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「「衰退の五段階」と闘うトヨタ」日経新聞 Deep insight

#日経新聞 の10月20日朝刊に、ジェームズ・コリンズの「衰退の五段階」の話が出ていて食い入るように読んだ。ベストセラーの「ビジョナリーカンパニー」のシリーズの第三作の「衰退の五段階」。二作目は大学院の教科書だったので原書で読み、原文の説得力や熱さに感銘をうけた。もう11年前のことだが、コリンズ氏の第三作が発売されると聞き、Amazonで原書を取り寄せたのをよく覚えている。

3作目はその前の2作と違い、企業の晩年を扱ったものだ。企業にも寿命がある。ただ人間の寿命ほど定型化されたものはない。老化したと思いきや復活する場合もあるし、若くして老化してしまうケースもある。この「衰退の五段階」で扱うのは、成功した企業がどのような症状を出して老いていくのか、老いを乗り越えて再生するのか、というのがテーマだ。

書かれている症状は、自分が職場で見聞きするものが多くて、「職場で感じる理不尽な方針は、老化の症状だったのか」と心底驚いた。成熟産業で働く人が共通して感じる理不尽さだ。そもそも、業界が成長しているフェーズでは、どの企業もそこそこの成功を収めることができる。単に業界の成長フェーズのボーナス的な恩恵を受けているにすぎないのだが、それを自分たちの実力だと思い込んで、拡大路線をとってしまう。それが衰退の序章なのだ。

そうした企業をリサーチして編み出された「衰退の五段階」はこうだ。

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

第一段階 成功から生まれる傲慢
第二段階 規律なき拡大路線
第三段階 リスクと問題の否認
第四段階 一発逆転策の追及
第五段階 屈服と本用な企業への転落か消滅

あまりに自分の周りで見聞きする事象が多いのと、筆致のリアリズムが好きで、個人的には、前2作よりも名著だと思っているのだが、前2作で感じる高揚感がないため、あまり勧める人はいないのを残念に思っていた。しかし、記事によると、なんとトヨタの豊田章男社長が講演で引用したということである。2009年の講演にて、自社を振り返り、「規律なき拡大路線」を取っていたと述べたとのこと。公の場での発言ということは、第三段階の「リスクと問題の否認」を回避しようとしているのだろう、これはすごいな、と思った。

現在、自動車業界の付加価値はハードウェアからソフトウェアに軸足が移っているが、この記事の前段を読むと、それがいかにディスラプティブなのかがわかる。テスラ1社の時価総額は、トヨタ、フォルクスワーゲン、ダイムラー、GMの4社合計を上回る。このディスラプティブな変化に直面して、トヨタは衰退するのか若返るのかの瀬戸際にいる。

日本を代表する企業のトップが、衰退の五段階を回避しようと挑戦しているという文脈を知ると、トヨタが発信している「ソフトウェア・ファースト」の方針の背景が良く理解できる。と同時に、経営学の英知を取り込んでどのような結果を出すのか、見届けたい気持ちが強くなった。

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