれていて、こちらの心臓や血流の生理的反応まで動かされたように思います。


性的指向に関係なく、家族の愛を感じられるストーリーで、自分を愛してくれる家族が思い出される作品でした。また自分に悩んだ時に見返したい作品です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Nana

ケーキが食べたいです。今はモンブランが食べたい気分。