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オトナになった耳で、ポケットビスケッツを聴いたら

10代で出会った音楽に、今も支えられている。私の場合はCHAGE and ASKAが殿堂入り。この他にひとつだけ挙げてよい、と言われたら、「ポケットビスケッツ」と迷わず答える。

ポケットビスケッツは、バラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』から生まれたユニットである。千秋さん、ウド鈴木さん、内村光良さんによる3人組。「ポケビ」の愛称でお茶の間に親しまれた。

ポケビといえば、署名運動を記憶されている方も多いことと思う。南原清隆さん率いるユニット「ブラックビスケッツ」との対決に敗れ、リリース予定だったシングルのマスターテープを破壊されてしまう(こうして文字にすると、’90年代はまだ攻めた企画が通常だったなぁとしみじみする)。100万人の署名を集めなければグループ存続の危機、となった彼らだったが、なんと178万4892人という驚愕の結果を叩き出したのである!

その後署名へのお礼として発表された曲が「Power」。千秋さんが、ご自身のYou Tubeにてセルフカバーをされている。

変わらぬどころか、高音の伸びやグルーヴの軽やかさ等、進化が止まっていない。夢中でウリナリを観ていた中高校生の自分と、40代を迎えようとしている今の自分が心の中でハイタッチした。ねえねえ、あの頃のわくわくをまた味わってみようよ。制服を着た私に誘われた気がして、大事にしていたアルバム『Colorful』を開いてみた。

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「Yellow Yellow Happy」「Red Angel」等のヒット曲が収録された1枚。パッパラー河合さんプロデュースの楽曲達は、多彩なリズムが1曲に盛り込まれていて、体も心も大きく揺さぶられる。破壊力あるサウンドと、それに負けない千秋さんの歌唱力。テレビ番組の企画ものと片づけるには惜しすぎる、「本気」が詰まった「本物」の音楽だと、おばさんになった自分の耳が震えた。

そのアルバムから1曲、是非お聴き頂きたいのがこちら。

イントロで披露しておられる、「嵐の素顔(工藤静香さん)」を彷彿とさせる、いやパクったと思われる手振り!!当時のまま再現していて胸熱っす(涙)!!

というエモーショナルな感想はさて置き、この曲完璧な失恋ソング。ポケビは小学生もターゲットで、視聴者層に寄せることは容易かったはず。だがそれをせず、千秋さんはこのように詩をつけ、歌っている。

せつなくて 泣きたくて これ以上一人になんてしないで /かなしくて 泣きたくて 神様私を隠して

最後の儚くも美しいフレーズに、おばさん遅ればせながらクリティカルヒット。また、パンチとドスが良い加減で調合された千秋さんの歌声は、やはりとても魅力的だと感じる。

彼女は歌手を志望して芸能界に入った。だが当時の事務所の方針は「知名度を上げるにはバラエティ」。ポケビ解散後、本格的な歌手活動をスタートさせるものの数年でフェイドアウトになった。

トーク力やファッションセンスで活躍する間も、心の炎は消えていなかったのだろう。デビュー30周年の今年、You Tube開設とともに「もう一度、歌手を目指す」と宣言された。

そこで明言したのが「登録者数100万人達成の際は、一度きりのポケビ復活」。大人の事情で実現には様々な壁もあるとのことだが、明確な目標設定と、それを言葉にしてパワーに変える姿がとても眩しく見えた。

また、登録者数が5万、10万と増えるごとにポケビの名曲カバーを動画にアップするとの公約も。目標に到達するまでの関門設定も明瞭で、その過程をエンタテインメントとして魅せるアイデアにも敬意を表さずにいられない。

私は幼稚園の卒園アルバムに、スチュワーデス(現在のCA)になりたい、と書いた。でもそれは全くの嘘で、その時の夢は歌手だった。正直に書けなかったのは、夢に届かない「憧れ」だったからだろうか。高校生になったらバンドを組みたいと思っていたのに行動に移さなかったのも、果たして同じ理由なのだろうか。

だからここに書いて残しておきたい。私には夢がある。千秋さんのように中身まで公言する勇気はないけれど、叶う可能性がどのくらいかもわからないけれど、人生をカラフルにするために進みたい。とか大きなこと言っておいて、明日には変わってるかもしれない、なんてそれは逃げ道だな。

千秋さんから、夢の斜面の見上げ方を提示して頂いたと勝手に思う。だから彼女の夢を、微力も微力ながら応援していく。まずは20万人達成の約束、大好きな「Days」が聴けるのを心待ちにしている。


最後に。リーダーTERU(内村さん)作 「Orange」の歌詞にびっくり仰天。

誰にもゆずれぬ誇りがあるから 笑ってゆけるさ おそれず

こ、これは…!!チャゲアスファンの血が騒ぐ。彼らの人気曲「PRIDE」の一節、“思い上がりと笑われても 譲れないものがある プライド” に通じるものが。およそ25年の時を経て、突破ぁぁ!と叫びたくなった。おばさんになるのも悪くないものだ。


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