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読み切り「はじまりの境界」について書いてみる

あららぎです。
7月2日にジャンプ+にて読み切りが公開されました。
詳しくは前回の記事をご参考までに。

この漫画、去年12月に読み切りの企画会議を通過し、そこから3ヶ月かけて作画しました。
そこから発表までにおよそ2ヶ月、制作から発表まで半年くらいかかっています。
この作品を描くのに、裏設定などもたくさん詰め込んだので、解説も交えて記事にしてみます。
(オチについては書きませんが、ぜひ本編を一読してから読んでいただくと良きです)

この作品を描くに至った経緯

この作品の前に、私は読み切りコンペ用に作品をネームを描きました。
67Pほどの、読み切りとしては大ボリュームのネームです。
個人的には気に入った話でしたが、『オチが読める』『わかりにくい』という理由でボツになりました。このネームは何度も修正を重ね、発案から半年以上の時間を浪費しました。
それがボツになってしまい「私はもう漫画は無理だ…」とすごく落ち込みました。
正直今読み返せばその作品の悪いところも、なぜ企画会議に通らなかったのかもわかります。ただ当時の私はそれがショックで1ヶ月創作漫画を描けなくなりました。
でも描かなきゃただ時間が過ぎるだけなので「次の作品が通らなかったら商業漫画はやめよう」ときっぱり決めて、次の作品の構想を練りました。(お風呂でプカプカ浮かびながら)
その落ち込んでた私が最初に考えたことは、
「ダメだ、人間はしんどすぎる。人間やめたい」という極端なもの…。
JOJOでもそんなセリフありましたよね。
私はネガティブな感情をエンタメに昇華するタイプなので、
「人間やめたいなら、人間をやめられる話を描けばいいのでは…」
それがこの話のテーマににつながりました。(やはり極端)

その時私が思い浮かべたのは萩尾望都先生の『11人いる!』という漫画でした。
そこにはヒロインとなるキャラクターが、雌雄未分化であり将来的に男性か女性かを選べる。という設定がありました。
現代は令和。男女に限らず、大きく『生物』のカテゴリーの中で自分のなりたいものを選べるのはどうだろうか。
そんな発想からこの話のキャラクターが生まれてきました。

タイトルについて

タイトルは「はじまりの境界」。
タイトル付けって一番頭を使います。物語そのものを表すものになるのでかなり真剣に考えます。
舞台はあの世とこの世の境目。
この世界から新しい生物としての最初の一歩が踏み出されるという意味でこのタイトルをつけました。
「空の境界」という作品が好きで、あのタイトルの音が心地いいと思い、それになぞってもいます。

メインキャラクター

人間に憎しみを抱く少年

イチ
人間に苦しめられてきた過去があり、人間を憎み続けたまま死んでしまった少年。
現代でもそういったことはありますが、少し前ではイチやこの後紹介するピリカのように、理不尽な理由で飢餓で死に至ったり、殺されてしまった子供たちが存在しました。
子供を育てる身として、そういった目に遭った子供たちのことを想うと胸が苦しくなります。
そんな子たちに捧げる鎮魂歌のような気持ちでイチというキャラクターが誕生しました。
父親が犯罪を犯し、『罪人の子』として連帯責任を負うことになったイチは劣悪な環境下で、人々から虐げられます。次に転生できる生物を選択できると言われ、人間以外の生き物を選ぼうとした彼ですが、ピリカに出会うことで考えが変わります。
イチは今までいた環境のせいで『感動』がなんなのか、『恋』がなんなのか知りません。だからこそピリカの物語に、ピリカ本人に強く惹かれたのでした。
イチの名前の由来は『始まり』をあらわす数字の『1』からきています。

憂き目にあっても、なお人間に希望を抱く女の子

ピリカ
イチと同様、罪人の子ということで差別を受け最終的に餓死してしまった女の子です。
私は人間の良いところも描きたいと思いました。人間であることの利点とはなんなのか、私なりの答えがピリカというキャラクターです。
私は人間は『想像し、創造のできる生き物』であると考えます(シャレになってる)
彼女は創ることが大好き、根っからのクリエイターです。
皆さんも子供の頃、時間を忘れて夢中になったことはあるのではないでしょうか。私の場合、それは『絵』だったのですがピリカは『お話を書くこと』でした。私もお話を考えることは大好きです。ですがそれには、それを読んでくれる読者がなくてはならない存在です。
ピリカはお話を誰にも披露することなく死んでしまったので、次の転生後も人間になって今度こそは誰かにお話を聞いてほしいと思ったんでしょうね。
人はなぜ物語に惹かれるのでしょうか。ピリカというキャラクターが生まれたことで改めて考えました。
良い物語は人の記憶に強く残り、後世に伝わっていきます。竹取物語や、かのシェイクスピアの作品も残り続けています。そこには人間が心を震わす『感動』があるから。ピリカにはそんな作品を作ってくれるようなキャラクターになってほしかったです。
名前の由来は、創作といえば私の中ではピカソが一番最初に出てくるのでピカソの文字を入れ替え、ピソカ→ピリカとしました。

教徒のような衣装を纏う、ミステリアスな人物

シルベ
イチたちのような『本来死ぬはずではない時期に理不尽な死に方をした生き物たち』に、この世とあの世の『境界世界』について説明と質問への回答を役目とするキャラクター。
シルベはどの生物に対しても平等に接し、たとえトラブルが起ころうとも手出しせず、見守ることに徹します。
本編でも描きましたが、彼は人間ではありません。なにかと断言しているわけではないですが、おそらく神のような存在に仕える人なのかな、という感じ。
これは完全に裏設定で、『彼』と書きましたがシルベは両性具有でそもそも男女の概念がありません。天使なんかも両性具有で描かれることがありますよね。
私は男性っぽいなぁと思いながら描きましたが、女性のような表情をするシーンもありました。
中立から動くことのないキャラクター。ほんの少し不気味さも感じる、良いキャラクターです。
名前の由来は『道しるべ』から。

この話で登場する設定

この世界では『全ての生き物は輪廻転生しており、個が持つ特性を引き継いでしまう』設定があります。
これも、私がなぜ絵が好きなのかを掘り下げて考えた時、もちろん環境の影響はあるのですが、『生まれ変わる前の私も絵が好きだったんじゃないか…?』という妄想から出てきたアイディアです。
動物たちにも得意不得意があるので、前世が関係してるのでは。なんて考えもしました。

終わりに

長々とここまでお付き合いくださってありがとうございます…。
漫画では語れなかった設定などもあったので、ここに書いて残そうと思いました。
世に発表され、この作品はもう私の手を離れたので、次の物語に移ります。
次の物語は今作よりパワーアップさせたいですし、読者の皆さまに「面白い」と届けられるよう頑張ります。
読んでくれる人がいるから私は漫画を描けます。
次回作もぜひ読んでください!





漫画を描く制作環境を整えるため、モチベーション向上のためご支援頂けたら幸いです。何卒、よろしくおねがいします!