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超訳『竹取物語』八 御狩のみゆき

※この訳は超訳です。あえて原文通りの表現よりも俗っぽくしています。また、所々省略やアレンジを加えております。

なお、超訳にあたって、室伏信助氏の『新版 竹取物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫)を参考にさせて頂きました。室伏さんの訳に甘え、緻密さと筆力に脱帽しました。

八 御狩のみゆき

 さて、とうとう、かぐや姫がこの世にないくらい美しいということを、帝お聞きあそばした。内侍の中臣房子(なかとみのふさこ)に、「多くの人の身を滅ぼしても結婚しないと噂のかぐや姫は、どれ程の女か見てきたまえ」と命じる。
 房子、命を受けて竹取の家に。恐縮している翁、嫗に、内侍房子が、
「帝からの命で、かぐや姫の容貌をよく見て参るようにと仰せられましたので、参上致しました」と言うので嫗は、「姫に伝えて来ます」と奥へ入り、
「かぐや姫、早く、あの御使にお会いしなさい」
 しかし、かぐや姫は「わたしは、優れた容貌ではありません。それなのに、どうしてお目にかかれましょう」
「えらく不愉快な感じで言うわね。こっちが不愉快やわ、あたしの顔馬鹿にしとんか。って、帝の使いですよ、ミ・カ・ド。ぞんざいにできるわけないでしょ」
「帝が直々にお召しになってお話を賜ったとしても、畏れ多いとは思いませんの」
 と言って、いっこうに会いそうにない。自分が産んだ子のように思っているが、むしろこっちが気後れするぐらい素っ気ない態度で言うので、嫗は強いることもできない。
 嫗は内侍に、「残念なことに、あのアホは、意地っ張りでございまして、面会しそうにないのです」
 内侍の言葉も強烈だった。「必ず顔を見てこいと帝から命じられておりますのに、それをしないで帰れませんわっ。国王の命ですよ? この世・この地球に住んでいる人が断れるはずもないものをっ。筋が通らないことは、どーかなさらないでくださいー。きーっ」
 と、相手が気後れする剣幕で言うので、これを聞いたかぐや姫、なおさら聞き入れない。「国王のご命令に背くというのなら、どうぞさっさと殺して下さいまし」
 内侍は宮中に帰って帝に顛末を話した。しかし帝は、「ほお、それが多くの人を殺めてしまったという心か」と仰り、その時はそれで済んだ。か、やはりかぐや姫のことを意識するようになり、そんな計略に負けてなるものかと、翁に命令を下す。
「そなたが持っておるかぐや姫を献上せよ。美しいと聞いて使いを下したが、対面しないままとなってしまったな。このまま不都合・不平等・不均衡であってよいものか」
 翁、恐縮して、「この小娘は、まったく、いっこうに宮仕えをいたそうとせんでして、はい、もてあましておりまする。困ったものです。それはともかく、家に帰って勅命を授けましょう、はい」
「なぜお前が育てたのに、お前の思うようにならない? もし献上したら、お前に五位の位を与えないこと、そんなことがどうしてあろうか」
 翁、突然の大出世に大喜び、家に帰り心を込めてかぐや姫に言う。
「こーーーんなんまで、帝が、ミ・カ・ド、が!! 仰せられとるんや!! ないで? ないでフツー? なんでお前はそれでもお仕えせーへんの?」
 だか、かぐや姫は、
「はい、全く、宮仕えするを気はございません。無理におさせになるのなら、消えてしまいましょう。あなたの出世を叶えさせて、そのあと死ぬまでのことです」
「そないなこと言いななぁ。五位の位? そんなもん、我が子と比べたら何てことないわっ。……でもさあ、謎なんやけど、なんで拒むん? ホンマに死ぬわけやあらへんやろ?」
「マジかいな、と、わたしを宮仕えさせてみて、ご確認くださいな、死なないかどうか。大勢の求婚、それも並ではない志を、無駄にしたのですよ、わたしは。それなのに、昨日今日、帝だからといって、それに従ったら、人にきかれて恥ずかしいですわ」
「大出世とかはどーでもええ、かぐや、あなたが死ぬ死ぬ言うのがわしには辛すぎるから、やはりお仕えする気はないですと言ってくるわ」
 と翁、参内し、
「勅命のかたじけなさに力尽くしたのですが、あの小娘、『宮仕えするなら死んでやる』なんて言うとりまして。実は実子ではなく、昔に山で見つけた子なわけでして。そんなわけで、気立ても、世間一般にどうしてもズレてしまっております」
「家は山の麓に近いそうだな。そうた、御狩のための行幸(みゆき)を、ということにして、会ってしまおう」
「それ、とてもよござんす。なあに、大したことじゃございません。姫が満ち足りないと思っている時に、ふ、と行幸してご覧になれば!! あ、いい! すごくいい!」
 翁のリアクションを受けるや否や、帝、急に日取りを決め、御狩へ出、かぐや姫の家に入、逢。家中に光が煌々と満ち溢れ、美しい姿で座っているひとがいる。かぐや姫であろうとお思いになり、逃げようとする姫の袖をとらえなさると、袖で顔を塞いでいるも、すでに帝はご覧になっているので、あ、これ、比較対象ないわ、と、「放しはすまいぞ」と連れこもうとする。
「わたしの身が、この国に生まれていたのでしたら、でも、そうではございませんの。連れおいでには、とても、とても、なりにくうございましょう」
「そのようなことがあるものか。連れてゆく」
 と、神輿をお寄せになると、かぐや姫、ぱっ、と影になって消えてしまった。帝、む、いかに残念なことか、いやなるほど、普通の人間ではなかったのだなと瞬時に理解、「それでは、お供としては連れてゆくまい。さ、もとの美しい姿におなりなさい。せめて、君の姿を見て帰ろう」
 その言葉で、かぐや姫、ぱっ、ともとの姿になった。
 帝のなかで抑えきれないほどのマーベラスブリリアントマインドに、つい、翁にTHANXと。ところでその翁はというと、帝のお供にお酌とかしてどんちゃん騒ぎ。
 かぐや姫をここに残してお帰りになるとしたら、さぞ悔しかろうとお思いだった帝は、しかし、魂を残した気分がしており、お帰りなさった。神輿にお乗りになってのちに、
『帰るのが辛くて、振り返っては立ち止まってしまうよ。わたしのことばに背いてここに留まるかぐや姫や、君のせいだよ』
 と歌い、かぐや姫も、
『この様な草木溢れる卑しい家に長年いたわたしが、どうして玉で飾った美しい後殿を観て暮らせましょうか』
 この返歌を帝はご覧になり、あーもー帰りたくないーいっそ帰らないでおったろかいな、とお思いになったが、さすがにこんな所で夜をお明かしになるわけにもいかないので、お帰りになった。
 で、女官とか見ると、いつも仕えさせていたけれど、かぐや姫と比べようもないやん、と。まあマシ、あれよりはそれが、でも、かぐやちゃんとはなー、同じ人とは思えへんわ、と、かぐや姫がハートに矢、それから帝は独身暮らしをなさる。女遊びもされない。ただ、かぐや姫にだけお手紙を書き、やり取りをなされる。死んでやると言っていたはずのかぐや姫も、情と心を込めて文通。木や草とかで歌を詠んだりと、のほほんと過ごされた。



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