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vol.60『ツバメとわたし㉝~フンとの共生~』

(前回作はこちら→『ツバメとわたし㉜』

 5羽の雛が無事に巣立ち、親ツバメが巣を離れるその日までフン被害に耐えると決めたわたし。あれから、3日。どんどこどんどこ汚れていくではないか。巣の下は今朝掃除したのに、昼過ぎにはもうフンが落ちている。もうフンしかない。雛がいるから仕方ないのだが、なんだかんだ言ってもフンはフン。我慢ならぬ。ツバメたちが巣立つまで待つと心に決めたのに。あぁぁぁ。いやだ。もう待てない。今すぐにでもツバメたちを追い出してやりたい!

 このままでは危険すぎる。何が危険って、雛が口をパクパクして一生懸命生きようとしている巣を本当にぶっ壊しかねない。この状況をなんとかしないと。かといって、さすがに雛が生まれてしまったこの巣には手は出せない。

 巣に手を出せないとなると、もう自分を変えるしかない。自分の欲求からくるこの衝動をいかに抑えるのか。フンが気にならなくなるように自分の気持ちを持っていく。フンを許すのだ。そうだ。仏になろう。フンもよく考えればかわいいではないか。慈悲の心を大切に。自分の欲は無きものに。そう。心を無にして時が流れるのをただただ傍観するのだ。さすれば、雛のフンなぞ気にもならんぞよ。うむ。

 いや、あかーん! そこまでわたしは精神的にできていない! 仏て! 悟りなんて開けるわけがない! エゴしかないのに! 仏とは真逆! 

 やっぱり我慢するしかないのかな。でも、我慢ってそこに無理が生じるから、苦しいだけだ。長続きしない。とにもかくにも雛が巣立つまで1か月間ほどどかかる。どうせなら、その1か月間は楽しく過ごした方が良い。

 あ、そうだ。毎日フンで汚れるのが嫌なのだから、巣の下に新聞紙でも敷いてみようかな。フンで汚れたらその新聞紙を捨てればいいしね。そうすれば、掃除もずいぶんと楽になる。なんで、こんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。フンを許せないという気持ちが強すぎたんだな。よし。さっそく新聞紙を敷いてやろう。さあ、家へ新聞紙を取りに行こう。そして、穏やかな気持ちで巣の下に新聞紙を敷き詰めよう。

 わたしは、家から持ってきた新聞紙を広げながら、巣の下へ向かった。雛を驚かせないように、そっと新聞紙を敷こう。ここにならフンを落としてもいいのだよ。ツバメ♡


 ピチャ。

 ……えっ!? 
 わたしの頭に感じるこの生温かいのは、ま、まさか……。


 ゆ、ゆるせーーーんっ!! このツバメめ!! 

(つづく)



最後までお読みいただき、ありがとうございました(*'▽')
『ツバメとわたし㉞』を更新しましたので、よろしくお願いします。

 

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