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英会話の平面と立体

 英語を教えています。と言うより、英語からいろいろを教わっています。生徒さんとの語らいは相手が赤ちゃんでも子どもでも大人でも、本当に学び深いものです。

 先日大人の生徒さんが「英語では平面から立体になった時に混乱する」と言われたのがとても印象深かったので、その言葉を広げて考えてみたいと思います。平面はいわゆる学校英語で習った英作文。立体は実際の会話。大人の方の学校英語→英会話の障壁はここにもあった!これを探すのに生徒さんの視点はかなり大事になります。

 確かにテストでは間違えない様な部分、テストではスラスラ書ける文章でも、いざ口に出して実践となると頭が混乱します。今まではその「緊張感」を取り去るための「リラックスして話す方法」などをシェアしていましたが、そもそもずっと視覚頼みだった言葉から視覚の情報を外すということはかなり怖いことだと思いました。文字になっているから確認できる。サラサラと目の前を流れていく言葉を文字無しにキャッチするのは大変。それを平面と立体、とは。本当にわかりやすい表現だと感心しました。

 そうか、と私も考えました。ではどう考えたら立体が楽になるのか。
私が出した答えは、「一旦平面を忘れて、立体を0から始める」と言うことでした。文字に頼ることを一旦やめてみませんか、と。
 そして赤ちゃんになった気持ちで0から始めましょう、と。

 大人の方の指導は正直得意ではありませんでした。子どもに英語を教えることは得意なのに。その答えはこの平面と立体にありました。
そもそも私たちが日本語を覚えた流れを考えると、文字から入ってはいませんよね。人の見様見真似で「こういうとき、この言葉を使うんだ」と聴覚、視覚(表情やジェスチャー)などで感じてたくさん聴いて、自分も言葉を発し始めます。それから日本語で先生や家族に手紙を書いたりすることから始まり、学校教育に入って漢字を習ったり作文をしたり。
 英語も子どもたちを教えていると余計な説明は要りません。子どもたちは私の動作やどんな時にこの言葉を使うのかをじっくり観察して、真似をします。発音も用法も単語の使い方もほぼ正しく真似をします。それを使って、やがて自分のことを英語で語ります。中学校に上がる頃には、ある程度文字の仕組みや語順、発音が身についているので、中高生になると自ずと英語運用力がアップします。卒業生に久しぶりに会って英語面談をすると、随分英語教室に来ていなくても学校英語で英会話力までパワーアップしていて驚くことが多々あります。ベースがしっかりしているからでしょう。

 大人の学習者は、その逆の方法で英語を学んでいるから、指導する時点で私自身が普段英語を使っている自分とは「違う」考え方にならないと難しい部分があるのです。つまりイメージから英語ではなく日本語から英語、の図式です。正直英語を一旦使い始めると、この順序では私自身も英語を話せなくなります。日本語を単純に英語にするのはそれぞれの言葉の性質上かなり難しいのです。
 例えば、I ate bread for breakfast. とスラスラ書けるのに、What did you eat for breakfast? と尋ねると、「えぇっと、パンはbreadだから...Bread is ...」などとなって先が続かなくなります。
「朝ごはん抜いたからお腹空いた」と伝えたい場合は、「朝ごはんはbreakfastだから...Breakfast is ...」と始めてしまいます。
 I'm hungry because I didn't eat breakfast.でも良いし、I'm hungry. と先に言ってしまって理由を聞かれてから "I didn't eat breakfast." と言っても良いのです。一番伝えたいイメージを英語にする方が本当は楽なのです。英語を正しく日本語に訳したり、日本語を英語にしたりすることに慣れ過ぎてそれを視覚に頼らずしようとしてしまうことが、大きな壁を作って会話をより複雑にしてしまいます。
 不思議なことに、小学生と中学生、高校生で同じ英作文をした場合一番スッキリとした英語らしい文章を書くのは小学生です。単語のスペルミスなどは一番多いのも小学生ですが、整った文を作るのは小学生。意外ですよね。
直訳の癖がつく前の英語を英語で捉える子ども時代は最強なのです。

 複雑なことを伝えようとすればする程、私たちは文法の世界で迷子になります。ですので、私の結論は取り敢えず大人の方も一旦学校で習った英語は置いて、日常よく使う表現をどんどん覚えて使っていくのが良いということです。使って使って、慣れてから学校英語に戻ったら驚く程理解が深まります。
 要は「使う」を経験せずに大人になって、「使う」ための英語の習得法をせずずっと本や単語帳と向き合っているので、大人の方は話せる実感を持てずに学習をやめてしまったりするのでしょう。順番が違うのです。

 まずは「使う」。私が推奨しているのは「独り言英語」。日常よく使う言葉を心の中で英語に訳してみるのです。そこでひっかかったものをメモして調べたり人に聞いたりして、正しくしたところで今度は独り言で良いので使ってみるのです。探し物が多い方は、"I'm looking for my pen.(ペンを探しています)"と言うよりは心の底から"Where is my pen?"(ペンどこ〜?)と言うほうが実践的ですね。普段使いの言葉はそれぞれ違いますので、使いながら自分専用の単語帳を作ってそれを繰り返し使うことが最善だと考えます。

 私は海外で生活した時、小さな紙を持ち歩いていました。お店で言えなかったことや咄嗟に出なかった言葉をサッとメモして図書館へ行き、調べてメモして何度も唱え翌日同じシチュエーションを作るのです。そこで使って通じたらOK。友達が出来たら友達にそれを更に自然な言い方に直してもらう。そんなことを繰り返していました。日本にいても出来ることです。「英語を使う生活」始めてみませんか。

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