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女性活躍を損得勘定で考えてみる

先日、女性活躍のテーマで無料セミナーを行いました。たくさんの方に聞きに来ていただき感無量です!今日は、そこで頂いた質問にあらためて答えてみようと思います。「女性活躍に取り組む気はあるのだが、昇格させようとしていた女性が産休・育休に入ってしまったので、結局できていない」と言い訳をする社長をどう説得するか。

経営者側は「本気でやるつもり」なのに、女性側の都合で進んでいない。ひいては「女性活躍はコントロールできない要素が大きいので、本気で取り組むのは難しい」という話ですね。経営者側としては、「せっかく取り組む姿勢になったのに、思うようにいかない」という心境はわからなくはありません。女性側がもっと協力すべきなのに、女性自身こそ会社に対する忠誠心が足りないのではないか。そんな本音がある質問という風にとらえました。

そもそも事業をやっている以上、外部環境の変化などコントロールできないなかで、何とか突破口を見つけるのは通常の行動様式で、この社長さんも事業運営をしている中ではそういうスタンスであるとは思いますが(笑)、なぜか女性活躍だけは、こういう言い訳をしてしまう。それは、とりもなおさず、女性活躍というテーマが、どのように事業上の機会とリスクにつながっているかが腹落ちしていないからだと思います。

このテーマを考えるうえで、4つのマトリクスで整理してみます。縦軸はメリットとデメリット、横軸は、時間軸。短期と長期、という整理です。

~「女性活躍」があなたの会社にとってどんなメリットとデメリットがあるか、マトリクスで整理してみましょう~

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どうでしょう。とてもビジネスっぽいまとめ方ですけど、皆さんの会社では、それぞれの枠にどんなポイントが埋まるでしょうか?

短期のメリットデメリットは、会社のおかれる環境によってふり幅が大きい

そもそも、女性活躍は、人材にかかわるテーマですので、一番影響が大きいのは採用だと思います。私の会社では、中途採用がほとんどなのですが、専門性も高く、向き不向きも大きいうえに、組織文化との適合性を非常に重視しています。ですので、男性という性別だけで潜在的な候補者を絞ってしまうと、なかなか良いタレントを採用することはできません。(見つかったとしても年収が折り合わないことも・・・)また、ビジネスモデルが複雑なので、経験を積んだ人材が離職してしまうのは本当に痛いのです。子育てよりもむしろ介護の方で離職する方を泣く泣く見送ってきました。経験者の穴を埋めるまで、全体がスピードダウンしてしまう。そんなピンチをたくさん経験しています。そのため、性別にかわらず採用する、子育て中の方が両立しやすい環境を整える、子育て中でも大きい責任を担える環境整備や育成をする・・というのが、事業の運営上、欠かせない施策なわけです。

一方で、会社によっては、そういった必然性を感じないケースもありますよね。というか、そういう会社の方が多いかもしれません。残業も何時間でもできて、家庭も安定していて、公私ともに仕事にフルコミットできる男性の集団がメインであれば、わざわざ、個別対応が必要な女性社員のための場を整えたり育成するのは、むしろ効率が悪く感じる。世間の風潮もあるので、表面上、女性活躍という観点で施策をしておかないとね、という「Nice to have」な領域、つまり「社会貢献」とう観点でとらえている経営者も多いかと思います。

皆さんの会社でイメージしてみるとどうでしょうか。人材リソースに困っていない(むしろ人材が余っている?)ような会社にとっては、短期視点で見ると、女性活躍のメリットは必然性を感じづらいものではないでしょうか?そういう状況の経営者に「女性がいた方が多様性が出て付加価値が生まれやすい」と言っても、本気になれないのは、そんな背景があるからだと思います。

女性活躍は長期施策に取り組む意思と余裕がある会社だからこそできる

企業の中でも、短期目線・長期目線を両立できる会社は一握りかもしれません。人材だけでなく、DXのような長期的な変化に適応する取り組みや、ブランディングのように、積み上げがモノをいう施策。長期施策というのは、リソースの投入と、そこから上がってくるベネフィットの時間差が大きかったり、定量的に計測しづらかったりするものです。裏を返すと、短期目線の効果測定がスタンダードな組織では、「実施の妥当性なし」となってしまう案件なわけですね。

ただ、経営者目線でいうとどうでしょうか。長期トレンドを無視していい、という経営者は少ないでしょう。むしろ、長期目線で物事をとらえて、短期で効果が出ない施策を実施できるのは経営者しかいないわけです。その点は、経営者の意思と組織の余裕に左右されるものですね。女性活躍に限らず、長期目線での施策ができる経営陣と組織であるかどうか。それは大きいと思います。

5年後、10年後を見据えて取り組みができるかどうか

5年後、10年後の長期目線で、タレント人材の確保を考えるとどうでしょうか。生産年齢人口はどんどん減っていきますので、「家庭環境が安定していて長期にわたってフルコミットできる優秀な男性が欲しい」と思っても、人口のプールが縮小していくわけですから、思うような採用ができる確率は、その減少に比例して5%、10%・・・と次第に減っていきます。一方で、男性の側はどうでしょうか。これまでフルコミットしてきたのは、それがその会社でメリットとして機能していたからですよね。ですので、それに見合う見返りが期待できないと、よりよい会社に転職する方が得になります。

そう考えると、思うような採用をするには、年収にプレミアムを乗せるか、大きな責任を用意する。いずれにしても、今と同じようなコストパフォーマンスで採用をするのは難しくなるでしょう。もちろん、あえてそれを選択する、というのも妥当な選択ではあります。

では、そうではない選択をする、という点で、女性活躍をとらえてみるとどうでしょうか。プレミアムを払う代わりに、男女という性別や年齢に限らず、フルコミットを継続できないかもしれない人材で組織を運営する、という割り切り方もあるわけです。「そんなの無理だろう」と思われるかもしれませんが、「他社が無理そうと思うことを工夫して実現するから競合優位が生まれる」これは競争戦略上の根本的な考え方ですので、それができる経営者・組織なのかどうか、という点に収束していくと思います。

損得勘定で考えるからこそ女性活躍の意義がわかる

以上、どうでしたでしょうか。そもそも、事業運営である以上、何事もドライに考える必要がありますが、ドライに考えたとしても、女性活躍も経営の一つの手段として機能しますし、むしろリモートワークが浸透してきた今だからこそ各段に有効性が増した手段でもあるわけです。

性別限らず活躍できる組織を作る、それはダイバーシティを実現する階段の1段目にすぎません。有能な人材は性別というダイバーシティを超えて多様性があるわけですから、ジェンダー平等はあくまで第一歩にすぎません。一方、そういう多様で優秀な人材が集まる環境は、フルコミットできる男性にとっても魅力的なわけですし、モノカルチャーに必死にしがみつくような男性は、5年後、10年後は、企業側が欲しい人材ではなくなっていくはずです。

以上、長くなりましたが、セミナーの質問にお答えしてみました。あらためて、ツボをついた質問をしてくださった質問者の方に感謝申し上げます!

セミナーレポート(参加者の声)


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