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ジュニアスタッフの育成は肩の力を抜いて


今年は1月から諸事情によりジュニアスタッフの直属の上司として育成を担当しました。部長になった5年前、「課長の仕事って、人の育成に直接関われてやりがいあったなぁ」と、寂しい気持ちで手放したのですが、久々に第一線の管理職として育成に関与することになりました。


執行役員になると、どの仕事に精度をこだわる必要があって、どれが失敗しても問題ないかが見えてきているので、課長だった時よりも大幅に肩の力を抜いて取り組めました。あと、長い管理職経験を通じて「ひとを型に嵌めようとしても、上手くいかない」という諦めの境地に至ったのも大きいです。逆に言うと、課長時代は、部下を型に嵌めようとしたり育成のスピードを上げることに固執していて、肩に力が入りすぎて沢山失敗しました。


人手不足のなかで大きな責任を負っている気になって、早く育ってもらわないと立ち行かない、という過剰な責任感。つまり、育成のスピードをコントロールできると思い込んでいたわけです。さらに、自分が仕事に熱心だからこそ、自分が磨き上げた仕事の仕方がベストだと思い込んで、それと同じやり方を押し付けていたように思います。


今は、許容範囲に収まっていればOK、つまづいている時だけ支援する。むしろ、その支援の際にどれだけ萎縮させずに作業完了まで到達してもらうかを意識しています。


具体的には、期待値を階段状に設定することを心がけています。特に難易度の高い案件は、上司の方でステップ分けをする。分解することでステップごとの作業は取り組みやすくなるわけですね。


この階段を作る作業。プレイヤーとして慣れていると、むしろ難しいです。自分が自然にやっていることを言語化する困難さ。スタープレイヤーが良い指導者になれない、という話と似ています。


参考になったのは、車のバック駐車を教える初心者用の動画。運転歴の長いドライバーなら自然にやってしまう一連の流れをこまかく分解しています。それこそ初めは「ハンドルを切らずにバックに進んでミラーの見え方と距離感に慣れる」というのを、何回も練習するわけですね。私は最近ペーパードライバーを卒業しようと運転の練習をしていますが、得意な人なら直感的にできることが全くできません。なので致し方なく細かく分解したステップで練習しているわけです。



それを慣れている人に、ミラーを見ながらハンドルを切って、さらに、据え切りしないで動いている状態で流れるようにやれ、と言われて、全ての工程の説明を受けても、全く入ってきません。まず、バックでハンドルを切れないわけですから。情報量が多すぎてパンクして出来るものも出来なくなるわけです。また、その状態に対してあれこれ言われると萎縮してしまいます。ましてや、仕事場でよくある指摘で「気合いが足りない」「どうしてこんなことができないのか」「何回も説明したのに」と言われると、やめたくなりますね。苦手な人の気持ちがよくわかった貴重な体験でした。

むしろ、小分けにした工程を地道に繰り返しやる。繰り返しやることでいつかは習熟しますから、苦手意識を生まないように継続する状態をどれだけ上手く作れるか。こちらの方が格段に重要です。

ややこしい話なんかは、「一回説明聞いただけだと理解できないのが普通だから、私も昔理解するまで5回くらい確認したので」「一度作業してからの方が理解しやすいので、次回もう一回説明します」とか、理解が追いついていなさそうなシグナルが見えたら、あたかも初めて説明するような雰囲気で一から説明する… そんな感じで、理解が追いついていない事には触れずに進めたり。

難しそうなら更に作業を小分けにして、少なくも作業自体を完遂できるレベルまで難易度を下げたりします。出来なかったことよりも、小さくても出来る事がある、という風に光の当て方を変えるわけです。

このマインドを心がけるようになってから、教える方の自分のストレスが大幅に軽減されました。教えられる側のスタッフも地道にコツコツと基本動作を継続してくれていて、とても頼もしく感じます。


むしろ、こうした育成を通じて自分の方が寛容さや人に対する理解を育んでいます。翻って育成されているのは自分の方だな、と。どれだけ自分のエゴを抑えられるか、その訓練ですね。


そういう点では、現場の育成をやる機会があって今年は非常に恵まれた年でした。いくつになっても成長の機会はやってくるな、と感じています。

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